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「半田、腹痛はもう平気なのか?」

部活が始まる前の部室で、鬼道が俺に聞いてくる。
腹痛は皆がいるときの生理を表す秘密の暗号。


「ああ、もう大丈夫!」

俺はある期待を込めて笑顔で答える。

「じゃあ、腰の具合の方はどうだ?」

案の定、鬼道は俺の期待に応えてくれる。


『腰の具合』は皆がいるときの秘密の誘い文句。
俺が今、ちょうど聞きたかった言葉だった。


「もうバッチリ!
早く運動したいって感じ」

俺の返事に鬼道は口の端を少し上げる。


「もう少しの辛抱だ」

俺はその皮肉気で、偉そうな顔を見ただけで胸が高鳴る。
生理で一週間以上も我慢していた俺は、早く鬼道にめちゃくちゃにされたくてしょうがない。
この場でとろけそうな体を急いでユニフォームに収めると、俺は意識をサッカーに向ける為、自分で自分の頬を叩いた。


部活が終わり、いつものように皆で一緒にわいわいと学校を出る。
何気ない様子で皆と別れると、いつもと違う角を曲がる。
そこは鬼道との待ち合わせ場所。
鬼道の家の車がそこで俺を待っている。


鬼道の隣に乗り込むと、途端に足の間に手が割り込まれる。
運転手さんの手前、足の内側を撫でられるだけで、特に何かされる訳じゃないのに、俺は甘い吐息を抑えられない。


こうやって週に何回も部活帰りにやってくる俺のことを、鬼道の家で働いている人達はどう思っているんだろう。
特に毎回必ず送り迎えをしてくれる運転手さんは絶対気づいているはずなのに、変わらず丁寧な態度で接してくれる。
どんな関係か、二人で何をしてるのか問いただされたら、俺はなんて答えていいか分からない。
何も聞かないで、そっとしてくれる運転手さんがありがたかった。


鬼道の部屋に着いた途端、二人で競うように相手の服を脱がし合う。
素早く鬼道の前だけを肌蹴させた俺は、勝ち誇った顔で鬼道を見上げると、
跪いて鬼道の少しだけ勃ち上がり始めたソレに顔を寄せる。
まだ大きくなりきっていない時が、俺は好きだったりする。
出来るだけ根本まで口に含む。
だってそんなこと、先に脱がせることができたときしかできない。
自分の口の中で大きくなると、感じてくれてるって実感できて嬉しい。


大きくなっても、喉の奥を開いて出来るだけ根本までくわえ込む。
ずっと吸い込みながら舌を這わすと苦しいし、どうしたって涎が垂れてじゅるじゅると音が出て恥ずかしい。
でも一生懸命舐めたら、鬼道が眉を寄せて気持ち良さを耐えてるような顔してくれる。
この顔、めっちゃ好き!
だって俺が鬼道にこんな顔させてんだぞ!それってスゴクない?
ついつい嬉しくて、チラチラと上目使いで確認しちゃう。


「上手くなったな」

俺の視線に気づいた鬼道が頭を撫でながら誉めてくれる。

「本当!?
だったら今日は鬼道が上でしてくれる?」

俺はそう訊ねながらベッドへダイブする。

「ああ、分かった」

ヤッタ!!ご褒美ゲット!!
鬼道は俺の脱がしかけだった服を全部脱がし、硬くなった胸を舐め始める。
舌を尖らし、触れるか触れないかの焦らすような愛撫。
最近の鬼道は俺の胸ばかりを攻める。
胸だけでイクようにしたいなんて無茶を平気で言う。
俺が音を上げて、下も触ってくれるよう、おねだりするまで続く。


「きどぉ」

今日は先に俺が存分に鬼道のを舐めたからか、名前を呼んだだけで、下に触れてくれる。
でも鬼道はイジワルだから、簡単には中に触れてくれない。
入り口付近だけをわざと音を立てて触れる。
俺が泣いてせがむのを待ってる。
俺はそんな鬼道にいつも勝てない。
鬼道の思惑を知っていながらも、
欲しくて欲しくていつも泣きながら強請る。


「はやく、入れて?
ね、鬼道のおちんちん俺に入れて」

俺がそう言うと、鬼道は俺に覆いかぶさりやっと熱いものをそこに当てる。
鬼道の背に手を回し、その瞬間が来るのを待つ。


俺は、はっきり言って後ろからガンガン突かれるのも、俺が上になって自分の良い所ばかりを満喫するのも好きだ
でも、それ以上にこの体勢が好きだった。


体全体で感じる鬼道の重みも。
ゆっくりと入ってくる感覚も。
奥まで届いたらすぐ動かずに抱き締めてくれるのも。
動く前に俺の顔を優しく撫でるのも。
すごい近い位置に顔があって、時折ゴーグルの奥の瞳が見えるのも。
そして全て終わった後に乱れた俺の髪を撫でつけてくれるのも。
全部が全部胸が苦しくなるくらい好きだった。


ただ一つ、お互いの吐息が掛かる程近くにいるのに。
体さえ繋げているのに。
決してキスだけはしてくれないことだけが、いつも何故か少しだけ寂しかった。


俺達の秘密の関係はあれから長い間、変わることなく続けられてきた。
部活や学校では普通の仲間、でも、一歩そこから足を踏み出せば二人で性の欲求を満たしあう秘密の関係。
だからこそ、学校を卒業しても、部活を引退しても、これからもなんとなくずっと続くと思ってた。


だけどそれは危ういバランスを保った、些細な事で駄目になる関係でしかなかった。
びっくりする位、ちょっとした誤解で、俺たちの関係は終わってしまった。


 

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