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四本の指を裂けることなく呑み込んだそこを満足そうに眺めた豪炎寺は、
小走りで鬼道のベッドサイドの収納へと急ぐ。

なんで豪炎寺が鬼道の部屋に詳しいかも一先ず置いておくとして…。

ローションのボトルとコンドームの箱を持ってすぐ戻ってくる。
口でゴムのパッケージを開きながら、もう片方の手でローションのボトルを開ける姿に、鬼道が小さく苦笑する。

「必死だな」

「…円堂の為なら、必死にもなる」

「…そうだな」
笑った自分を眉を顰めて睨んだ豪炎寺に、鬼道がもう一度小さく笑う。
さっきとは異なる種類の笑み。


――豪炎寺も自分と同じだ。

いつでも冷静で誇り高くありたいと思っている自分も、
何事にも動じない豪炎寺も、
円堂に繋ると途端にただ必死なだけの存在になってしまう。

現に今、自分の胸の中で汗ばんだ顔で潤んだ瞳を向けてくる円堂のその顔に、
先程まで深いキスを交わしていたというのに、もうキスの雨を降らしたくて仕方ない。
少しの間でも離れていたくない。


「な、に?」
二人の会話に、荒い息の合間に円堂が短い質問を投げかけてくる。
上気したその顔はもう痛みだけのものだけでは無い。
少しも動かずとも、円堂の中はもう痛み以外の感覚も享受しようと鬼道を煽るように蠢いている。

「豪炎寺もお前に受け止めて欲しいらしい」
鬼道が円堂の汗を拭いながら言う。
もうバンダナは汗を吸って、大分濃いオレンジ色へと変色している。

「…いいか?円堂」
後ろから宛がい、抱き締めながら豪炎寺が弾んだ声で囁く。

「あっ、たり、前、だぁっ…」
鬼道の背に爪を立てながら、それでも円堂は豪炎寺を振り返り、汗ばんだ顔を笑顔に変えて答える。

「…ありがとう、円堂」
その言葉と共に、ぐっと一気に根元まで円堂の中へと進んだ。


「ああっ」
円堂の背が一気に増した圧迫感に激しく仰け反る。
もう、二人を思いやる余裕も全く無い。

「あっ、あっ、あっ」
今の円堂は自分がどうなっているかなんて全く分かってない。

豪炎寺が下から突き上げるように円堂の中を律動していることも、
鬼道の背が円堂の短く切り揃えられたGKらしい爪で十本の赤い線に染まっていることも、
ただ豪炎寺の動きに翻弄されているだけの円堂を鬼道自身は動かずに抱きとめてくれていることも、
全てが蚊帳の外。

頭を占めるのは、ただ自分の中をぎちぎちと広げるように存在する二人のことだけ。
ただ自分の中をごりごりと擦り合うように蠢く二人の動きだけ。


「あっ、やっ、…ああっ、あっ、ああんっ」
口から言葉が出ている事さえ気付いていない。
閉じることの出来ない口の端から涎が伝わっている事も、
見開いた目の端からは涙がぽろぽろと溢れている事も気付いてはいない。

「はっ、あっ、ああっ、あっ、あっ、はあっ」
二人を見ることも出来ず、ただ宙を焦点の合っていない瞳で見つめ、
ただ動きに合わせて少しでも酸素を取り入れることしか出来ない。


「…円堂っ、…円堂っ、…円堂っ」
何回も何回も円堂の名前を呼ぶ豪炎寺の激しい声も届かない。

「…ふっ、…あっ、…円堂ぉ」
時折漏れる声に混じって、押し殺したように円堂の名前を呼ぶ鬼道の優しい声も届かない。

でも、二人の間で、二人の熱い想いが伝わり円堂の体は燃えるように昂ぶっていく。


最初にその頂に上り詰めたのは、最初から激しく動いていた豪炎寺だった。
どくんとその質量を増し、円堂の中の薄い壁を通して隣の鬼道を圧迫させる。
そして圧迫感を増したまま豪炎寺の最後のスパートで鬼道も昂ぶっていく。

「あっ…あっ…あっ」
二人の大きく膨らんだ欲望に円堂がまた背を大きく仰け反らせる。

「ああぁぁっ」
豪炎寺が大きく穿って動きを止めたのと、少し遅れて、鬼道が円堂の中で弾け飛ぶ。

ぶわっと広がった自分の中の暖かい何かに、ただ円堂は、
そこで初めて二人の想いをちゃんと受け止められた気がしていた。


 

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