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「…ずるい」

「きゃあっ、…って佐久間君、なあに?」

夕食の後片付けも終わり、
きゃいきゃいとちびっこ二人と共に寝る準備をしているマネージャー達に間に、
いきなり佐久間が生えてきて恨めしそうに三人を睨む。

ちびっこ二人がジャパンで一緒に生活をするようになって、
ママと一緒でないとまだ寝れないと渋る二人(主に円堂)に暗黙の了解で春奈が鬼道と一緒に寝ることが決まってしまって。
そして円堂は日替わりで秋・冬の部屋で寝泊りすることが女子の間で勝手に決まってしまっていた。
それがそもそも佐久間にとっては面白くなかった。

そして三日経った今日、一巡した二人と二日連続で鬼道を独占している春奈に、ついに佐久間の我慢が限界に達した。
(この三日間、ちびっこ鬼道との仲が一向に進行しないのもそれに拍車を掛けている)


「女ばかりずるい!」

パジャマ姿の女子に普通に混じって喚く佐久間。
その様子を目撃していた染岡は秘かに思った。

――アイツ、普通に風呂上りの女子の集団に入れるってすげぇな。しかも違和感がねぇ。
…俺にはとてもじゃねぇが真似出来ねぇ。


染岡が見当違いな尊敬を抱いてる間に、佐久間はまるで尊敬出来ない主張を始める。

「なんで女ばかり円堂や、ゆっ、ゆーぅと君と一緒に寝れるんだ!?
男女差別だ!!」

流石佐久間、ガチの上にナルシスト属性もあるから女子を非難するのに何の躊躇いもない。
その姿はいっそ清清しいまでに男らしい。
鬼道の名前を呼ぶ時だけ声が裏返ったのさえ純情でいい。(←管理人主観)


戸惑うマネージャーに自分の思いをぶつけるばかりの佐久間に、
思わぬ援護射撃がされる。

「そうだね。俺も守と一緒に寝たいな。
ねえ守、今日は俺と一緒に寝ようか?」

「うん!まも、ひおととねてあげう!
まもがいっしょなら、ひおとさびしくないもんねー?」

「うん、ありがと。守は優しいね」

「えへへー!ひおとー」

ヒロトは佐久間に援護射撃どころか、早々と円堂と一緒に寝る約束を取り付ける。
しかも円堂を抱っこして、このまま拉致る気満々だ。
円堂も抱っこされた上に、褒められて嬉しそうにヒロトを頭でぐりぐりしている。
地味に痛いその攻撃も、ニコニコ顔でヒロトは華麗に受け流す。
なにもかもがヒロトの思惑通りに進んでいる。


――ヒ、ヒロト!…恐ろしい子!!

がびーんと白目になった佐久間は、
そのままマネージャーに有無を言わせず円堂を抱っこしたままくるりと背を向けたヒロトにはっとする。


――そ、そうだ!俺も同じ事をすれば…!!


「ゆっ、ゆーぅとく〜ん」

佐久間の猫なで声に鬼道がびくりとして傍らの春奈の影に隠れる。

「ねえ有人君、今日はおっ、おれっ、俺とっ、ネッ、NEっ、ねっ、ねよっねよっ、ねよぉ…」

その佐久間の荒い息遣いと血走った目に、誰が見ても変質者に分類されるだろう。
鬼道も幼く、まだ変質者の意味は知らずとも、今の佐久間を変質者と認識した。

春奈のパジャマをぎゅうっと掴んで涙ぐむ。
幼いながらも高いプライドが泣く事を拒んでいる。
懸命に涙を堪える姿が逆に堪らない(←管理人主観再び)


――こ、ここで抱っこだ!!

完璧アウトな佐久間が、先程のヒロトの真似をしようと怯える鬼道にはぁはぁと近づく。


その時、鬼道にとっての天の助けとなる声が響く。

「おい有人!
なら今日さー俺と寝ねぇ?一緒に枕投げしよーぜ!」

子供大好き綱海にーにだ。

「うん!ゆうと、今日は綱海と寝るー」

ここぞとばかりに鬼道は綱海へと駆け寄る。
しかも、佐久間がしようとしていた抱っこを易々と綱海がしてしまう。


――がああぁぁん。

哀れ佐久間、女子に文句を言ったのは佐久間なのに、
結局今日も愛しの鬼道とは一緒に寝ることは叶わなかった。

頑張れ佐久間!負けるな佐久間!
頑張れば頑張るほど、鬼道は逃げていくぞ!!

 

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