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「何言ってるんだよ!!そんなの絶対反対だ!!」
俺は円堂の言葉にまたも立ち上がってしまう。
だって下手に女装なんてして俺の事がバレたらどうするんだ!?
あれ?半田ってばやけに女装するの慣れてるな、とか言われちゃったらどうすんだー!
しかも服を作るとかって採寸なんかされた日には胸がある事バレちゃうかもしれないだろー!?
俺が反対を強く表明すると風丸も青筋ぴくぴくさせながら立ち上がる。
「俺はそんなヤツらの為に女装するなんて死んでも御免だ」
「そうだな。
そういう汚い手段を選ぶぐらいだ、到底信頼できる相手では無さそうだしな」
さりげなく鬼道も反対してくれる。
えへへ、鬼道ってね、いっつもさりげなくこうやって俺の味方してくれるんだぜ。
なんたって俺の自慢の彼氏ですからー!
でも実際には染岡ぐらいにしか自慢できないんだよなぁ。
皆には内緒だからさ。
だから今も鬼道が一緒に反対してくれても必要以上に嬉しそうな素振りは見せないようにしてる。
って、こっそり片足を抓ってるだけなんだけど。
俺達三人が反対意見を言うと円堂はそれでもやっぱり、にかって笑った。
「確かに鬼道の言うとおりかもしれないけどさ、
だからこそ直接会って話を聞いてみないと判んないだろ?」
そこで一旦言葉を切ると、今度はマネージャー達や一、二年の方を見て言った。
「それに俺達がメイドをやるのは秋葉名戸の為じゃないだろ。
後輩の為に新しい道具が買いたいからだ。
それにマネージャー達にばっかり頑張らせるんじゃなくて、俺も何かやりたいって思ってたから実は丁度いいって思ってるんだ、俺は!」
円堂がそう言い切ると、マネジも後輩達も感動の面持ちで顔を輝かせる。
そうなると、三年も「まあ仕方ないか」って空気になってくる。
うう、円堂の馬鹿ぁ〜。
俺だって何にも無ければ「後輩の為なら女装ぐらい我慢してやるか」って思っただろうけど、
俺にはそれより大切な隠さなきゃいけない事があるんだよ!
もう完全決まりきった雰囲気に、俺は縋るように鬼道を見る。
この雰囲気を覆せるのは鬼道しか居ない。頑張ってくれ、鬼道!!
俺が念を送ると、なんとなく鬼道のゴーグルが任せておけって感じで光った気がした。
まあ、なんとなくだけどさ。
というか、そうだったらいいなっていう俺の願望だけどさ。
でも、鬼道は俺の視線に気付いたのか本当に円堂に否を唱えてくれる。
「円堂、お前の言い分はよく分かった。
お前の言うとおり話を聞くだけは聞いてみよう。
ただ、話を聞いて皆が納得出来ないようだったり、秋葉名戸の連中が信頼に値しないやつらだったら、目金がどうなろうが、お前がどう思おうがこの話は断る。
それでいいな?」
なにいいい!?
なんだよそれ!?お前それで反対してるつもりかよ!?
分かってない!円堂ってヤツを分かってないよ!鬼道!!
俺は鬼道が円堂に言った言葉に密かに憤ってしまう。
「おう!じゃあ今度秋葉名戸のヤツと会って話を聞くか。
目金、セッティング頼むな!」
「は、はいー!」
話を前向きに検討する方向に決まったからか、円堂の言葉に目金が嬉しそうに答えてる。
反対に俺は終わった感でいっぱいだ。
もうっ!なんで鬼道は未だに円堂の事をよく分かってないんだよ!?
会っちゃったらもうお終いなんだよ!
だってさ!
円堂がこうだって一度思ったら、周囲を納得させるのは滅茶苦茶簡単だし、
それに円堂は例え相手が悪人でも改心させて信頼出来る人物に変えるヤツなんだよおお!
もう、サッカー部が全員で女装メイド喫茶をやるのは決まったようなもんなんだよおおお!!
その日の放課後、
自分の運命を悲観した俺は、不甲斐ない鬼道に散々八つ当たりをするのだった。
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