9



抱き着いてそう懇願した霧野が少し身体を離し、
狩屋の首にぶらさがるようにして寝転んで狩屋を見上げる。


「俺がちゃんと言わないから駄目なのか?
ちゃんと言うから、最後までしろ…よ」

そう言うと今まで以上に顔を赤くして、すうっと息を吸い込んだ。


「かっ、狩屋のコレ…」

真っ赤になってそこを意識的に見ないようにしている霧野が、そっと服の上から狩屋のすっかり大きくなった性器に手を添える。
服の上から微かに触れただけだというのに、びくりと狩屋の身体が強張る。
触った瞬間、霧野もその熱さに照れたように口篭る。


「狩屋の…オ、…ちん、ちんを、俺に…、俺の……お尻に、入れ、ろ…。
俺、の…中で、狩屋を感じさせ、ろ……」

「……な?」

ずっと狩屋の顔からも、狩屋の熱い股間からも視線を逸らしていた霧野が、最後の言葉だけちらりと窺うように狩屋の顔を見上げた。


「……ッ!!」

ずくんとその視線に射抜かれた狩屋は思わず息を呑む。
息だけじゃなくごくんと喉を鳴らした狩屋は乾いて仕方無いといった様子で自分の唇を舐めて潤した。


「もお…、アンタ黙れよ…ッ!」


搾り出すように出されたその声は随分と掠れていた。
いやらしく発情した恋人を見るだけで狩屋は体中の水分がからっからに乾いていく気がした。
その失われた水分を求めて、霧野の口を自分の口で塞いでいく。
霧野の口から唾液を絡めるように奪っていく。


「ンッ、ンッ、ンン…ッ!」

漏れた声はどちらのものだったか。
霧野は無我夢中でそのキスを感じていたし、狩屋は邪魔だと言わんばかりに片手で自分のジャージと下着を一気に下ろしていた。


「もう優しくなんて出来ないですよっ!」

「そんなのいらないっ!!」


茹だる様な欲に浮かされ、霧野の太腿を抱えあげる。
狙い澄ますようにぴたりとそこに当てると、ぬめっとしたそこはそれだけで二人にふるりと身を震わす快感を与える。
ぐぐっと腰を押し当てれば、閉じたそこでも先端のぬめりで飲み込んでいく。


「……か、ハァッ!」

「…くっ!」


その衝撃に霧野が目を見開き、そしてぎゅうっと固く瞑ってしまう。
あまりの狭さに狩屋の顔も歪む。
それでもちゃんと一つになりたいと、めりめりと狩屋が最奥を目指して進んでいく。
指一本さえ拒んだそこが狩屋自身によって拓かれていく。
もう霧野は声さえ出来ない。
声も無く、ただはくはくと口を開き、長い睫に涙の粒を湛えている。
霧野の握りしめたところにシーツが寄ってしまっている。


「ハァ…ッ」

ぱちゅんとついに肌と肌とをぶつけた狩屋はその真珠のような涙を拭き取った。
ついに霧野の一番深いところまで届いた。
感極まって狩屋は霧野に囁く。


「分かりますか?今、俺、霧野さんの中に居ます…!
俺の事ちゃんと感じてますか…っ!?」


霧野の睫にまた真珠が浮かんでくる。
言葉に出来ないのか、霧野はぎゅっと目を瞑ったまま何回も細かく頷いた。
ふぅーっと安堵するように吐かれた霧野の長い吐息が狩屋にかかる。
そして息を吐いた口が、ゆっくりと微笑みの形に変わっていく。


「うれ…し……、かり、やぁ…っ」

大量の息と共にそう紡ぐと、小さな声で続けた。

「うご…け…」

ほとんど口の形だけでその告げられた言葉に、一瞬だけ狩屋は躊躇した。
でもすぐ霧野がこんな事を口にしたのか思い至ってゆるやかに動きだす。


「動きますよ」

――なんでも言えって、俺が叶えてやるって俺が言ったのまだ守ってるのかよ、この人は。
痛いだろうに、男前すぎるだろ…!


「アッ……、ッ!…ッ!……ンンッ」


太腿を抱え、ゆるゆると抽出を始めると痛みを懸命に堪える霧野の口から堪え切れない小さな声が漏れる。
綺麗で男らしくて、それなのに狩屋の心を占めるのは可愛いという思いだった。
今日だけでも何回も敵わないと思ったのに、シーツをぎゅっと握り締め、真っ赤な顔で泣きながら「アッ、アッ」と時折声を漏らす霧野が可愛くて仕方ない。
普段は誰よりも綺麗で男らしいこの人を、もっと可愛くさせたい。
可愛くて可愛くて、もっと啼かせたくなる。
可愛いと思う気持ちが心を占める範囲が広がる程に、腰がどんどんと早く動いてしまう。


「アアッ……アアーッ…アッ、ア……ッ」


霧野から毀れる声が我慢しきれず、どんどん大きくなっていく。
ぎゅうぎゅうの中が気持ち良くて、カウパーが次から次へ溢れてくる。
気づいたら動きに合わせてぐちゅっぐちゅっと繋がった部分が粘ついた音を立てている。


「アアッ…アアンッ……アアーッ、アアー…ッ」

少しずつ抽出が楽になって、霧野の声にも少しではあるけど欲が混じってきて。


「アアーッ、…はげっ…しぃよォオオッ!アアーッ、アー…ッ」

「ク…ッ」

ついには壊れたように声を上げる霧野に止まれなくなる。
パンパンと音が出るくらい激しく欲望をぶつけてしまう。


「アアンッ!かり、ヤァッ、ンンアッ、アアーッ、な、中ッ、中、にぃッ!!」

「……ッ!」


最後のオネダリを聞いた瞬間、一気に欲望は限界値を突破して破裂してしまう。
どくんと大きく脈打ったかと思うと、びゅくんと叩きつけるように塊のような白濁を霧野の中へと吐き出してしまう。


「ッ!!」

そのあまりの勢いに霧野の瞳が涙の粒を飛ばして見開かれる。
そしてその後に続く長く熱い放出に霧野は脚を撓らせた。


「アアッ、アアアアーーー……ッ!!!」


 

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