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*土門視点で本編後の話です。
ちなみに土曜で学校は休みだけど部活はあります。





部活中に学校周りをランニングしていると、部活に向かう途中の半田を見かける。


――おおっ、半田が変な歩き方をしている。
マジで一之瀬の言うとおりだったのか。


昨日電話が来た時点では一之瀬の話は絶対一之瀬の願望が含まれてると思って話半分に聞いていた。
それなのに今日、半田は部活に遅刻してくるし、
現に前を歩いている半田は下半身を庇うようなぴょこぴょこした変な歩き方をしている。


――うは。マジかよ。
よし!ここは絶対からかうしか無いっしょ!


話が真実だった驚きが去ると、今度は笑いがこみ上げてくる。
あの半田が、あの子供っぽくて極普通の半田が、
男とシちゃってもうバックバージンじゃないって面白すぎるでしょ。

俺はダッシュで半田に駆け寄ると半田のケツを叩く。


「オーッス!
半田、ぢの調子はどう?」

案の定半田は俺のケツへの一撃で痛そうな呻き声を上げる。
うぷぷ、そうだよね初めてん時は特に痛いよね。

俺はニヤニヤしながら半田の前へ回る。
絶対半田が真っ赤になって睨んでくると思いながら。


あれ?

それなのに前から半田を見ると、半田は予想に反して全く赤くなっていなかった。


「ったぁ〜、急に叩くなよな。
それに俺、ぢなんてオッサン臭い病気、患ってないぞ?
勝手に人のこと恥ずかしい病持ちにすんなよな」

およよ?

おっかしいなぁ、普段の半田だったらこんな風に平然とやりすごすなんて絶対出来ないんだけどなぁ。
本当はヤってないのか?
一之瀬の妄想でしたってオチ?
でも確かに変な歩き方してたんだけどなぁ。


「なあ昨日一之瀬の家に泊まったんだって?
朝帰りなんて半田君ってば、おっとなぁ〜」

「なっ!なんで土門が知ってんだよっ!?」

俺が今度は違う方向からからかうと今度はちゃーんと半田が真っ赤になる。


あれぇ、なんだこの反応。
えっちぃ事はしたけど最後の一線は越えてないとかか?
すっごい激しい素股して脚が痛いとか?

う〜ん、半田がここまで読み辛いとは思ってなかったな。
ま、いいか。
なんにせよお泊りしてえっちぃ事はしたんだろうし。


「一之瀬から全部聞いたぜ〜。
両想いになったことから半田がえっろえろな事まで、ばっちり聞いた」

ぐっとウィンクして親指を突き出すと、半田は驚きで大きく目を見開く。
うんうん、これだよこれ!この打てば簡単に響くリアクションこそが半田だよな。


「ぜ、全部…?
お、俺の身体の事も一之瀬から聞いた…?」

「おう!今朝一之瀬、半田が全身至るところまで素晴らしいってことを力説したからな。
アイツお前の事、天使って言ってたぞ。
っとに、んな事冗談じゃなくマジで言えるなんて本当恥ずかしい奴だよな〜」

恐る恐る訊ねてくる半田に、俺は太鼓判を押してやる。
恐れてる通り一之瀬は堂々と大っぴらに惚気る恥ずかしい奴だってな。

すると半田は俺の言葉の途中から、おかしいぐらい狼狽しだす。

え、え〜っと、いくら半田君でもそのリアクションは大げさ過ぎやしませんか?
赤くなるならまだしもまさか青くなるなんて思ってもみなくて吃驚してしまう。
一之瀬も確かに変だけど、そこまで心配する程変な奴でも無いから安心していいって。


「あっ、あのさっ!…俺が天使って聞いて土門どう思った?
本当は土門には言うつもりだったんだ、俺が天使って事!
で、でも勇気が無くって…。
自分でも認めたくなかったし!
だけど昨日一之瀬が俺の事『天使』って言ってくれて、やっと自分でも受け入れる事が出来て…。
俺、天使でもいいんだって…、俺…っ!」

半田はがばって感じで俺の腕を取って、真剣な表情で言ってくる。
最後の方なんて涙ぐんでいる。


えーっと、えーっと…、これって新手の惚気ですか!?
え?え!?半田は天使ってとこ普通に肯定しちゃうの!?
そこ否定するところ!ってツッコミは無し!?
ってか半田が真剣過ぎてツッコミ出来る雰囲気じゃないんですけど…。


俺が感極まってる半田にどう対処していいか分からずただ困っていると、
後から大きな声で俺たちを呼ぶ声が閑静な住宅街に響く。

・・・一之瀬だ。

今日、何故かいつも以上にやる気に満ち溢れている一之瀬が、
早くも俺より一周多く学校周りを回って追いついてしまったらしい。


俺は一之瀬の登場に溜息を吐く。

半田との気まずい雰囲気はこれで打破できるだろうけど、絶対今以上に面倒くさい状況になることは目に見えている。

はぁ〜っ、俺、これからもこのカップルに振り回される日々が続くんだろうなぁ。




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