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「コックリングの付け心地はどうですか?霧野さん」

剣城が連なったリングの上から俺の性器を撫でる。
それでなくても性器に常時触れているリングに意識は自然とそちらに向いてしまう。


「今すぐ外せッ!」

「ええ、すぐ外しますよ。霧野先輩がちゃんと質問に答えてくれたら」

俺に変なリングを着けた途端、剣城はなんだか余裕を取り戻したみたいだった。
俺が怒鳴っても平然としている。
それどころか薄っすらと笑みを浮かべている気がする。
なんなんだよ、こんなリングなんか!
こんなリングなんか……。


「……ッ?」

「気に入りました?
なんならずっとしてくれてても構いませんよ」

なんか…、どうしたんだろう俺。
これ着けてると少し緩めのリングが少し動いただけで陰茎に当たって、どうしてもソコが気になってしまう。
なんだかムズムズしてしまう。
剣城と喧嘩中で、しかも俺は半裸だというのに。
こんな時に興奮したら、剣城にすぐバレてしまうじゃないか。


「フッ、霧野先輩って本当に分かり易い身体してますね」

「ッ!」

剣城の手が俺の頬に添えられる。
さらっとした俺よりも体温の低い手。
この手に触れられると、俺はいつも簡単に訳が分からないぐらい乱れてしまう。
でも、今日。こんな事までされて、簡単に剣城の良いようになんてされたくない。
絶対、絶対、この手に感じたくなんか無い!
変に剣城の手を意識してしまったせいか、剣城の手が触れてる辺りがぞわぞわする。


「いつもみたいに沢山感じていいんですよ」

「〜〜〜〜ッ」

剣城の手が頬から首筋をなぞって、俺の後頭部に移動する。
思わず漏れそうになる吐息を俺は唇を噛んで、ぐっと堪える。
後頭部に廻った剣城の手が俺の結んであった髪を解いてく。
もうっ、解くんなら手錠とか変なリングとか他にあるだろうが。
って、言いたいところだけど、口を開いたら絶対変な声の方が先に出そうで何も言えない。
悔しいけど髪を撫でる手が気持ちいい。
髪と一緒に心まで解きほぐされてるみたいな気分になる。
髪を撫でる剣城の眼も、二人っきりの時の見慣れた眼になってて気を抜くとさっきまでの喧嘩を忘れそうになる。
なんだ、コイツ。
一人だけ急に普通になって。
そもそも喧嘩をふっかけてきたのは剣城だっていうのに、訳が分からない。


「……ッ!」

梳かれていた髪をついっと退かして剣城が口付ける。
油断したッ、こんな事許すつもり無かったのに。
首筋を剣城の濡れた舌が這っていく。
ん…っ、やば、このままじゃ俺……っ。


「ヤッ!」

ゾクッとした感覚を感じた直後に、俺は剣城の肩を強く押し返した。
片方の手は繋がれているから、勿論片手で。
だからそんなに強かったはずもないのに剣城は脱力したように俺から離れた。

「いつもの…、出ましたね」

「…?」

なんだ…?また剣城の雰囲気が変わったような。
剣城は顔を俯きがちにしていて、よく表情が見えない。
でもなんだか声の調子が怖い。

「わっ」

ぐいっと、無言のまま急に腰を抱き寄せられる。
繋がった手と足を庇って俺が着地したのは、剣城の膝の上だった。
ソファの上で剣城の膝に脚を広げて着地していた。
まるで子供が父親にじゃれているような格好に顔が熱くなる。
恥ずかしくって俺はすぐそこから退こうとしたのに剣城はそれを許さない。
背後から俺の身体をぐっと抱き締める。
肌蹴た俺の肩に剣城の息が掛かる。


「何が嫌なんです?」

…あ、やっ、…な、何が?
首に、肩に、掛かる息が嫌で俺は一生懸命身じろいでいるのに、剣城の腕は解けない。
それどころかまるで逃がさないって言ってるみたいにぎゅうっと更に力が込められる。


「こんなに感じて…、それでも貴方は嫌としか言わない。
気付いてますか?
貴方は『嫌』も『駄目』も数え切れない程言うのに、『好き』とは一度も言ってくれてない。
…無意識、なんでしょうね」

「痛ッ!」

剣城の手が俺の胸元へと移動する。
行き着く先は俺の胸の小さな蕾。
いつもはそこをゆっくりと時間を掛けて愛撫するのに、今日は思い切りぎゅっと摘み上げた。
痛みで身体が縮こまる。
痛みで声を上げた俺を、背後で剣城が微かに笑った気配がする。


「ああ、これは『嫌』じゃないんですね。
もしかして霧野先輩って痛い方がイイんですか?
じゃあ俺が攻め方を間違えてたから『嫌』だったんですね」

「そっ、そんな訳ないだろッ!」

「そうですか?」

くっそー、絶対剣城のヤツ、俺の事笑ってる。
剣城のからかうような声色にカッとなった俺は、剣城の膝の上で身体を捻って後ろを振り向いた。
怒鳴ってやろうって。
こんな冗談、面白くないぞって。
そう思っていたのに。

剣城の顔を見たら、言葉が全部引っ込んでしまった。


「…そうだったら、良かったのに」

振り向いて見た剣城が何を考えてるのか分からない顔してたから。

剣城はそう呟いて、俺をまた強く抱き締めた。
困惑した俺ごと、強く。
その顔は苦しげで、切なくて。
俺が怒りの言葉を思わず飲み込む程だった。
でも、それだけじゃなくて…。

どことなく、…興奮もしてたから俺は。

なんて言っていいか分からなくて、沢山の文句を飲み込んで口を噤んだ。


 

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