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床に逃げた俺を剣城が追ってくる。
悔しいけど手と足が繋がった状態じゃ這う事さえ上手に出来ない。
拒絶さえ簡単じゃない。
剣城に頼らないと移動も出来ないこの状況がすごく頭にくる。


「大丈夫ですよ、もう余計な事を何も考えられないくらいの快楽を今から先輩にあげますから」

俺がいくら下から睨んでも剣城は揺るがない。
無造作に自分のカバンからいつも使ってるローションを取り出した。
キャップを外すと、床に這いつくばってる俺に随分と冷たい目で立ったままローションを垂らしてきた。
高い位置から垂れるローションはトロリと俺の胸元を濡らす。

「や…めろ…ッ!」

避けるように身を捩ると、ローションは俺だけじゃなく床にも落ちて粘ついた水溜りを作っていく。
身を捩っても剣城はお構いなしに胸だろうが背中だろうがローションを俺の全身に掛けてくる。
俺の本音が知りたいなんて言っておきながら、俺の意思なんて全然無視じゃないか。
手錠のせいで脱ぎかけの服がローションで背中や腕に纏わりついて気持ち悪い。
悔しい。
どうして剣城には俺の気持ちが伝わらないんだろう。
言葉にしたくないのに、言葉にしないと俺の気持ちはこのまま伝わらないままなのか。

後ろでローションのボトルを投げ捨てる乾いた音がした。
もう振り返る気分にもなれない。


「先輩」

剣城の声がする。
大好きな剣城の声なのに、今はどうしてか胸がざわつく。
俺が俯いたままでいると、剣城は服が汚れるのも構わずに濡れた俺の身体を抱き寄せた。


「先輩がいつも俺の事を嫌って言うから、今日は玩具を用意したんですよ。
気に入ってもらえるといいんですけど」

玩具…?
俺が剣城の言葉を反芻する暇も無い内にブブブッという羽音と共に俺の内側に衝撃が走った。


「ひゃあああんんッ!」

な、なんだ今の…。
一瞬凄い大量の快感シグナルが胸から身体全体を突き抜けていった。

「は、凄い反応。
…そんなにイイですか?このローター」

剣城が跳ねた俺の身体を後ろから抱き押さながら、少しびっくりした声で囁く。
でも俺は何の反応も返せない。
さっきの衝撃におれ自身も驚いていた。


「ほら質問に答えて下さいよ。
…ローター、気に入りました?」

「やっ!やっ!やああああ……ンンッ!」

また剣城が俺の赤く熟れた胸の先に羽音を近づける。
ソレが微かに触れた瞬間、身体が跳ねる。
人間では絶対真似出来ない細かな振動が俺の乳首を揺すってる。
ジュジュジュッって胸に塗れたローションが細かい飛沫を辺りに散らしてる。

やだ…、こんなの……おかしくなる…。

ソレが乳首に当たっている間、俺はただ反射的に声を上げる事しか出来ない。
俺が答えられそうにないと気づいたのか、剣城はすぐ胸の先に当たっているものを遠ざけてくれた。
その途端ガクリと俺の身体から力が抜ける。
多分胸の先に当たっていたのは少しの時間だったはず。
それなのにその過ぎた刺激は俺から大量の気力と体力を奪った。

「ハァーー……ッ、ハァーー……ッ」

何も考えられず、俺はすぐそこにあるものに凭れ掛かった。
手と足が繋がれているから何かに凭れないと楽な姿勢になれない。
それが何かなんて考えられなかった。


「そんなに善かったですか?」

剣城に上から見下ろされて初めて、それが剣城の身体だと気づいたぐらいだ。
返事なんて出来る余裕が無い。
俺は何も言えず、力なく首を小さく横に振った。
善いか悪いかなんて無い。
ただ凄かった。
それは素直な俺の感想だったのに、剣城は俺が首を振った途端、微かに眉間に皺を寄せた。


「そうですか、まだ足りませんか」

冷たい声でそう囁くと、今度は無慈悲にローターで乳首を押しつぶした。

「ひううううンンッ!!」

息が整う暇も無く、また俺の身体を快感が支配する。
身体のあちこちが勝手にビクンビクンと脈打っている。

「やらっ!やらあ!これやだあああ!!」

俺は必死になって身体を揺すって、その恐ろしい快感から逃げようとした。
でも剣城の腕はがっちりと俺を抱きしめて離さない。
しかもどんなにお願いしても小さいローターを胸から離してくれない。
胸から発した快感シグナルは脳を通って下腹部に溜まっていく。

「ああぁぁーー…ッ、ああーー…ッ、ぁ…ッ」

身体を揺すって声を上げてたせいか、なんだかボーッとしてきた。
あー…、お腹の中がじんじんして苦しぃ…。

お腹の中からじんじんした熱に押されてじっとしていられない衝動がせり上がってくる。
過ぎた快感から逃げようとする動きは、自分でも気づかない内に淫らな腰の前後運動に変わっていた。

でもその自分を突き動かす衝動は思ってもみない物に邪魔されてしまった。


「ん、アアッ!」

思ってもいない急な痛みに、俺の身体はまたもや跳ねる。

「な、…な、に……?」

急に現実に引き戻された俺はうっすらと目を開き、痛みの走ったところに目をやった。


「大丈夫ですよ、リングが戒めただけです」

剣城の手が軽くソコをなぞっただけで、またヒクリと痛みが走り抜けていく。

「まだ愛を誓っていないのに勝手にイこうとした悪い先輩をね」


剣城が撫でたソコ。
俺の完全に空を向き滾った性器には何連ものリングがギチギチに食い込んでいた。
硬くなった睾丸が革のベルトのせいで窮屈そうに脈打っている。

――剣城が言う『愛のリング』が痛々しいまでに俺の欲望を妨げていた。


 

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