真ん中U1
「なあ今度の土日、お前暇か?」
鬼道がベッドで俺の肩を抱き寄せ、訊ねてくる。
あの日めでたく恋人同士になった俺達だけど、結局恋人同士になってもやってる事は相変わらずだった。
皆には秘密の関係だし、ぱっと見は男同士だから大っぴらに外でデートもできない。
変わったことと言えば、
キスをするようになったことと、お互い素直に気持ちを言えるようになったぐらい。
まあそれだけでも十分鬼道の雰囲気が甘くなったから満足なんだけどね。
だからさこんな風に改まって予定を訊かれたりなんかしたら、初めてだからちょっとときめいちゃうよな。
「いつも通りお前んちに来るつもりだったけど?」
なに?なに!?ってドキドキしながら鬼道に首を傾げる。
もしかして改まったデートのお誘い!?
「では一緒にプールに行かないか?
前に好きな所に連れて行くと約束しただろう」
「プール!?」
鬼道の言葉に俺は思わず上半身を起こして鬼道を見つめた。
トキメキ以上に「プール」って言葉に反応してしまったのはこの夏の猛暑のせいだ。
決して俺が子供っぽいわけではない、…と思う。
胸が男と言い張るには少しばかり大きくなった俺は、学校のプールは皮膚の病気ということにして全て見学して過ごしていた。
プールを見学する奴は殆どが女子とはいえ必ず何人もいて、女子達とおしゃべりするのは思いの外楽しかったけど、それとこれとは話が別だ。
つーか、あんな熱い最中に目の前でプールに入っているのをただ見ているのは、ある意味拷問だ!!
女子の思いがけない本音とか恋話とは全く違う次元の話!!
プールは真夏の学校のオアシスなのに、それが絶対入れないとかって酷くないか!?
俺はそれをこの夏ずーっと我慢してたんだぞ!!
俺が「プール」って言葉に過剰反応してしまうのは仕方ないと思う!!
「なあなあ俺、大っきいスライダーがあるとこがいい!」
俺はもうすっかりプールで頭がいっぱいだった。
俺が鬼道の上に乗っかってお願いすると鬼道は俺の髪を撫でながら苦笑する。
「そんな人が沢山いる所でいいのか?
あまり人のいないホテルのプールあたりを考えていたんだがな」
「お前は本っ当、親父臭いなぁ。
そんなとこ行って何が楽しいんだよ?」
出た!鬼道のサラリーマン発言!!
楽しいところよりも静かで落ち着いた場所の方がいいとかどこの中年親父だよ。
俺は若さを感じない鬼道の発言をからかうと、鬼道は少しだけムッとした顔をした。
でもすぐ呆れたように笑う。
「まあ、お前の好きな所に連れて行くと約束したしな。
後悔しないならそれでいい」
「やったぁ、サンキュー鬼道!」
俺は承諾してくれた鬼道の首に想いっきり抱きついた。
「今度の土曜、部活が終わったらそのまま行こう。
水着は俺が用意するから、お前は出掛けられる格好だけして来い」
鬼道はそう言うと、約束のキスをおでこに落とした。
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