3



「…円堂」
鬼道はその円堂のあっけらかんとした言葉に文字通り頭を抱えた。

その一言は半田の意識を三人の痴態に戻す言葉であると共に、
円堂が自分達以外とも性行為に躊躇いが無いことを意味した。

でも、円堂はその鬼道の態度に何を思ったのか今度は半田に向き直る。

「そっか、鬼道じゃなく半田に訊くべきだよな。
なあ半田、お前この後時間ある?
あるんだったら俺とシようぜ!」
まるでサッカーの練習にでも誘うように円堂が訊ねる。
それが余計半田を混乱させる。

「えっ?するって…何?サッカー?」

サッカーに誘うのと同じ態度なのに、
サッカーに誘った訳では無いことくらい半田だって気付いていた。
でも、それが何なのかはっきりと口に出してしまうのが憚られた。

「え?
えーっと、あれ?
あっ!俺もなんて言うか知らない」
半田の怯えたような質問に円堂も答えられずに首を捻る。

「円堂!」
鬼道は円堂がすぐ答えられなかった隙に、声を掛ける。

明確な言葉を半田に言う前に、自分が違う方向へと会話を誘導してしまうつもりで。
鬼道には円堂を他の男とさせるつもりはさらさら無いし、
半田にこれ以上内情を知られることも嫌だった。


でもそれより早く、悩んでいた円堂の顔が輝く。

「でも、どんなことするかは分かるぞ。
俺のとろっとろの中を半田の硬いので奥までごりごりってしてもらうんだ!」
円堂の答えは決して「明確な言葉」では無かった。
でも「明確な言葉」よりも分かり易くイヤラシイ言葉で円堂が答える。


「な、半田。駄目か?
俺、思い出したら余計じんじんしてきちゃった。
なあ、早くシようぜ」
円堂が焦れたように言う。

そのとろんとした目の淵は赤く、口からは甘い吐息が漏れる。
口調や普段の姿からは決して結びつかないその円堂の欲に濡れた様子は、
鬼道や豪炎寺には興奮を促すものでしかないが、半田にとってはそうじゃない。

ただ、目の前にいる円堂が奇異な存在に見える。


「…駄目だ」
半田は目を見開いたまま呟く。

「駄目だ、円堂!
それはそんな簡単にするものじゃない!」
一言口にした途端、目が覚めたように半田は円堂に向かって言い募る。

「そういうことは本当に好きな人と…!」

「半田」

半田の言葉を遮るように鬼道が半田の名前を呼ぶ。
静かな声の調子なのに、有無を言わせない迫力に半田が息を飲む。
はっとして見ると、鬼道ばかりか豪炎寺までもが鋭い目つきで自分を見ている。

二人の様子に、半田は思わず後ずさってしまう。

――な、なんで?

半田は仲間であるはずの二人が急に自分を排除すべき外敵みたいに見てきた事に戸惑ってしまう。
ただ、自分が知らない内に二人の逆鱗に触れていたことだけは分かった。


「俺達は円堂が好きだ。
お前だって、そうだろ?」
凄まじいばかりの怒気を発する鬼道が薄っすらと微笑みを浮かべる。
…それが半田には堪らなく怖い。

「そ、それはそうだけど…」

「なら、何も問題は無い」

半田の言葉をそれ以上シャットダウンするように鬼道がすっぱりと断言する。

「円堂、半田もお前が好きだそうだ。
良かったな、半田とも出来るぞ」

円堂に向かってそう言い放つと、射竦められ身動き一つ取れない半田の背後に回る。

「ただ、まだ半田の方は準備が出来ていない。
準備は俺と豪炎寺に任せて、お前はもう少し待っていてくれ。
我慢出来るな、円堂?」

半田の背後から鬼道の手が前に回る。
ジャージのジッパーを下げながら、鬼道が半田の耳元に顔を寄せる。


「半田、これ以上円堂に余計なことを言うな。
俺達から円堂を奪ったらどうなるか、これから身を持って教え込ませてやる」

その言葉に半田がぎょっとして振り向くと、鬼道の薄い唇から尖った舌が自分の首へと伸びてきていた。


――淫らな脅迫が始まる。


 

prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -