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俺が一之瀬を怒鳴ると、一之瀬は一瞬びっくりした顔をしてから、ぎゅぅ〜って今度は力強く俺を抱きしめてきた。

だーかーらー、それを止めろって言ってんだろ!?


「あー…っ、余計半田帰せなくなった…」

俺の肩に顔を埋めたまま呟くと、一之瀬がなんか困ったって顔を上げる。
困ってんのは俺だっつーの!


「半田、とりあえずシャワーは浴びてった方がいいよ?
そんな顔で、俺とセックスした痕残したまんまで家族と会える?
昨日半田が寝ちゃったあとで、一応零れてた分はティッシュで拭いといたけど」

「っ!!」

一之瀬の直接的な言葉に顔にかっと熱が集まる。
『零れてた分』ってなんだよ〜!?


「俺はその方がいいけどね。
半田のあちこちに俺の痕跡が残ったままって凄く興奮するし。
帰り道に歩いた衝撃で、俺のが脚を伝って歩けなくなる半田なんて考えただけでゾクゾクする」

「シャワー浴びてくる!!」

俺は一之瀬の言葉を遮るように大声で言う。
そしてニヤニヤしながら俺を覗き込んでいる一之瀬の腕を振り払う。

言ってることとかよく分かんないけど、それでもこのままシャワー浴びないで家族に会うなんて絶対キョドるに決まってる。
…てか、一之瀬の何が脚を伝うんだろう?服脱げるって意味か?
俺は憤りながらも、一之瀬の言葉に頭の片隅で疑問を抱いていた。

・・・次の瞬間には自己解決したけど。


「一人で浴びるから付いてくんなよ!!」

一之瀬を振り切った俺は、そう怒鳴って立ち上がる。
その瞬間、走る鈍痛。


「ッ!つぅ〜っ」

「半田大丈夫!?」

立った瞬間に動きを止めて顔を顰めた俺に一之瀬が心配そうに聞いてくる。

・・・なんだこれ、下半身がすっげぇ痛い。


腰も股関節もズキズキする。
部活で鍛えてるはずなのになんでだよ?
それに、あ、アソコが…変だ!
なんでか周辺がかぴかぴとしてるし、ところどころ毛がくっついてて引き攣れる。
それになんと言ってもアソコがまだビリビリ痛い。


これってさ、たぶん一之瀬とシたから…だろ?

あんな格好初めてしたし。
かぴかぴしてるのは一之瀬の、その…精液だろうし。
痛いのは…、もうっ!言わなくても分かるだろっ!?

って!そもそも初めてで…なっ、中出し、っとか、普通するか!?
しかも中で出されたことに気付かないって、俺ヤバくない!?
テンパリすぎだろ!!どんだけ混乱してたんだって話だろ!!

俺は一之瀬の方へ振り返り、ぎっと睨みつける。


「大丈夫?じゃねーよ!!
馬鹿!馬鹿!馬鹿ぁ!!一之瀬の馬ー鹿ぁ!!」

「ごめん!出来るだけ痛くないようにシたつもりなんだけど…。ごめんね?」

ぶぅぁーっか!って魂込めて馬鹿って言ってんのに一之瀬はどことなく嬉しそうで。
ぽかぽか殴ってもそれは変わらなくて。
なんか一人で怒ってんの馬鹿らしくなってきた…。

ぷいって顔を背けると一之瀬は俺が許したと思ったのか、ベッドの上に座って俺の手を握り、立ってる俺を見上げてくる。


「ねえ、中で出した事怒ってる?」

なっ!?
俺はぎょっとして一之瀬の方に顔を戻す。
もう、本当になんだってコイツはこういう事を平然と訊けるんだろ。
何気にワンコバージョンになってる一之瀬から、俺は素早く顔を逸らす。


「…別に、お前だけ全然痛くなくって恥ずかしそうでも無いのがムカついただけだし。
それに俺、妊娠しないから。…いいよ別に」

ぼそぼそと俺が怒ってない事を伝えると、返ってきたのは何故か残念そうな声。


「はぁ〜っ、そうなんだよね〜」

一之瀬は俺の手を握ったまま溜息を吐く。


「どんだけ中に注いでも半田は妊娠しないのかぁ。
半田の中で俺と半田の愛が結びついて形になるって凄くロマンティックなのになぁ」

は?何言い出すんだコイツ?


「決めた!俺、出来るだけ早くプロになる!
それで高額年俸貰って、半田に世界最高峰の不妊治療を受けさせてあげるから!」

え?俺、妊娠したいなんて一言も言ってないぞ。つーか寧ろ妊娠なんて悪夢だろ。


「半田!俺、今まで以上にサッカー頑張るね。
プロになって半田と結婚してアメリカをサッカー大国にする!!」

えー…と?燃えるのはいいけど、なんだその未来予想図。
どうでもいいけどプロポーズに聞こえるぞ。


「それで半田と半田に似た可愛い娘に囲まれて幸せに過ごす!!
って、あれ…半田?」

それまで俺の手を握ってはいるものの、俺を半分無視して燃えていた一之瀬が、何かに気付いたように俺の顔を下から覗き込む。


「顔、ニヤけてるよ?」

「お前だってそうだろ!!」

俺はばしりと一之瀬の頭を叩く。


――だってさ、笑っちゃうよ。
あんな馬鹿なこと言って、一之瀬ってば俺のこと好き過ぎるだろ。
俺、溺愛されちゃってない?


「あー、もう半田可愛いー!
ねえシャワーも朝ごはんも無しでもいい?
俺、我慢出来ないよ〜!」

「わー、馬鹿!抱きつくなって〜。
マジで痛いんだから、なんかしたら殺す!」

俺の腰に抱きつこうとする一之瀬の顔を慌てて押さえる。
眉の下がった情けない一之瀬の顔にでこぴんを一回。


――でもさ、すぐこんな風に言っちゃたり殴ったりもしちゃうけど、
俺も本当は一之瀬に負けないぐらい好き過ぎてるって知ってんのかな?


「なあ、お前のせいで痛いんだからシャワーまで連れてけよな。
…一緒にシャワー浴びるんだろ?」

「勿論!」

俺がそう仏頂面で言うと、一之瀬が嬉しそうに立ち上がり俺を抱えあげる。
俺はニヤけそうになる顔をバレないように一之瀬の肩に埋める。


――もうさ、相思相愛ってヤツ?
う〜、幸せすぎて困るよぉ〜!!

 
 END

 

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