13*



「ぎゅっ?」

一之瀬が少し照れた顔で聞き返す。
そんな風に聞き返されると、こっちまで恥ずかしくなってくる。


「見られんの…は、恥ずかしいから!
だから…、さっきみたいにぎゅってして。…駄目か?」

「ううん!駄目じゃないよ。
…これでいい?」

一之瀬は何故か自分のTシャツを脱いでから俺を抱きしめてくる。


一之瀬の上半身裸なんて部活で毎日のように見てるはずなのに、俺は一之瀬が脱いだ瞬間、思わず顔を俯かせてしまった。
皆がいる汗臭い部室で見る裸と違って、
間接照明の明かりの下で見る一之瀬の身体はしなやかな筋肉がなだらかな陰影を纏っていて、俺の胸を落ち着かなくさせる。


それがすぐ、俺の裸の身体を包むように覆ってきて。


俺の目の前にある、うっすらと筋肉の付いた肩とか、
ちょっと汗ばんでしっとりしてる肌とか、
俺よりも熱くなってる一之瀬の身体とか、
くっついたから分かる、微かに感じる一之瀬の匂いとか。


ヤバい、全部がヤバいくらい俺を堪らない気分にさせる。
自分から頼んだくせに、この体勢も恥ずかしくって堪らない。
なんだかくらくらする。


それでも、さっきみたいに見られているより一之瀬の温かみを感じられて、こっちの方が断然いい。


一之瀬が俺を抱きしめたまま、ゆっくりとベッドに押し倒してきても、
ぎゅっとしたままだから一之瀬の重みを体中で感じた時も、
恥ずかしいを嬉しいが凌駕しちゃうって俺、どうしちゃったんだろう。
さっきから頭に靄が掛かったみたいになってきてる。


「半田」

一之瀬が嬉しそうに俺を呼ぶ。

「目がとろ〜んってしてる。
感じてるんだよね?・・・こっちも勃ってる」

羞恥心を煽るような一之瀬の言葉にはっとして、そこを押さえ様としたのに少しだけ一之瀬の方が早かった。


「実は俺も」

そう言うと一之瀬の顔がずりって下から俺に近づいてくる。
それと同時に俺の熱を持った場所をガチガチの固いものが擦りあげていく。

「ッ、ふぁっ」

初めて触れられた一番の性感帯に、勝手に声が漏れる。

・・・今の固いのって、もしかして…。


「半田が感じてんの見て興奮しちゃった。
早く半田と一つになりたい」

一之瀬が眉の下がった紅潮した顔で我慢できないって感じに言ってくる。
もうっ!は、恥ずかしいからそう言うこと言うな。

って、確かに言われた瞬間はそう思ったのに、すぐまた欲望同士を擦りあわされてそんな思いは吹き飛んでしまう。
気持ちいいとか、熱いとか、そういう色々な気持ちが俺の理性を奪っていく。
しかも一之瀬は腰を動かしながら、俺の首筋に舌を這わしだすから、一気に俺の頭は熱に浮かされてしまう。


「ひぃあっ!…ふぁんっ、な、なに…し、てん…ぁあんっ!」

ぞわぞわってして背筋を甘い痺れが走る。
そしてその甘い痺れは全身を駆け巡ってから、今擦りあってる部分にどんどん溜まっていく。


「半田の身体、甘い匂いがする。
俺んちのボディーソープを使ってるはずなのに、すっごく興奮する」

さっき舐めていた辺りよりも耳に近い辺りに顔を寄せて一之瀬が囁く。
その声がいつもより興奮の為か低く掠れていて、ぞくっとする。
匂いを嗅がれていると思うと恥ずかしくって堪らないのに、
身体はもう一之瀬が何かをする度に、ぴくんってして辛い。
目には涙が悲しくないのに浮かんでくる。


「…っんあ、…もぉっやめっ、…へんになっちゃう、からぁっ」

一之瀬の舌はそのまま俺の身体を這っていく。
一之瀬の頭がどんどん俺の顔から遠ざかっていく。
そして俺の声に乳首に舌を伸ばした状態で止まる。


「半田、嫌?止めた方がいい?」

ん?って顔で俺を窺いながらも舌は乳首を触れるか触れないかの微妙な位置にある。
腰もさっきみたいにごりごりって感じじゃなくって、緩やかに押し付けるって感じの動きに変わる。
意図的かわかんないけど、時折微かに震える舌が卑猥だ。

もう、やだ。
一之瀬って結構イジワルだ。
顔からしゅうって湯気が出そう。


「・・・やめちゃ、だめぇ…っ」

俺は真っ赤だろう顔を隠して欲に塗れた本音を吐いた。
こんなの恥ずかしすぎる。

でも期待するような刺激は中々来なくて、俺はそろそろと顔を隠した腕を退かす。
するとすぐ一之瀬が俺の頬を撫でてくる。

見てるこっちまで切なくなるような、静かで、揺ぎ無い愛おしさの溢れた顔で一之瀬が俺に言う。



「じゃあそろそろ下も脱がしていい?
・・・続き、シよう?」

 

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