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「では、私は用(あの子達に服を買ってやらねばwあのだぶだぶの萌え肩wwもすこぶる良いが、何分変態に襲われかねん。早急にどうにかせねば)があるので、午前は自主練とする。
各自練習を怠る事のないように。以上」

久遠監督はそう皆に告げると、足早に食堂を後にする。
こんなんでもFFIを勝ち進めるのが不思議ですね。


「ゆ、有人く〜ん」

監督もキャプテンも不在の今、最早自由時間となんら変わらない食堂で、
早くも佐久間がちびっこ鬼道に接触を試みる。

慣れない下の名前を口にすることへの過度の緊張、
子供に全くウケない爽やかさの欠片も無いその独特のビジュアル(眼帯とか眼帯とか眼帯とか)、
それから全く子供が好きじゃないその元々のキャラ。

それら全てが、いくら笑顔を張り付かせていても、
生来の高い判断能力の備わった鬼道が
「この人、変な人だ」
と判断するには十分だった。

佐久間の精一杯の笑顔をちらりと一瞥しただけでちびっこ鬼道は、
ふいっとそれまで一緒に遊んでいた綱海と立向居の方を向いてしまう。


――があぁぁああん。

がくりと膝を着いた佐久間の肩を誰かがぽんと労わるように叩く。
・・・ヒロトだ。

佐久間が半泣きで顔を上げると、そこには同情で苦く笑ったヒロトがいた。

「佐久間くんは子供が苦手なのかな?
残念だけど仲良くなるのは難しそうだね。
まあ、見てて。俺は光源氏作戦成功させてみせるから」

ずびりと佐久間が洟を啜る。

――光源氏作戦?

んん?と頭を捻る佐久間の前で、ヒロトが円堂に声を掛ける。


「守」

お漏らしショックで頭に登られるのを懸命にブロックしている壁山の隙を衝いて、
背中をよじ登っている円堂がその声に振り返る。

「そこからここまでジャンプできる?
出来るかなぁ?出来たら凄いんだけどなぁ」

にこにこしながら煽るようにわざとらしく首を傾げてみせる。
案の定ちびっこ円堂はその挑発に元気に答える。

「まも、出来るお!かんたんだも」

「えー、本当?じゃあやって見せて」

そう言うとヒロトは両手を広げる。
すると、躊躇もせずにちびっこ円堂はヒロトめがけて飛びついた。

「えいっ」

「わ〜凄いね、守!」

とすっと勢い良く飛び込んで来た小さい円堂をその胸に収め、
ヒロトはくるくるとその勢いのまま回りだす。


――こ、これは!「ダーリーン」「ハニィー」「うふふ」「あはは」のアレだ!!

佐久間がかつ目してさっぱり分からない解説している間に、ヒロトは更なる暴挙にでる。


「守、つかまえたー。
知ってる?捕まると食べられちゃうんだよ」

ちびっこ円堂を抱き締めたまま、あーんと口を開けてみせるヒロト。

「きゃー」

「逃げられるかなぁ?数えきるまでに逃げられなかったらパクッだからね」

「まも、にげうもん。ぱく、だめらかんねー」

「じゃースタート!ごーお、よーん…」

数え始めると同時に更にぎゅうっと抱き締める。
ちびっこ円堂はじたばたと暴れて、その腕の拘束を緩めようとする。
そして少し緩むと、んしょんしょとヒロトによじ登るようにして腕から上へと逃げようとする。

「に、いち、ゼロー」

残るは脚ばかりといったところになると、ヒロトは急に数えるスピードを上げる。
そしてゼロを数えると、またぎゅうっと円堂を抱き締めた。

「じゅるー、そえ、じゅるだおー」

「えー、そんなことないよ。いただきまーす」

ぱく。
あーんと口を開けると、ヒロトは円堂の鼻の頭をぱくりと口に含んだ。


――のお。(←NO)

その瞬間、佐久間の思考が停止する。

「守、おいしー。もっと食べちゃお」

「きゃー、やら、やらー」

真っ白になった佐久間の前で、ヒロトは円堂の顔中にちゅっちゅっと軽くキスをしていく。
しかも円堂は嫌だと言いつつ、全く嫌がっていない。


――のおお、もあああ。(←NO、MORE)

佐久間は最早心肺も停止する寸前だ。

――こ、これが世に言う「嫌よ嫌よも好きの内」か…。

幼いうちから自分に馴れさせるだけでなく、
ハードめのスキンシップにまで馴れさせておくという恐ろしい『光源氏作戦』の実態を目の当たりにした佐久間は思うのであった。


――こんな恐ろしい作戦を思いつくなんて、流石素面でエイリアユニを着れるだけの事はあるな。
と。

基山ヒロト、恐るべし!!

 

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