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「ふぅーっ、収まるように収まって良かった。
お前と話すのが一番だと思ったんだけど、お前、すっげー馬鹿だから変な事言ったらどうしようって実は心配だったんだよな」

土門が俺の頭をぐりぐりしながら、そんな事を言う。
俺の頭をぐりぐりとしているけど、視線の先は一之瀬だ。


「失礼だな。俺は馬鹿じゃないし、半田に変な事なんか言うわけないだろ」

「ま、そういうことにしとくか。
お前にしてはいいこと言ったしな」

土門はそう言うと、今度は俺の方を向いた。


「な、大丈夫だっただろ?」

ウィンク付で言われた言葉に、俺は改めて土門が最初からこうなると予想してたって事を感じた。
やっぱり前からちゃんと俺の事、受け入れてくれてたんだなぁ…。


「土門、ありがと」

「いいって、フラれた一之瀬がウザかったからどうにかしたかっただけだから」

「ううん!それだけじゃなくって。
土門、本当にありがとう」

俺が一之瀬の腕から出て、土門の手をぎゅっと握ると土門は少し照れたように頭に手をやった。
俺が言いたかった事がちゃんと伝わったみたいだ。


「それこそ、そんな風に言わなくっていいって。
それよか、これからはもっと俺たちの事信用しろよな」

「うわっ!ちょっ、土門止めろよぉ〜」

今度はヘッドロックして俺の頭をぐしゃぐしゃって掻き混ぜてくる。


「それにもっと周りの人間の事も信じてみろって。
お前の周りに居る奴らは皆、お前が思ってるよりイイ奴らだぞ。
あんだけ処構わずイチャついてたんだ、お前らの事、気づいてる奴は気づいてるだろうし」

「え?」

土門の腕から逃れようともがいていた俺は、その言葉に止まってしまう。


「それに言ってなかったけど、お前と一之瀬の事、少なくともマックスと影野は知ってるから」

「ええっ!?」

抜け出せないと思っていた土門のヘッドロックから俺は素早い動作で抜け出すと、土門に詰め寄った。
すると、土門は俺の驚いた顔に満足そうにニッと笑ってVサインをした。


「一之瀬の手術に付き添って渋々日本に帰る時、お前すっげー泣いてただろ?
こりゃ駄目だって思ってマックスと影野には連絡しといたんだよ。
半田の事そっとしておいてくれって。
お前、オカシイと思わなかった?
友達の手術に付き添う為にわざわざアメリカまで行くって変だって。
それなのにあのマックスが全然からかってこないのはオカシイって」

「……」

そ、そういえば。
俺、一之瀬の手術に付き添いたいって何日か部活休んでアメリカ行ったのに、帰ってきてから一之瀬の話全然してない。
辛くて泣いちゃいそうだったから、話題にするの避けてたんだけど、皆まで話題に出さないのは変かも。
皆だって一之瀬の手術の結果とか経緯とかしりたいはずなのに。
何にも聞かないで、そっとしてくれたのは皆、俺たちの事知ってたから…?
それにいきなり応援をはりきりだした俺に、皆、協力的だった。
あのマックスでさえ。
もしかしてそれは俺を気遣ってだった…?


「な、冷たくなった奴なんて居ないだろ?」

「…うん、うん!」

もしかしたら、今まで悩んでた事って全部杞憂だったのかな?
俺の今まで一人で抱えてきた悩みが、どんどん軽くなっていく。
一人じゃ抱えきれないって思ってたのに、今はこんなにも軽くなってる。
こうやってなんでもないよ、大丈夫だよって誰かが支えてくれるだけで人ってこんなにも楽になれるんだ。
その誰かが大切な人達なら尚更だ。


俺がじんわりと土門や皆に感謝で胸がいっぱいになっていると、それまで黙っていた一之瀬が何かを決めたようにテーブルに残っていたミネラルウォーターを飲み干した。


「よし!じゃあこれから半田のご両親に挨拶しに行こう。
よく分かんないけど、半田のご両親は俺達の交際に反対なんだよね?
半田に悲しい思いはさせたくないから、俺、納得してもらえるように頑張るよ!」

予想外の宣言をすると、一之瀬は俺の手を掴んだ。
やけに硬い一之瀬の表情が冗談じゃない事を物語っている。


え?え!?本当にこれから俺の親に挨拶にいくの!?


 

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