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「あああーーッ!痛いッ!痛いいいーーッ!!
やだッ、退いてッ!!退けってばああッ!!」

下肢どころかお腹が裂かれたような痛みに天馬は頭を振りながら泣き叫ぶ。
独特の癖を持つ髪は、最早鳥の巣のようにぐちゃぐちゃになっている。
男の体躯に似たやけに短く太いペニスはギチギチと天馬の身体を裂くように這入ってきた。
天馬の年相応でしかない体型には到底無理な挿入だった。
掻き分けるように胎内に存在する熱いモノは太すぎて息苦しささえ感じてしまう。
叫び過ぎたせいで天馬の声はもう掠れている。
顔はもう涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。

それなのに男はぐりぐりと窮屈な穴を自分に良いように馴染ませ拡がらせる動きを始める。


「ツッ!アアーーッ!!
もおッ無理ッ!!ハァッ、ハァッ!動ッ…かない、で、よぉーーーッ」

ぐり、ぐりっと男が腰を廻す度に、胎内の傷を熱いモノが抉っていく。
ただ男の太った肉体は、腰を廻すと天馬の快感を知ったばかりのペニスさえも挟んでぐりぐりと快感を与えていく。
灼けるような強烈な痛みとその奥にほんのりとしたむず痒さを天馬に齎す。
その相反する刺激は天馬の体力を急激に削った。
どんどんと天馬の叫ぶ声が小さく弱くなっていく。


「ハアーー……ッ、ハアーーー……ッ。
痛ぃ…よぉー…、ウゥッ!…もお…、ヤだ…よぉー……、止めて、よぉーー……」

「ハアハアッ!天馬きゅん、痛いでちゅかぁッ?
可哀想だねぇッ!ハアハアッ!天馬きゅん、強姦されちゃったねぇッ」

充分自分に馴染んだと判断したのか、男が舌舐めずりをしながら天馬に顔を寄せる。
動きが止んだ事で少しだけ和らいだ痛みに天馬も薄目を開ける。

そして見てしまった。

自分が泣き、叫び、苦しむ姿を見て悦んでいる男の顔を。
心が絶望で凍りつく。


――こ、この人…、俺が痛がってるのが嬉しいんだ…。
俺がいくら止めてって頼んだって止めてくれる訳がない…。

「ムハアッ、天馬きゅんのぐちゃぐちゃの顔おおッ!
ムハアッ!ムハアッ!最高だよおおッ、天馬きゅううんんん!!」

男がベロベロと天馬の顔に塗れた涙とも鼻水とも涎ともつかない色々な体液を舐め取っていく。

――この「ひと」…?違う!こんなの「ひと」なんかじゃない!!

ハアハアと鼻息も荒く、天馬の顔を舐める姿はもう獣にしか見えない。


「ムハアアアアッ!天馬きゅぅぅぅん、さああいいいこおおおおッ!!
ホラッ!ホラッ!!奥まで僕ちんのデカマラで突いてあげりゅうううッ!!」

「ウウッ」

いきなり律動を開始した男に、天馬は思わず声を漏らしてしまう。
でもすぐ天馬を唇を噛み締める。
男が喜ぶ事なんて少しもしたくない。
男が自分の痛がる姿を見て悦ぶなら、自分はもう少しの反応もしてやるものか!!
決意も新たに改めて男が何をしようと無視し続けようと天馬は心に決めた。

でも、それは大変困難な作業だった。


「ムフウウウッ、ムフッ、ムフウウウ〜〜〜ッ!
あああ〜〜、いいよぉ〜〜、天馬きゅんの処女マンさいこおおお〜〜ッ!」

「……ッ…ツァッ!……クッ!…ッ!」

男が突き上げる度に、傷跡は熱した鉄棒を押し当てられたみたいな痛みが走る。
顔が歪む。
それなのにぶにぶにとした男の腹の肉に埋もれたペニスが律動の度に柔らかな肉に擦れて快感を生んでいく。
何か変だ、と天馬が思った時には既に遅かった。
突き上げと同時に感じていたペニスの快感に、身体が勝手に勘違いを起こし始めていた。
内側の敏感な柔肉を擦られる度に痺れるような激痛と同時にむず痒いような気持ちよさを確かに感じてしまう。
痛みとそれと同等の快感が天馬を襲う。
どちらも激しすぎて息さえ満足に出来ない。


「……ハァッ!ハァッ!……クッ…ふッう…んッ……ッッ!!」

「むはあ〜〜ッ、むはあ〜〜〜ッ!
天馬きゅうう〜〜〜んッ、天馬ッきゅううう〜〜〜〜んんッ!」

腰の動きと共に迫り来る男の汚らわしい顔にも構っていられない。
ただ息苦しくて、でもそれを男に見せたくなくて色々な感覚を飲み込んで堪えた。
呼吸を荒げ涙を浮かべながらも、声だけは出してなるものかと、それだけを思って耐えた。

だって知らなかったから。
獣には少年が泣き叫ぶ姿も、
堪えながらも時折漏れる声さえも欲情に変わるという事を。
その耐える行為さえ無駄だという事を……。


「むはあッ!むはあッ!!
天馬きゅんッ!気持ちイイッ!?気持ちイイんでしょッ!?
声、堪えたって無駄だよッ!!
僕ちんのお腹、天馬きゅんのでヌルヌルだもんねえええッ!!」

「ッッ!!」

懸命に自分を翻弄する感覚と戦っていると、頭上から男の勝ち誇った声がする。
その声の響きと「無駄」という言葉に天馬の凍りついた心は簡単に砕け散ってしまった。
最後の支えが折れてしまった。
堪えていた沢山のものが奔流となって溢れてくる。

でも実際に溢れたのは一筋の涙だけだった。


「あ…、はっ!あははははッ!!
きたああああ!天馬きゅん完堕ちぃいいいい!!
あーーーーッ、その顔さいこおおおーーーッ!!
イクよッ!イクッ!イクッ!!その顔もーっと穢してやるぅううう!!」

その瞬間、ずるっと自分の中を圧迫していたモノが消え去り、男が天馬の顔を跨ぐ様に立った。
直後にビュクンッ、ビュクンッと顔に熱いものが降り注ぐ。
天馬の涙に、男から陵辱された証が混じって顔を汚していく。


この穢れはどんなに洗っても落ちない。


天馬は虚ろな心で、穢れた自分を悟った。
男の体液に自分の涙が混じるのが嫌で、もう泣く事も出来ない……。


「なんでこうなっちゃったんだろう……」

ポツリと呟いた、その声は掠れて男には届かなかった。


 END

 

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