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暫く鬼道と豪炎寺に挟まれるように抱き締められる。
前と後ろから二人の熱が伝わってくる。
二人の心音が伝わってくる。

――二人に挟まれるとどうなっちゃうんだろうってさっき考えてたよな…。

円堂はほぅっと長い息を吐く。


今、その答えがでた。


二人に挟まれて目を瞑ると、胸の中がほんわかして不安がなくなる。
…それなのに、目を開けるとすぐ近くに鬼道と豪炎寺がいて、
心臓がすっごく大きくなったみたいにどきどきして苦しくなって、どうしてだか逃げ出したくなる。
二人はすっごく大切な友達なのに、どうしてだろう?
一つの答えはまた新たな疑問を生んだだけだった。
しかもその疑問はどうやったら答えがでるのか分からない。


「円堂」
鬼道が円堂の名前を呼んで、唇を重ねてくる。
キスをしている時は、目を瞑っているから不安なんて全然無くなる。
だからまたくちゅりと指が触れられても、今度は怖くなかった。


「まだ怖いか?」
唇を離した途端鬼道が訊ねてくる。
鬼道の指はくちゅくちゅと浅いところを慣らす様に触れている。

さっきまで全然怖く無かったのに、今は目を開けているから少し怖い。
鬼道の赤く染まった瞳と間近で目が合い、じっとしてられない衝動が突き上げてきて顔を慌てて逸らす。
でも、逸らした先には豪炎寺の顔があって、
すぐ今度は豪炎寺にキスされる。

鬼道に抱きしめられたまま豪炎寺と唇を合わせると、また不安が消えて、それ以上に甘く痺れる何かが全身を支配していく。
目を閉じると、ぐちゅぐちゅと唇の立てる音よりも大きな水音が遠くでする。
自分の内側を圧迫する何かが大きくなって、じんわりと自分を侵食して溢れてくる。

「まだ怖いか?」
唇を離した途端豪炎寺が訊ねてくる。


豪炎寺の赤く染まった瞳と目が合っても、もう怖くは無かった。
ただ、二人が堪らなく愛おしかった。



声も無く首を横に振った円堂を、ゆっくりと鬼道邸の手触りの良いカーペットに横たわらせる。
寝室まで運ぶ余裕はもう二人には残っていない。
服を脱ぐ手も急いて、かちゃかちゃといつもより音を立てる。

「なあっ、なあっ、俺、変なんだ。
なんか目が合うだけですっげぇ心臓がどきどきして、
二人に触れて欲しいのに、本当に触れられるとなんか怖くなって、
そんでそんで胸の辺りがきゅーってなって、ほわって空気がすっげぇ濃くって甘く感じるんだ。
なんだろこれ、やっぱびょーきかも。
まだ怖いのかな?
なんかどきどきするけど、でもそれ以上にお前達見てると、なんかこう堪らない気持ちになるんだ。
どうにかこの気持ちを表したいのに、どうしていいか分かんなくって、それでそれで…」
服を全部脱いだ鬼道がそこで円堂の唇にひとさし指で触れる。
やっと口の動きが止まった円堂に鬼道が少しだけ苦笑する。

「俺も同じだ。
お前のことが凄く愛おしくて、大切にしたいのに、滅茶苦茶にしてしまいそうで触れるのが怖い。
こんなにもお前に触れたくて仕方ないというのにだ」

「ほんと、か?」

「ああ」
鬼道の言葉に目を丸くした円堂は、今度は豪炎寺を仰ぎ見る。

「豪炎寺は?豪炎寺も怖い?」

「いや…。俺はあまり」
正直な豪炎寺の言葉に鬼道が今度はばっちり苦笑する。

「さっすが豪炎寺だな」
それでも円堂は感心した声を出して、豪炎寺を見る。

「…ああ。
だから怖いなら俺に抱きついていろ」

「おう!」
ぎゅっと円堂から豪炎寺に抱きついたのを見て、鬼道が途端にむっとする。
円堂の肩を掴んで、ぐるりと向きを変えさせる。

「これから俺がお前の処女を貰うんだ!
お前は俺を見ないで、俺のことを受け止められるのか!?」
鬼道の剣幕にも円堂は動じることはない。
鬼道の怒りを無視して、首を傾げる。

「なあ、ショジョってなんだ?」

「ッ!」
咄嗟に出てしまった決定的な言葉に、鬼道は眉を顰める。
ここで円堂に本当のことを伝えるのは本意では無い。
自分達の想いは恋情だとしても、円堂が自分達に向けている感情は友情の範疇を決して超えるものではないと知っているから。
・・・でも、円堂に嘘は吐きたくはない。

「他の人間の想いを受け止めたことのない人間のことを言うんだ」
決して嘘は言ってはいないが、思わず円堂から顔を背けてしまう。


「そして、これからお前は鬼道の想いを受け止めるから処女じゃなくなる。
…良かったな円堂。鬼道に処女を卒業させてもらえて」
そんな鬼道をフォローするように豪炎寺が円堂を背中から抱きしめて言う。
鬼道が先にすることをごねた人間とは思えないその態度は、
それ以上にこの状態が拗れてお流れになることを恐れた只事じゃない執念を感じる。
でも、それは微笑に隠れて円堂には伝わらない。
それどころか、この上ない笑顔を鬼道に向けた。


「ああ!俺、早く鬼道のこと受け止めたい!
鬼道に俺のショジョ貰って欲しい!」


 

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