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「皆さん、助けて下さいっ!」

土日を挟んだ月曜日、緊急集合をかけた目金は開口一番そう叫んだ。

もうさ、昨日の朝に緊急集合のメール貰った時点で嫌な予感はあったんだよな。
土曜に目金、秋葉名戸に頼みに行くって言ってたし。
鬼道も昨日会った時「何かそこでトラブルでもあったのかもしれん」なんて言ってたし。


「どうした目金!?まずは事情を話してみろよ!」

円堂の促しに、泣きそうな顔のまま頷いた目金はちらりと風丸を見てから口を開いた。


「実はですね、メイド服を全員分作る事になりまして…。
皆さんには女装してもらう事になりました!!」

「はあああっ!?」

目金がえいっとばかりに大声で言った内容に、俺達の普段より一オクターブ低い声が部室に響く。
つーか、俺なんか立ち上がっちゃったもん。
だって、女装なんて、ねえ?
事情のある俺は色々と困るんだよっ!

俺達の本気の抗議に目金が逆ギレ気味に叫ぶ。


「僕だってねぇ、好きでこんな事言ってるわけじゃないんですよ!!
写真を人質に取られていなければ、こんなことは…っ!」

「人質?」

「そうです!あっ、あの人達は初めからこれを狙ってたんですよ。
相も変わらずこんな狡猾な事をするなんてっ。
しかもこの僕にですよっ!
欠流君、欠流君って可愛がってくれてると思ってたのに酷いです〜っ!!」

ついに泣きだした目金が涙ながらに語った話によると、つまりはこういう事らしい。


「お前がサイズ確認と称して着せられたメイド服姿の写真データをネタに脅されている、と」

「ううっ、…そういう事です」

鬼道の要約に目金が頷く。


昨日、内々に約束していたメイド服借用の件で秋葉名戸を訪れた目金は、サイズ確認の為と言われメイド服を渋々着用したらしい。
普通にこの時点でおかしいって気づけよ!

で、その姿をデジカメで撮られたらしい。


「しかも『手が滑ったあー』と言って、その写真を自分のブログにアップしたんですよおお!
アップされたのは一分にも満たない時間でしたけど、それなのにあのコメント数!
自分が一方的に萌えられる立場になる事が、あんなにも気持ち悪い事だったなんてっ!
ああっ、思い出しただけで身の毛がよだつ!!」

確かに秋葉名戸のサッカー部の仮沢ってやつのブログを見たら、
「見たww目金きゅんはあはあwww」とか
「再うpきぼん!!!」とか「欠流たんをクンカクンカしたいお」とか酷いのだと「メイド欠流きゅんの眼鏡にぶっかけたいおお」
とかの書き込みが沢山あって普通にドン引いた。

うわ〜、なんだよこれ…。


「あー…、南無目金。これは協力できないや。
諦めてボク達の為に一人で犠牲になってよ」

同じくドン引きしたマックスが目金の肩を叩くと、目金は人間ここまで必死になれるんだなってくらいの必死さで言い募る。


「違います!違いますよ、皆さん!!
脅されているのは僕の写真だけで、皆さんのメイド姿はこんな風にネットに晒されるわけじゃありません!」

「自分のブログの客寄せで無ければ、じゃあ何が目的なんだ?」

鬼道の言葉に目金は今度こそちゃんとした説明を始めた。


「なんでも自分達の文化祭でメイド服を作品として出品したいそうです。
それで中学生にしては抜群の知名度を誇る僕達雷門中サッカー部にモデルを依頼したいと。
自分もその分野は疎いのでよく理解できませんが、
日本が誇る最強の男の娘、風丸君にメイドコスをさせた日には日本中から注目されるって。
でも普通に頼んだら断られると思ってこんな強行手段を選んだんだって言ってました」

「・・・」

うん、もうね。
検討の余地なしだろ、これ。
女装写真が展示される時点でネットに晒されるのと大した違い無いじゃん。

名指しされた風丸なんて青筋立てて無言で怒ってて、怖くて声が掛けられないもん。

でも、そんな小さい事は全く気にしない奴がうちの部には一人居た。
・・・勿論、われ等がキャプテン円堂だ。


「すっげー、風丸って日本最強男子なのか!!
それってどうやって決まったんだ!?」

「違いますよ円堂君。男子ではなく男の娘です」

「だから男の子だろ?」

一人興奮気味に目金とズレた会話をしている。
そしてにかっといつもの様に笑ってからまさかの一言を言い出す。


「まあ、なんにせよ秋葉名戸の奴らも困ってるんだろ?
手段は悪いけど、困ってるんなら話だけでも聞いてやろうぜ!
俺達だって頼ってるんだからさ!」

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