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一方その頃、勉強会への参加を免れたマックス、影野、半田(成績順)の仲良し三人組みは、
影野家で慎ましやかに勉強会をしていた。
そう、スパルタ方式で勉強をするって拉致られた割りに、全然勉強していない鬼道チームと違って、
こちらは影野のノートを囲んで、結構真面目に勉強が行われていたのだった。


「ふぅーっ」

影野の先生の一口メモレベルの話まで綺麗に書き込まれた、
そこら辺の女子より見やすく取られたノートを書き写していた半田が疲れた様に溜息をつく。
肩をこきこきと鳴らしながら、ふと思いついたように話し出す。


「なー、今頃アイツ等どうしてるかなぁ?」

「あー、半田ってば参加出来なくて実は寂しいんでしょ?」

隣に座ってるマックスが半田を肘でぐりぐりしながら言う。

「さっ、寂しい訳無いだろっ!」

反論するも、半田の顔は真っ赤だ。
図星ってもろバレで、案の定マックスも人の悪そうな笑みを浮かべる。


「ねえねえ、『アイツ等』って誰の事?」

「は?」

「半田君は誰と一緒にお勉強出来なくて寂しいのかなぁ?
染岡?それとも一之瀬?」

「なっ!なんでその二人の名前がでてくるんだよっ!?」

なんでって・・・管理人の趣味?

それはさて置き、半田君の慌てっぷりにもマックスは追求の手を休めない。
にっこり笑って、半田に止めをさす。

「なんでってどっちかが半田の本命でしょ?」

プシューッ。

半田、あえなく撃沈。
顔から湯気を出し、そのままテーブルに突っ伏してしまう。
後頭部から湯気を出している半田に向かってマックスがつらつらと半田観察結果を話し出す。


「だってさー、半田って、染岡がキャラバンで行っちゃった時、すっごい寂しそうだったよね?
置いてかれた子犬みたいな。
でもそれを染岡に気づかれないように一生懸命明るく振舞ったり。
電話やメールで頻繁に出てくる吹雪の名前にしょんぼりしたり。
しかも染岡が入院して残るって分かった時、秘かに喜んでたでしょ?
口では残念がって、染岡の事慰めてたくせに。
あー、これは距離を感じて初めて自分の気持ちに気づいたってパターンかな?とボクは睨んだわけ」

プシュシューッ。
半田の後頭部からまた湯気が噴き出される。


――一方その頃の染岡。

「この幼稚園眼鏡っ!」
「うるさいっ、ヤンキー眼鏡っ!」

低レベルな喧嘩中。


「でもさー、半田って一之瀬からメールとかくると顔がにやけてたよね?
一之瀬からのメールだって気づいても、周りに人が一緒だと、その場では絶対に開かないし。
しかもあとでこっそり見て、によっとしては慌てて厳しい顔に戻してメールして。
そのくせ少しでも一之瀬からのレスが遅くなると、
何回もケータイをチェックしだすんだもん、見てて面白かったよ。
染岡が素っ気無い分、一之瀬の優しさにぐらついたとか?」

ピーッ!
ついに半田から沸騰を知らせる音付きの湯気が噴き出される。


――一方その頃の一之瀬。

「ぷっ!染岡の発音、カタカナってより平仮名だね。
染岡って老けてるけど、まさか江戸時代の生まれとか?」

「一之瀬の和訳、やべぇな。
アメリカ人としても日本人としても終わってんだろ。
あっ、そーか!てめぇは脳ミソちっちぇ原始人だからいいのか」

低レベルな喧嘩続行中。


「ここまで来るとさぁ、流石のボクでもどっちが本命か分かんなくてさー。
いい機会だから本人の口から聞いちゃおうって思って。
ねえ半田ぁー、どっちが本命なの?」

「・・・」
生ける屍と化した半田からの返事は無い。
そんな半田のすっかり沸いた後頭部を影野が優しく撫で始める。

「…半田。
俺ね、半田には幸せになって欲しいんだ。
だから恋の悩みがあったら、いつでも相談に乗るよ?」

影野は数少ない友人の一人である半田が大好きで、好意も駄々漏れだ。
この時も、半田を思いやる影野の言葉に半田もついほろりと来る。
顔を上げると、穏やかな微笑みを浮かべる影野の手を取る。

「影野…。…俺、俺ね。
・・・って!
俺、どっちも好きなんかじゃなーい!!」

半田の見事なノリツッコミ炸裂!
でも、マックス、影野は華麗にスルー!!

「…半田。
俺は半田が誰を好きでも、笑ったりしないよ?」

「そうそう!素直に吐いちゃいなよ。
・・・って噂をすれば電話だ」

着信音の鳴り響くケータイ片手に、
マックスが着信相手の表示を見てから呟く。

「だっ、誰から?」
どきっとした様子の半田にニッと笑うと、ケータイを耳に当てる。

「どっちを思い浮かべた?
…残念、鬼道だよ」
そう言うと鬼道と通話を始める。
話しながら、どんどん口を尖らせていくマックスは、電話を切った後、
何故かにやっと黒い笑顔を浮かべて半田の肩を叩く。


「良かったね、半田。
明日からは二人と一緒に勉強出来るよ。

…だって明日からは全員参加になったんだって」


 

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