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イナズマジャパンのキャプテン、皆のアイドル円堂守はメチャクチャ張り切っていた。


――う〜、俺も恋をしたから皆みたいなすっげぇパワーでサッカーできるんだ!

今まで恋しているチームメイトの超パワーを見ていた円堂は、ずっと密かに羨ましく思っていたのだ。
恋のパワーは超次元で、試合ならいざ知らず練習で怪我の可能性のあるシュートを受けることを禁止されていた。
円堂が恋するまで恋のパワーシュートはただ端で見ているだけだったのだ。
世界に名だたるサッカー馬鹿円堂にそれは拷問に値する。
自分も早く恋をして、あのシュートを受けてみたい。
そう思っていた円堂は、小走りでゴールポストにつく。


「豪炎寺!
思いっきりすげぇシュート頼む!」

パンと手を打ち、大きく両手を広げる。

「キャプテン、恋できたんスか?」

その姿に、同じく恋できず悩んでいた壁山が訊ねる。


「おう!
俺、サッカーに恋してるって気付いたんだ。
壁山だって自分で気付いてないだけで恋してるかもしれないぞ!」

「えっ、そんなのもありなんスか!?
だったら俺も食べ物に恋するッス〜」

「いいぞ壁山!
ナイスときめき!!」

爽やかに二人で青春サッカーもどきを繰り広げていると、円堂の腹目掛けてすごい勢いでボールが飛んでくる。
どごぉという効果音をあげ、吹っ飛ばされる円堂。
はい、いつものアレです。


「円堂!触れ合い禁止令を忘れたのか!?」

ファイヤートルネードというきっついツッコミを炸裂させた豪炎寺が何事も無かったかのような涼しい顔で言う。

「そっ、そうだった!」

吹っ飛ばされた先で元気に立ち上がった円堂はすぐがっくりと項垂れる。

「俺はこれからサッカーに恋している限り、一生サッカーができないのかぁぁー」

がっくりと一生の終わりのような顔をしている円堂と共に壁山も同じようにがっくりと膝をつく。

「キャプテンはいいっスよ〜。
俺なんてこれから何も食べられないんスよ〜。
俺の一生はもうすぐ終わるっス〜」

ああ〜と二人でがっくりと涙にくれる。
でも、ポジティブの塊円堂がいいことを思いついたように顔をあげる。


「そうだ、壁山。
サッカーとか食べ物とか全部に恋するんじゃなく、
ボールとか何か一個に限定すれば大丈夫じゃないか!?」

「いいっスね、それ!
じゃあ、俺はおにぎりに恋するっス」

円堂の言葉に明るく顔を上げた壁山だったが、すぐ顔を曇らせる。


「あ、でもそれだと、これからおにぎりが食えなくなるってことっスよね?
じゃあじゃあ、あんまり好きじゃないヤツにしないと…。
あ〜、でもそれだと恋してるってことにならないっスよね。
ぐわ〜、俺はどうしたらいいんスか〜!?」

「うお〜、そうかぁ。
ボールに触れられないとシュートが止められないじゃないか!!
どうすりゃいいんだぁ」

二人一緒になって身悶える。
そこに再びファイヤートルネード炸裂!


「そんな一人に決められないようなものは恋では無い!!」

今日の格言きたー!
豪炎寺の言葉に円堂が再び項垂れる。


「そうか…そうだな豪炎寺。
俺、サッカーがやりたくて大切なことを見失っていたよ。
今俺がやらなきゃいけないことはサッカー以外に恋することじゃない。
サッカーとどれだけ触れ合っても尽きることの無い愛を監督に認めてもらうことだ」

そんな円堂の肩に手を置き、昼間なのにいきなり登場した夕日を指さす。

「そうだ円堂!
それでこそ円堂だ!」

絵に描いたようなグダグダだ。
円堂や豪炎寺といった面子にツッコミを入れられる存在は残念ながら今のイナズマジャパンには不在だった。



普段ならそのツッコミ役を担う鬼道は、今宿舎で監督に直談判していた。


「監督、今の『最後のノート』に則った指針ではチームの人間関係はばらばらになってしまいます。
即刻撤回して下さい!」

その言葉に監督は窓の外を眺める。
窓の外には生きる屍の吹雪に、やけにおかまっぽい綱海、集団暴行の現場、そしていつもどおり燃えてる円堂の姿があった。


「…そのようだな」


 END

 

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