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疾風DFと言う名のMF、雷門中のお母さん風丸一朗太はハラハラしていた。


――なんでこいつ等次から次へと沸いてくるんだ。

イナズマジャパンがときめきジャパンに変貌した途端に、まるで狙ったようにジャパン宿舎にわらわらと人が次から次へと集まってくるのだ。
次から次へ集まってくる奴らの目的は分かっている。


まず留学しているはずの雷門夏未がやって来た。
まあ、これは仕方ない。
そもそも、彼女は例の『最後のノート』を届けに来たのだ。
だが、そのノートの存在を知っていた彼女が内容も知らなかったとは限らない。
それでなくても、彼女の円堂ラブは公式なのだ。
限りなく黒に近い。


次に塔子とリカが来た。
応援に来たというが、本当のところは分からない。
何故一之瀬のいる対アメリカ戦の前でなく今なのか。
どうしても穿った見方しかできない。
ほっぺにちゅうという万死に値する行動をした塔子は元より、一之瀬に振られ次の男を探していると宣言したリカも疑わしい。


そして最後が一番不可解なのだが、何故か各国のエース級の選手が揃ってやってきた。
これはもう誰かスパイがいて情報を流しているとしか思えない。
円堂が無防備にも応援と謝罪に来たという彼らの言葉を真に受けて、
今のチームがときめきジャパンだと口にした途端に彼らの目が光ったのは絶対自分の気のせいなんかじゃない。
恋愛至上主義国家イタリア代表、もう既に態度は親友フィディオ。
手の早いイギリス代表、エロ紳士エドガー。
アンダー15なのにあごが割れてる、アルゼンチン代表ツンデレテレス。
ジュニアハイスクールでも非DT率が五割を軽く超えるという噂の国アメリカ代表、癖のない男前マークと、
いつでもギンギン、万年発情男ディラン。
(注:あくまでも風丸君の偏見に基づいた意見です)


どいつもこいつも円堂を狙ってやってきたに決まってる…っ!!

このままでは未来からも円堂を狙って誰かやってくるような気がする。
そうじゃなくても確実に天使と悪魔はやってくる。


今の円堂は『最後のノート』と監督の言葉に素直に従い、恋をしようと必死だ。
フラグをあっちこっちで立てておきながら、そのことに一切気付かない円堂が、今自ら恋を探し求めているのだ。
目の色を変えて世界中から人が押し寄せてもおかしくはない。
現に今、円堂を風丸が容易には近づけない程の熱意を持って大勢の人が囲んでいる。


「あ〜、俺も恋したいぜ」

そんな中、円堂が焦れた様に叫ぶ。

――ば、馬鹿!そんな火に油を注ぐようなことを言うなぁ!!

円堂の言葉と共に発動する沢山のウルフレジェンド。


「ナイス、吹雪!
騒ぎにならないうちに早くこいつらをぶっ飛ばしてくれ!」

「…え、何?」

風丸が後ろを振り向くと、そこには染岡ショックに未だ立ち直れていない、いつもよりさらに白い吹雪の姿が。

――違う、あれは全部あいつらの暴走した本能かああ。

風丸がよくよく見てみると、ヒロトにもフィディオにもあまつさえマネージャー達にさえ男女問わず全員に狼のスタンドが背後に見える。
このままではやばい。
今すぐにでもこの中の誰かが、その相手に立候補し出してもおかしくない。
この場にいる全員が
「俺(私)が円堂君(守)に恋を教えてあげるよ」
とか言ってあんなことや、こんなことを手取り足取りするつもりだ。
そんなことになったらこの場は血で血を洗う修羅場になってしまう。
少なくても自分にはそいつを抹殺する覚悟がある。


だが、そんなことになっては不祥事として日本がFFI辞退という可能性も有り得る。
折角ここまで頑張ってきたというのに、否、そんな事態になっては円堂が悲しむ。
彼は何よりもサッカーが好きなのだ。
そこで風丸ははっと思いつく。

人という名の狼達をかき分け必死の思いで円堂の元に辿りつく。


「円堂、そんな風に悩まずとも、お前は既にサッカーに恋してるじゃないか!」

ドーンという効果音と共にその言葉は円堂に突き刺さる。

「そうか、そうだよな。
俺、寝ても覚めてもサッカーのことばっか考えてるもんな。
これは既に恋だよな!
サンキュー、風丸。
お前が言ってくれなかったら気付かなかったぜ」

円堂が、憑き物が取れたようにさっぱりとした笑顔を風丸に向ける。

「良かったな、円堂」

その笑顔にほっこりしとして風丸も笑顔を返す。

「よーし、そうと分かれば早速サッカーするぞ」

円堂が腕を回しながらグラウンドへ向かうと、途端に風丸の肩に手が置かれる。


「…風丸君、よくもやってくれたね」

ぎくりとして後ろを振り向くと、そこには狼の変わりに父さんという名の大仏のスタンドを出して黒く微笑むヒロトがいた。
そしてその背後には同じように各々スタンドを背負っている大勢の円堂狙いの人達。

――今日が俺の命日か…。
それでも、円堂を狼の毒牙から守れたことに満足して風丸は目を閉じるのであった。


 

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