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「本当に後ろだけでイケるんだね」
影野が汚したシーツを拭きながら、感心したようにマックスが呟く。

それでなくても、シーツを汚してしまったことも、
下手に動くと後ろから零してしまいそうな自分ではなく、マックスがそれを拭いていることも恥ずかしいのに、
そんなことを改めて言われたら羞恥で顔が真っ赤になる。

「…ごめん」

「何で謝るの?嬉しかったのに」

居た堪れない様子でもじもじと立ち尽くして謝る影野に、
何でも無いことのように言うとマックスが立ち上がる。

「じゃ、次、仁」

飛んだものをティッシュで拭き取り、シーツを剥ぎ取るとくるくる丸めて影野を呼ぶ。
自分の後処理をここで、今、するつもりだと察知した影野は慌てて手を振る。

「い、いいよ、そんなの!
自分でやるからお風呂貸して」

「じゃ、一緒にシャワー浴びよっか」

影野は『自分で処理する』と言ったのに、『お風呂』の部分以外マックスは無視する。
あくまで自分が後処理するつもりのマックスに思わず溜息が出る。
こうなったマックスを止める術を影野は持ち合わせていなかった。
これからしなきゃいけない事に少しでも落ち着きたくて、床に置いたコーヒーをこくりと飲む。
冷えたそれが乾いた咽喉に染み渡る。

「ふぅーっ」
安堵の溜息をついた瞬間、影野の手からマグが奪い取られる。

「これ、もう飲まない方がいいかも」

「なんで?」

少しバツが悪そうに言うマックスに理由を訊くと、珍しくマックスが口篭る。

「いいから!
もうっ、早くシャワー行こっ」

急に手を引かれると、後ろから零れそうになって焦る。
意識がそちらに逸れるとコーヒーのことなんて忘れてしまう。

「できたら自分でやりたいんだけど…」

「だーめ!」

おずおずと言った提案が無碍に却下されたらその心配で心がいっぱいになる。
だからコーヒーのことは結局このまま秘密にされてしまう。
だってマックスは気付いてしまったから。


・・・影野のM体質とそれに堪らなくそそられる自分自身に。
そしてコーヒーの効果かどうかは分からないが、今日の影野は確かに今までに無いぐらい乱れていたことに。

変な小細工は金輪際止めると誓ったのはすぐさま撤回される。
だって、普段の影野も、乱れた影野もどっちも可愛いなら、どっちも楽しみたい。
二者択一なんて馬鹿らしくってやってられない。


この日以来、影野はマックス邸に来る度にこのコーヒーをご馳走になることになる。
そしてその度に声が嗄れるまで、喘がされる運命にあった。



 END

 

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