11



「失礼します。お聞きしたい事があるんですが」

わあわあと悲しいドッキリ大作戦の後始末に追われて騒がしい食堂に、まだ声変わりのしていない幼い少年の声が響く。


「鬼道っ!?」

それに一番に気づいたのは、勿論鬼道レーダーを標準装備している佐久間だ。
つるっ禿げ佐久間の声に皆も驚いて、その幼いながらも毅然とした声の主の方を振り向く。
するとそこには昨日よりもまた20センチ程身長の伸びた鬼道の姿があった。
鬼道は体とサイズの合っていない服に窮屈そうにしながら不愉快そうに口を開く。


「ここはどこですか?」

「またかよおおお!」

食堂に驚愕の声が木霊した。




「円堂君もおっきくなってたよー」


木野が大きなあくびをしている、これまた昨日よりも大きくなっている円堂を引き連れて食堂に入ってくる。
あの騒ぎの直後、木野が代表して部屋に様子を見にいくと、円堂は未だ眠りこけていたのだった。
流石円堂さん、育ち盛り!

そんな中、食堂の真ん中でここがどこかの説明を受けていた鬼道さんが重々しく口を開く。


「成程、今は世界選手権の開催中でここはジュニアの日本代表チームの宿舎ということか。
そして14歳の俺がこのチームに所属していたと。
そういう事だな」

小暮からユニフォームを借り、そう事態をすぐさま飲み込む鬼道は未だ本来の年齢に達していないながらも、見慣れた14歳の鬼道に大分近い。

…と思ったら、全然違った。


「佐久間」

「ああ!」

鬼道が久しぶりに俺の名前を呼んだぁ〜んと内心身悶えながら佐久間は嬉々としてよいお返事をする。
そんな佐久間を鬼道は侮蔑の表情で睨んだ。
ゴーグルが無い分、余計怖い。


「源田や、他の帝国のメンバーはどうした。
姿が見えないようだが?」

「あっ、ああ。
日本代表に選ばれたのは鬼道と俺だけだ。
残念だが源田も寺門も選考選手にさえ選ばれなかった」

「なんだと!?」

鬼道さんの眉の皺が更に深くなる。


「不甲斐無いっ、何をやっているんだアイツらは!?
…では、FFはどうした。
当然帝国が優勝したのだろうな…?」

ピクピクと秀麗な額の血管を浮き立たせる鬼道は青い怒りのオーラが背後に見えるぐらいおっかない。


こ、怖いッスぅうう、鬼道さん〜。
さ、佐久間さん、これ以上怒らせるような事言わないで下さいッスぅうう!!

その鬼道のあまりの迫力に皆、固唾を呑んで事の成り行きを見守っている。
14歳の鬼道はアレでも大分角が取れていたんだと皆が再認識した。
ビビリ壁山なんかは寧ろ神に祈っている。

だが、この世に神は居なかった。
だって、あんな痛い戦いしちゃうような連中に敬われている神様にご利益なんてないと断言せざるを得ない。
というか、佐久間の変態な性癖には神様でも手の施しようが無かった。


「てへw地区大会で負けちゃった(ぺロッ」

――さくまああああ!!

お前は馬鹿かああ!と何人もの人間が佐久間に走っていって殴ってやろうと思ったことか。
壁山は佐久間が答えた瞬間に、壁山史上最速のスピードで食堂の窓から脱出した。


「…ほーぅ、今までの練習量では質も量も足りてなかったみたいだな。
俺としたことが、少々甘かったようだ」

そう無表情に呟くと、佐久間に向かって薄く笑った。
その表情は皇帝ペンギンも裸足で逃げ出すほど冷たい。


「今日からくずにはくずらしい躾を施してやろう。
早く人間になれるよう励めよ、佐久間」

――し、躾ぇぇええ!?帝国の練習ってどんななんだぁああ!?

「鬼道…っ(キュン!」

――待て!その反応おかしいからああ!!


皆が一丸となってつっこんだ。
だが、それも鬼道の凄まじい威圧感に押されて口に出すものはいない。
というか、佐久間のどMな性癖のせいでこんな空気になったのだと思うと佐久間をぶっ叩きたいと誰もが思っていた。

しかも…。


「帝国の奴らを蹴落とした連中の実力とやらはさぞかし素晴らしいのだろうな。
練習が楽しみだ」

――ひぃいいいい!

クックックと板についた鬼道の悪役笑いが無言の食堂に響き渡る。
たった9歳の鬼道が瞬く間にイナズマジャパンの支配者に君臨した瞬間だった。


こんなんでFFIを勝ち進めるのが本当に不思議ですね(二週間ぶり二回目)


 To be continued

 

prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -