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イナズマジャパンの控えの守護神、永遠の二番手立向居勇気はドキドキしていた。


――このまま円堂さんが恋をできなかったらもしかすると次の試合は俺が…。

今まで出場機会は全て円堂の控えの立場だったし、いつでも出場は急に告げられた。
だけど、この前敬愛する円堂その人から
「俺がこのまま恋できなかったら、イナズマジャパンのゴールはお前に任せるぞ」
と肩に手を置かれ、言われたのだ。
否が応でも期待と緊張が高まる。


「いくぜ、立向居!」

綱海の掛け声と共に激しい唸りを上げてボールが自分目掛けて飛んでくる。
恋しい人がそんな自分を見かねて特訓に付き合ってくれてるのだ。
しかも、恋人である綱海のシュートも自分へのときめきパワーでパワーアップしている。
これが幸せじゃなくて何を幸せと呼べばいいのか。
立向居は幸せで、辛い特訓も楽しくて仕方なかった。


そう、辛いのは特訓では無い。
特訓が終わってからが、本当の、
ある意味精神の修行とも言うべき時間が始まる。
恋人綱海からのセクハラ攻撃だ。


「特訓の後は腹が減るよな」

眩いばかりの笑顔で、そう言われれば爽やかに頷ける。
でも…。

「よっしゃ、今すぐおれのチョコバナナ食わせてやっからな!」

特訓直後にそう言いながらユニフォームのパンツに手を掛けられたら、正直げんなりする。


「早くシャワー浴びたいですね」

何気なくそう言えば、

「そーか!
じゃ、今すぐお前の顔にシャワーかけてやるから待ってろ」

と、これまたユニフォームのパンツに手を掛ける。


はっきり言って万事が万事、こんな調子なのだ。
特訓後の疲れた体では堪える。
もう何か言う気力もなくなる。


なんとか食事も済み、風呂に入り、自分の部屋に戻ると、立向居の部屋には何故かさっきまで一緒にいたはずの綱海がベッドで自分を出迎えた。


「遅せーぞ、立向居」

「な、なんで綱海さんが先にいるんですか!?」

「なんでって、そりゃ俺のど根性バットでお前に一発どでかいの決める為だろーが」

うん、それはここに来た理由であって、先に来れた理由ではないですね。

「だ、駄目ですってば!
今は触れ合い禁止令が出てるんですから、そういうことはしません!」


真面目な立向居は、監督から禁止令が出た瞬間から律儀に言いつけを守った。
それこそ、綱海が際限なくセクハラ攻撃を仕掛けてくるぐらい。
そう、イナズマジャパンで恋人同士なのは二人だけ。
触れ合い禁止令の被害を蒙っているのはぶっちゃけ主にこの二人だけだった。


真面目な立向居が少し怒った顔で綱海を追い出すためベッドに近づく。

「駄目なものは駄目です」

そう言うと一気に布団を剥ぎ取る。


「!!」

「も〜、そんながっつくなって」

ベッドの上で綱海が、上と下の大事なところを隠すポーズを決める。
これがトドメとなってついに立向居はがっくりとベッドに突っ伏してしまう。


「…なんで裸なんですかぁ」

怨めしそうに顔を少し上げ呟く。

「なんでって、そりゃ風呂から直でここに来たからに決まってるだろーが」

フル○ンで仁王立ちになって何故か自慢げに綱海が言う。
うん、立向居より先に来れた理由は判明したね。


「なんでなんですか、綱海さん?
なんで、そこまでヤろうとするんですか!?
俺、できません!
だって次の試合、俺が円堂さんの代わりに出場するかもしれないのに、
そんな無責任なことやっぱりできません」

立向居がさり気無く綱海Jrが目に入らないようにしながら、じと目で綱海を睨みつける。
すると、途端に珍しく真面目な顔をして立向居の前にしゃがみ込む。


「やっぱり俺としないのは円堂の為、か…」

唇を突き出し、不貞腐れた様に綱海が呟く。
あれ、あれれ?
その今まで見たことの無い綱海の態度に立向居は口に笑みが浮かぶのを抑えられない。


「も、もしかして綱海さん…」

「んだよ、悪りぃかよ。
そうだよ、嫉妬だよ、嫉妬」

浅黒い顔を微かに赤くして、綱海がそっぽを向く。


「だって、俺、今までだって円堂さん円堂さんって綱海さんの前でいっぱい言ってたのに、嫉妬なんて全然…」

今までいつだって綱海は自分が楽しそうに円堂の話をするのを嫌そうにしたことはない。
綱海は嫉妬なんて縁のない人なんだと思っていた。


「それとこれとは話が別だろ。
誰かの為に俺としないなんて、俺よりそいつの方が好きみてーじゃん」

子供のように拗ねる綱海を前に立向居のときめきゲージはみるみるアップする。


「綱海さん…」

触れ合い禁止令を無視して手を握り、綱海を感激で潤んだ瞳で見上げる。


「確かに円堂さんのことは好きです、憧れてます。
でも、こうやって触れたいのは綱海さんだけです」

「立向居…」

二人で見つめあい、ぐんぐんとときめきゲージを高め合う。
立向居が照れたように顔を逸らすと、同じようにみるみるうちにアップした綱海Jrの姿が目に入る。
綱海は真っ裸ってことをすっかり忘れていた。


「R15ぉおお!」

綱海のど根性バットに魔王・ザ・ハンドを炸裂させる。
哀れ綱海、悪いことなど全くしていないのに昇天…。


 

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