17



「んっ…あれ、ここ…」

目を覚ますと、見慣れない光景に一瞬頭が混乱する。
でもすぐ辺りを見渡して、俺の隣で寝てる一之瀬を見つけて全部思い出した。


――そうだ、俺…。一之瀬と…シちゃったんだ。


あの後、疲れた身体に、一之瀬の重みと暖かさが心地よくて。
いっぱい泣いた目はなんだか腫れぼったくて、目を瞑りながら一之瀬の背中を撫でていたら、
なんか色んなことが解決した安心感でそのまま寝ちゃったんだ。


ちらりと布団の中を覗くと、俺はなんというか予想通り裸で。
上半身だけならまだしも、パンツさえ穿いてない正真正銘の真っ裸だ。

しかもさ、隣で寝てる一之瀬も裸とかって…。


う〜!なにコレ!?照れる!!

だってさ、普通裸で寝るとかしないだろ!?
夏だってちゃんと服着て寝るだろ!?
少なくともパンツは穿くだろ!?俺は穿くぞ!つーか、ちゃんと服だって着るぞ!!
それがこんな風に初めて裸で寝ちゃうとか、
夏用のタオルケットだけだと昨日は夕立があったから寒いはずなのに、一之瀬とくっついて寝たから平気だったとか、
それをこうやって起きてから気付くとか!

しかも、しかもさ?
・・・照れるけど、嫌ってわけじゃなくて。


俺は心の中で、「寒いから仕方ない!うん、仕方なくだ!!」って言い訳しながら、
もう一度一之瀬にぴたってくっついてみる。

・・・へへへ。


「んん〜」

「っ!?」

俺がくっついて一人で悦に慕っていると、一之瀬が急に寝返りを打ってくるから悪戯がバレたみたいでビビってしまう。
でも、一之瀬は起きたわけではなくて、隣の俺がもぞもぞしてるのが寝辛かっただけみたいだ。
もぞもぞしている俺をぎゅっと胸に収めると、満足そうな顔でまた寝息を立て始める。
ほぉーっと安堵の息を吐き出して、俺はもう一度一之瀬に向き合う。


さっきまでと違って、今俺は一之瀬の胸の中。


「・・・へへっ」

思わず今回は笑みが口から零れてしまう。
一之瀬の胸は、そんなに俺との身長差が無いはずなのに、それでも中に納まってしまうと、そこが定位置みたいにしっくりくる。
暖かくって、ドキドキして、それなのにしっくりくる。

俺が見上げる形の位置にある一之瀬の顔。
俺はその顔にそっと指を這わす。
ふにふにした口唇。
昨日、いっぱいキスしてくれた口唇だ。


「〜っ!」

なんだか胸がきゅぅ〜んってする。
一之瀬が隣で寝てなかったら、きっとジタバタしてた。
でも今は一之瀬が起きちゃうからそんなこと出来ない。
でも何かしないと衝動が治まらなくて、俺はきゅって、一之瀬の背中に手を廻す。


「…一哉ぁ」

「なあに?」

どあああっ!?
一之瀬が寝てて聞いていないと思って調子にのって呟いた一之瀬の下の名前に、思わぬ返事が返ってきて俺は思わず飛びずさる。


「おっ、おまっ、お前!いつの間に起きてたんだよっ!?」

俺はタオルケットを胸に抱えて一之瀬に怒鳴る。
俺がタオルケットを独占しちゃったから、一之瀬は裸モロ出しだけどそんなのは関係ない。


「半田が笑ったあたり。
なんか半田が一人で可愛いことしてたから邪魔しちゃ悪いかなって思って」

それって結構前じゃんか。
もうヤダ。恥ずかしすぎる。


「馬鹿一之瀬!もう知らないっ。俺、もう帰るっ!!」

俺はベッドに散らばってる服を集めだす。
一之瀬にほとんど全部見られてたことも、二人して明るい部屋で裸でいることも恥ずかしくって堪らない。
これで平気な顔で部屋に居座れる奴が居たら逆に見てみたいぐらいだ。

でも一之瀬は俺が着替えようと背中を向けると、後から俺を抱きしめてくる。


「ねえ、まだ6時だよ。もう帰るなんて言わないで。
これから二人で一緒にシャワー浴びて、一緒に朝ごはん食べよ?」

「ッン!」

一之瀬は後から抱きしめて囁いた後、ね?って俺の首にちゅって口唇を寄せる。
昨日で一之瀬の感覚を刻まれた身体がぞくんて跳ねる。


もーヤダ!なんなのコイツ!?
なんでこんなに慣れた感じなんだ!?
俺は初めての事ばっかで色々といっぱいいっぱいなのに!!


「もぉ、やだぁっ!お前、簡単にそういうことすんなよぉ。
勝手にぴくんってなって辛いんだからな!!」


 

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