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「半田」

「あっ、鬼道!迎えにきてくれたんだぁ」

違うクラスの鬼道が半田のクラスに放課のチャイムと同時にやってくるのも、もう半田のクラスメイトにとっては見慣れた光景だ。
それと鬼道に嬉しそうに駆け寄る半田の姿も。


「お前が逃げると困るからな」

「うっ!…もー、逃げたのは一度だけじゃん。
お前もいい加減忘れろよぉ」

「無理だな。お前が進んで病院に通うようになるとは思えん」

ぐしゃぐしゃと鬼道が半田の髪を掻き混ぜる。
「あー、もー」と言いながらも半田に怒っている様子は無い。

「あの時は診察台が嫌だったの!
今は内診滅多に無いからもう平気だっつーの。
それに俺、今はお前んちのカテキョの方が嫌!
なんでわざわざお前じゃなくてカテキョに勉強教えてもらわなきゃいけないんだよ。
あのカテキョ英語ばっかやるし、それにやけにマナーに煩いから嫌いなんだよなー」

「…そうか」

唇を尖らせて文句を言う半田に鬼道が優しい口調で一度相槌を打つと、ばんと半田の背を叩いた。

「ほらさっさと行くぞ。
早く診察から戻って勉強しないといけないからな」

「げー」

嫌そうに顔を顰めていても半田が鬼道の後ろに続く足取りは軽い。
今日も今日とて二人仲良く下校していくのだった。





「あー、あの噂本当なのかな?」

二人が揃って教室を後にした途端、半田のクラスメートの女の子は傍らの女子に話しかける。

「あの二人がデキてるっていうネットに広がってる噂?
文化祭に来てた外部の子が二人が抱き合ってるの見たっていう例の?」

「違う違う!もー、それいつの噂よ。
それはデマだってもうネットでも落ち着いてるじゃん。
あれは変態オヤジから鬼道君が咄嗟の機転で半田君を助けたのを誤解しただけって聞いたよ。
私サッカー部の子に直接聞いたから確かだし、それに最近半田君サッカー部の女子とやけに仲いいじゃん。
もしかしたらあの中に彼女いるのかもね。
って、そうじゃなくて半田君の新しい噂」

「えっ、何何?知らないどんなの!?」

「なんかね○組の子が見たらしいんだけど、半田君ね高等部の制服、なんか女子の方試着してたらしいよ」

「げっ、何それ!えっ、半田君ってそういう趣味あんの!?」

「わっかんない。
でも最初誰か分かんなかったらしいよ、その子。
転校生かと思って見てたら、なんか見覚えあるなーと思ってやっと半田君だって気づいたんだって。
すっごい女子の制服馴染んでたって話だよ」

「へー、やっぱそういう趣味なんだ」

「かなぁ?
でも私その話聞いて、さっき鬼道君と一緒に帰る半田君見て納得しちゃった。
なんか半田君って女子の制服着てても違和感なさそー。
鬼道君と一緒に居ると特にそんな感じ」

「って、それってネットの噂に毒されてんじゃん。
それか二人はデキてるって噂も本当だったりして」

「だったらウケるって。
もしそうだったら愛しい鬼道君の為に高校から半田君が女子になるって事でしょ?
ナイ、ナイ!そんなの有り得ないって!
そもそもどうやって男子が女子になんのよ。無理っつー話でしょ」

「まー無理があるけどね、そこは妄想でカバーっしょ。
鬼道君と半田君なら絵になるし。
そうして女になった王子様は愛しいもう一人の王子様に永遠の愛を誓うのでした。
メデタシ、メデタシってね!」


 END

 

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