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そう言う剣城は凄まじい程綺麗でゾクゾクッとしてしまう。
なんて言ったかさえ理解出来ていないのに、剣城の顔を見ただけで身体が感応してしまう。
イキたいっていう原始的な本能が剣城を求める心と結びつく。

欲しい…、欲しい、よぉ…!
剣城が、欲しい……っ!!
どうすれば伝わる?
この剣城が好きで欲しくて堪らないって気持ちを。
今、好きと言葉には出来ないのに。
どうしたら伝わるんだ、この気持ちは。
このぐらい分かれ…、剣城……ッ!!

俺は気持ちを伝える方法が分からなくって泣きながら首を振った。
もうちゃんと考える事さえ出来ない。


「強情な先輩、早く言わないと全部入っちゃいますよ?」

ぶるぶるって震えてる物がお尻の穴にグッて当たってる。
望んでもいない無機質なソレを穴の淵がヒクヒクと悦んで飲み込もうとしてる。

ちがう、ちがうぅぅ!
これじゃ、ない。
こんなのおれ、いらないぃぃ!

俺は一生懸命首を横に振ったのに、剣城は気づいてくれない。
俺を無視して更にソレを強く押し込んでくる。
早く止めないとソレが俺の中に入ってしまう。
俺は最後の気力を振り絞って口を開いた。


「…ヤァ……ッ」

「ハッ、この期に及んでまた『嫌』ですか。
そんな言葉、耳にするだけでウンザリだ」

ッ!
剣城の手が止まってくれない。
どうして剣城、剣城、分かってよ、俺の気持ち。
欲望で濁った頭は、今の俺の気持ちをちゃんとした言葉にしてくれない。
それでも俺は懸命に言葉を紡いだ。
ちゃんと文章になってなくても構わない。
剣城に伝わるまで俺はなんでもいいから言い続けないと。


「それ……、違…っ、ヤ……ッ、だ、め…ッ、つる、ぎ…っ、じゃ…、な……っ!」

「…先輩?」

やっと剣城の手が止まってくれた事に安堵した俺は動く方の手でぎゅっと剣城を掴んだ。


「そこ…は、つるぎ、の…。
つるぎ、だけ…ッ!
つるぎ…、つる、ぎ…、つるぎ……ッ!」

「先輩……」

俺は最早他に言葉が思い浮かばなくって、ただ剣城の名前を呼んだ。
何回も、何回も。
気づいたらぶるぶると震える物は俺の身体から遠ざかっていた。
代わりに温かいものがピトッて身体に当たってる。
求めていた体温を肌で感じ、安堵で全身の力が抜ける。
…良かった、伝わったんだ俺の気持ち。

――欲しいのは、剣城だけ。
他は何もいらない。



「ここは俺だけの場所なんですか?」

「…ハァッ…、ッ…?」

向かい合って俺を抱きかかえた剣城が俺の腰ごとゆさゆさって揺すってくる。
もう大丈夫って気が抜けてしまった俺はされるがままだ。
焦らすような動きに、俺はもう苦しくってせつなくって、うんうんって何回も頷いた。


「俺が欲しいですか?」

剣城が俺の髪を撫でながら訊いてくる。
もう限界だった。
俺は返事の代わりに長い、長い息を吐き出す。
そして最後の力でほんの少しだけ自分の身体を持ち上げた。
そんな俺を剣城は苦笑いだけで許してくれる。


「…結局、言葉では言ってくれないんですね」

剣城が俺の腰と自分の屹立に手を添える。
俺が挿れやすいように手伝ってくれてる。
俺はヒクヒクと蠢く入り口に剣城を宛がうと、心の赴くままに体重を掛けた。
…やっと剣城が俺の中に入ってくる!


「ア…ッ、ア、ハァ……ッ!」

あ、あ…、グラグラと熱いお腹の中をもっと熱いものがズズズッて抉じ開けてくる。
俺のお腹の中に溜まっていたドロドロの欲がその熱い塊に押されるみたいに俺の中でいっぱいに広がっていく。
あ…、ああ…!
怖い…、このまま奥までこの塊が来たら俺はどうなっちゃうんだ?
ズズッ、ズズッ、って少しずつソレが俺の中に占める面積を増す度にじわじわと白い欲が脳まで侵してく。
ソレと一緒にナニかが俺の中で膨れていく。
…怖い!
自分で飲み込もうとしているのに、どんどんと飲み込まれているのは自分のような気になってくる。
その未知の感覚が怖くて、俺は途中で動きを止めた。
その一瞬に剣城が両手で俺の腰を掴むと、思いっきり下から俺の事を突き上げる。


「ひぃ、アッ!」

パチュンッて肌がぶつかる音がして、ビクンッて俺の中で何かが弾けた。


「アァッ、アーーーーーーッ!」

あ、あ…!
ぶるぶるぶるって繋がったところから頭に向かって痺れのような痙攣が広がっていく。
どうしよう、俺の身体おかしくなっちゃった…!
さっきからずっと身体がビクゥーーーッてなったままだ。
ぎゅぅぅって身体が中にあるものを締め付けた状態のまま弛緩してくれない。
何、コレ…?
こんな凄いの、俺、知らないよ…ッ!


「…クッ!…先輩、少し緩め、てッ!
キツ…ッ」

剣城!剣城!剣城!
剣城の声に俺は漸くすぐ其処に剣城が居る事を思い出した。
俺は剣城に縋っていた手に力を込める。
片手しか自由にならないのがもどかしい。
しっかりと剣城を掴んでいたいのに、やけにぬるぬるとしてすぐ滑ってしまう。

助けて、剣城…ッ!

その言葉は声にならず、はくはくとただ唇が動いただけだった。


 

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