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自分たちの背後から聞こえる荒い息と喘ぎ声。
そして水辺でもないのに聞こえてくる謎の水音。
それら全てが自分のチームメイト達から聞こえてくるという事実は、染岡達の根気を削ぐに足りた。
中でも普通を信条とする半田はこの異常な事態に耐性が全く無かった。
少林の叫び声が聞こえた瞬間から両手で耳を塞いだ。
勿論作業なんてできやしない。
「半田っ」
低い声で染岡が叱責すると泣きそうな顔で耳を押さえたまま首を振る。
「なんで皆平気なんだよぉ・・・?俺、もう無理だよ〜!」
責めるようにそんなことを言われれば、気の弱い影野の手も止まる。
困ったように半田を見る影野を庇う様にマックスが言う。
「平気じゃないけど、一番の解決法が鎖を切ることだって知ってるからじゃない?
困ってるだけじゃ事態は好転しないしね」
鎖を切ろうとする手を止めずにそう言うマックスに半田はもっと泣きそうな顔をする。
「ほらよ」
耳から手を離し、俯く半田に染岡が少林のチェーンを手渡す。
「聞きたくなきゃ、歌でも歌ってろ」
そう言う染岡も口笛を吹き出す。
半田がチェーンを手に鎖と格闘しだすと、口笛を止め呟く。
「早くあいつら助けてやろうぜ」
半田がやけくそ気味に校歌を歌いだすと、それにマックスがボイスパーカッションを合わせる。
マックスがウィンクするとさらに影野が半田とハモる。
三人分の歌声が背後の淫らな音を掻き消す。
…だが、いくら音が消えたとしても背後で行われている行為は決して無くなりはしないのだった。
「しょ、しょめおか〜」
暫くしてまた半田が情けない声を上げた。
「なんだ?」
「なんか手があっ」
その声で染岡が半田を見ると、ジャージが肌蹴け、Tシャツの中に手が入れられているのが目に入る。
そして半田の背後で片手で宍戸のものを、口で少林のものを弄んでいる風丸の姿も。
げえっと慌てて目を逸らす。
「半田、我慢しろっ!
利き手じゃねぇから大したことはねぇ」
「そんなこと言ったって〜」
ふぅんっと何かに堪えるような息を上げながら半田が訴える。
「鎖に集中しろっ!
そんなの忘れちまえっ」
その言葉に従う為、半田は風丸を抑えていた手を放し、再度作業に戻る。
だが半田の意思と裏腹に、自由になった風丸の手はここぞとばかりに半田の体を蹂躙しだす。
「あ・・・っ、ア…ッ、やっ、やだ…ッ!
そ、染岡、染岡あぁ…ッ」
懸命にチェーンを動かしていた手がだんだんとゆっくりになっている。
集中しろというのは少しばかり酷なのかもしれない。
明らかな作戦ミスだった。
「ひゃうんっ、て、手が二本、と、かぁ…ッ!」
上と下の二手に分かれて半田の体を弄り始める風丸の手に半田は反則だぁとばかりに声をあげた。
半田の後ろでは、宍戸と少林がお互いを慰めあっている。
もう完墜してしまった二人よりも半墜ちの半田にターゲットを絞ったらしい。
「もっ、もう、無理ぃ…ッ!」
ズボンが摺り下げられトランクスが丸見えの見るも無残な姿で半田が蹲る。
自由自在に動く風丸の手を半田はもう追う事さえ出来てない。
翻弄されきっていた。
「しっかりしろっ、半田っ!」
染岡の声に反応して半田が僅かに顔を上げる。
「…ごめんな染岡」
それは最後の気力を絞った半田の謝罪だった。
せめてもの謝罪とばかりにそう呟いた半田は、くるりと皆に背を向け、背後の風丸の首に手を廻す。
昂ぶった欲望を風丸に押し付け、唇を重ねたままふりふりとお尻を振る。
さながらお預けをくらっていた犬がやっと餌に有り付いて尻尾を振っているように。
「素直な半田は可愛いな。
…いっぱい可愛がってやるからな」
首にしがみ付いている半田のお尻を撫でながら、その肩越しに染岡達に視線を投げる。
次の獲物を吟味するかの様に。
半田、ついに脱落…。
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