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リビングに陣取ったのは文系組。
今回は土門先生の下、染岡、一之瀬の勉強風景をお送りします。
「うっわ、鬼道んちのソファ、めっちゃ手触りいいじゃねぇか…!」
「本当だー、座り心地もサイコー!!」
ブルジョワな家具の数々に、染岡と一之瀬はすっかり「お宅訪問」気分ではしゃぎ出す。
はっきり言って教師役が土門で、しかも鬼道も豪炎寺も同室に居ないとあってかだらけ切ってる。
「こらこら、勝手に人様のおうちの物を触んなって」
土門もそんな二人の様子に苦笑交じりだ。
だが、注意の言葉に土門の方を向いた一之瀬が途端に固まる。
「土門。…眼鏡だ」
その言葉にソファの背もたれに両手を広げ、
足を組んで上を向いて偉そうに座っていた染岡も土門の方を向く。
「へー、似合うじゃん土門。
かっけー、かっけー」
「へへー、そお?
どお?どお?染岡!賢そうに見えるでしょ?」
土門が銀のチタンフレームをくいっと押し上げてから、顎に指を当ててポージングする。
「おー、賢い、賢い」
実際問題、染岡より数段土門の方が賢いのだが、
ソファに偉そうに座ったまま何故か染岡は上から目線で、やる気無さげに言う。
そこには中学生らしからぬオッサ・・・ごほんっ、ごほんっ、…貫禄が漂う。
「ったく、染岡の言葉には心が篭ってないよな〜。
なっ、一之瀬!
お前なら俺のこの格好良さ、分かってくれるよな?
…って、一之瀬・・・?」
土門はわざとらしく嘆いてみせてから、ずっと黙ったままの一之瀬に話を振る。
土門が未だ偉そうにソファに座ったままの染岡から、自分の傍まで寄ってきていた一之瀬に目線を移動させると、
そこには明らかに子供っぽい表情で分かり易く拗ねた一之瀬がいたのだった。
「いつから眼鏡掛けてたの?
…俺、全然知らなかったんだけど…」
上目遣いで土門を睨みながら一之瀬が呟く。
――あ〜、面倒臭せぇ。
染岡、心の中で愚痴炸裂。
でも、面倒見の良い土門はこの程度は最早慣れっこ。
何気に俺様気質の一之瀬が、土門の事をまるで所有物のように発言することさえ慣れている。
「帝国を受験する頃からかな?
これでも俺、結構受験勉強頑張ったからな」
一之瀬の駄々っ子に近い物言いにも、普段の飄々とした調子で土門が答える。
「…三年も前から」
そう呟くと、キッと顔を上げる。
「なんで教えてくれなかったの?
俺には知られたくないことだった?」
――うわ〜、面倒臭ぁ。
この時点で土門さえも心の中で愚痴炸裂。
でも、一之瀬や染岡よりは精神年齢がやや高い土門は取り成すように言う。
「いやぁ、眼鏡って言っても授業中だけだし?
普段は掛けないし、わざわざ言う程の事でも無いと思ってさ。
ほら!それに眼鏡の無い俺の方が格好いいしさ」
眼鏡を取って、一之瀬にむかってポーズを取る土門。
でも、一之瀬の機嫌は直らない。
「俺、土門の事なら何でも知ってると思ってた。
なのに、土門は俺に隠し事してたなんてっ。
土門、俺達親友だよね?
隠し事は無しだよね!?」
――あー、もうどうしろってんだ。
些細な事でも自己中な一之瀬に二人が同時に心の中で愚痴炸裂。
ベシッ!
短気な染岡が一之瀬の頭を後ろから叩く。
「テメェは生きてた事、土門に隠してただろーが!!」
はい、尤もなツッコミ来たぁー!!
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てへっ。
染岡を無言で見上げていた一之瀬が、急に表情を変えて土門に振り返る。
某ケーキチェーン店のマスコットの女の子ばりに舌を出しながら。
「どもーん」
そして誤魔化すように腰に抱きつく。
「土門、眼鏡カッコイー!
ねえねえ、俺にも眼鏡掛けさせてー」
「あ、ああ」
一之瀬の変わり身の早さに、土門は若干引き気味だ。
でもお構い無しに一之瀬は、土門の眼鏡を受け取ると後ろを向く。
「どう?」
そして先程の土門と同じようなポーズで振り向く。
「ぶっははは!
おめぇ、目ぇ、でか過ぎて眼鏡からはみ出してんぞ!
小学生が無理して格好つけちゃったみてぇ」
眼鏡より目が大きい一之瀬に、染岡は大爆笑。
一気に上機嫌になった染岡は一之瀬から眼鏡を奪う。
「ぜってー俺の方が似合うって。
・・・な!どうよ!?」
俯いて眼鏡を装着すると、染岡までもが同じポーズで顔を上げる。
今度は先程大笑いされた一之瀬のわざとらしい笑い声が響く。
「あっはは、本当に似合うね。染岡!
まんま更正しようとしてるヤンキーが、
単純に眼鏡掛けただけで頭良くなった気分でいるって感じでぴったり!!」
はい、実は良い格好しぃの一之瀬は、容姿を馬鹿にされて怒ってたんですね。
プライド高いから、むやみにからかっちゃ駄目ですよ?
それと染岡さんは喧嘩っ早いんだから、こんなこと言ったら・・・。
ねぇ?
「あん?なんだってぇ!?
テメェ、もう一遍言ってみろやぁ」
はい、喧嘩勃発。
「おーい、俺の眼鏡、壊さないでくれよ〜」
すっかり蚊帳の外の土門が、睨みあってる二人に言う。
もー、何でもいいから、勉強しよーぜ?
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