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「うらあ!どうだっ!!」

俺は自信作のメニュー表を皆に見せびらかす。
でも、着替え中の皆から返ってきたのは芳しくない返事ばかり。

くそぉー、折角メイド喫茶らしく布ばりにしてレースでデコったっていうのに、そんな反応かよ!
メニューも目金とマネと俺で考えたんだぞ!?
鬼道んちに行く間も惜しんで頑張ったってのに、もっと感動しやがれ!!


あの日アイデンティティーをメイド喫茶如きにぼろぼろにされた俺は、雪辱の為に準備に燃えに燃えた。
衣装関係は全部秋葉名戸にお任せだからいいとしても、それでも「喫茶」なんだからメニューとか部屋の内装とか色々準備が必要だろ?
目金なんかメイドには詳しいけど内装とか興味無くて、ただ机を並べるだけで何もしないつもりだったらしい。
だから俺が中心になってマネにも協力してもらってこの白を基調とした内装に決めた。
雷門んちに色々あるって言うから、わざわざ雷門んちにマネと俺でお邪魔して物色して見つけたのが今机を覆ってる白いクロスだ。
白のクロスも、テーブルの上に配置した花とかぬいぐるみとかも準備が簡単だった割りに可愛らしいだろ?
女の子受けを狙ったんだぜ。
それに写真サービスを考えたのも俺だ。
指名したメイド(もしくは執事)と一緒に写真を撮って、その場でプリントして渡すってヤツ。
勝手に女装した写真とか撮られて目金みたいにネットに晒されたくなくて考えたんだけど、これ結構いいよな。
サッカー部に好きな奴が居る子とか、このサービスって絶対嬉しいと思うんだ。
隠し撮りより、好きな奴と一緒に写りたいって皆思うはず。

まあチラシとかは絵が上手いマックス中心に作ったし、
看板なんかは皆で作ったんだけど一番頑張ったのは俺だって胸を張って言えるね。
だって昨日なんか準備が完成した瞬間、マネージャー達と手を取り合って喜んじゃったもん。
まったく準備期間ですっかりマネと仲良くなっちゃったよ。


「半田君!さっさと半田君も着替えちゃって!」

皆の感動を得られなかったメニュー表を持ったまま、内装の最終チェックをしていた俺に木野がすっかり遠慮が無くなった感じで声を掛けてくる。

今日メイドの立場を男子に奪われたマネ達は、男装して執事をすることになった。
今も執事の格好で忙しそうに着替えの済んだ奴らにメイクしている。
髪の毛をタイトに纏めて男装して甲斐甲斐しく動き回るマネ達は、はっきり言って皆、格好いい。
例えメイクしている相手が染岡で、どう見ても笑いを取る為のメイクだとしても、だ。


俺が久しぶりの皆の前での着替えに密かに緊張してる中、皆の感嘆の声が部屋に響く。

「おおーっ!風丸きれーっ!!」

別室で雷門が付きっ切りで着替えとメイクをしていた風丸が姿を現したからだ。
俺は皆が風丸に注目している隙に、ささっと制服を脱ぐ。
普通メイドの俺の服は黒のミニワンピースに白エプロンのオーソドックスタイプだ。
それを黒ワンピだけ着て、風丸を見る為に皆の輪に後ろから加わる。
だって気になるだろ?日本最強男の娘のメイド姿。


風丸の新緑色の髪に合うように選ばれた濃紺のロング丈のワンピースは、
スタンドカラーの入った高く首にフィットした襟に、二の腕の部分だけ膨らんだパフスリーブ、袖の部分はダブルカフスになっていてすっきりとした白が覗く。
そしてペチコートでふっくらとスカートの部分が膨らんでいる。
胸元には白いハンカチーフがちらりと見えているし、首からは眼鏡がチェーンで下がっている。
髪はいつもと同じ位置で縛って、今日はそれをポニーテールじゃなくシニョンに纏めている。
メイクはそんな濃いわけじゃないのに、どっからどう見ても有能そうな美女だ。

エプロンもしてないしメイドっていうより昔の家庭教師って感じ。


「どうです!自信作ですからね」

仮沢が風丸の姿に満足そうに頷き、その隣でパシャパシャと相戸留が一眼レフの高そうなカメラで風丸の写真を撮っている。
この写真がパネルになって秋葉名戸の文化祭で展示されることになっている。
ついでに今日もこの後入り口に展示され、メイドのメンバー紹介表になる。

う〜ん、でもこのガチな美しさじゃ風丸が人気ナンバーワンだろうな。
だって半端ないもん。
女の子でもここまで綺麗なのってあんまり居ないうえに、
女装は本意では無いっていう雰囲気が近寄りがたい美女オーラになってばんばん出てる。
そのせいか希少価値さえ感じるレベルの美人さんになってる。
変に媚びてなくて風丸らしい凛々しさはちゃんと残ってるし、これは一目見ないと勿体無い。


俺も一番人気になってやると意気込んでチラシ配ったり、色んなヤツに声掛けたりしたけど風丸には勝てないって素直に思うもん。

でも今まで準備に熱中したせいか全然悔しくないし、やる気も全然減ってない。
もう絶対このメイド喫茶成功させたいって思ってる。


ってか、このメイド長風丸さえ居れば成功間違い無しでしょう!!
俺は手ごたえってやつを感じていた。

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