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それに気付いてしまったら、後は早かった。

「ンッ…?えっ!?…な、なん…っ、で…ッ!?」

体が熱い。
ソレが体を這う度に、ゾクゾクッと背筋を走ったのは確かに悪寒だったはず。
それなのに今、霧野の体は熱く火照り、口からは吐息が漏れる。
ソレは今もなお襟元からどんどん服の中へと潜ってくる。
直接肌にそのぬるっとした感触が這うだけでも息が弾んでしまう。
それどころかソレが胸の先を擦ると、口から今まで聞いたことのないような声が勝手に出てしまうのだ。


――なんだよ、これ!?こんなの絶対おかしい!!


感情と体がどんどん離反していく。
頭はこの未知なる物体が気色悪くてしょうがないのに、体はどんどん敏感に快楽を拾っていく。
嫌だとどんなに思っていても下肢が昂ぶっていく。


「うぇ…っ、ヤだッ、勃つ、な…っ、このぉ…っ」

腰に熱が集まるのを感じて、霧野は嫌悪で顔を顰める。
生理現象で済ませない程に頭の中は嫌悪でいっぱいだ。
さっきからソレを掴もうとしているのに全然上手くいかない。
それどころかソレの尻尾なのか乳首を甚振る先端とは違い霧野の指を舐るように動きだす。


「もぉ…、なんだよ、コレェ…ッ!!」

今、霧野の体には乳首を甚振る先端、指を舐る尻尾、そして首から胸にうねうねと細長い腹部が縦横無尽に絡み付いていた。
じわじわと熱が広がっていく。

どれぐらい胸の先を甚振られていただろうか。


「ハァ…ッ、な、なに…?」

霧野が熱と嫌悪でボウッとなった声で怪訝そうに呟く。
突然じゅるりと体を這う感触が止まったかと思うと、またソレが光を発した。
そしてまた先端が先に進み始めた。

……霧野の熱を孕んだ下肢に向かって。


「アッ、アッ!い、嫌だ…ッ!そっちは嫌だァアアッ!!」

霧野は今まで以上に必死にソレを掴もうとした。
露出している胸元から侵入しようとするソレを取り出そうとする動きから、服の上から押さえる動きに変えた。
手がぬるぬるして掴めないなら、服で滑りを取れば少しは押さえられる。
そう思った。

だが、最早霧野の服の中は手と同様ぬるぬるで意味が無かった。
ただ、それが体を這う感触を霧野の手で感じただけだった。
少しずつ手からぬめった感触が離れていき、体を這う面積を増していく。
ソレが進むにつれ、少しずつ霧野の服が捲れ、綺麗に引き締まった腹部を晒していく。
腹部には濃厚な粘液しかないはずなのに、どんどん服だけが勝手に捲れていく。
目の錯覚ならいいのに、と霧野はソレを押さえながら独りでにジャージのズボンのゴムが緩んでぺットボトルの蓋程の隙間が出来るのを愕然と見つめた。


「ヒィやあッ!!」

進行を抑える事が出来ぬまま、ソレは霧野の恐れていたとおり霧野の性器へとゆっくりと巻き付いていく。
まだ生え揃っていない恥毛を掻き分けるように進み、熱を孕み完全にそそり立った根元へと突き当たる。
ぞわりと恥毛が逆立つ。


「ハァーッ、…ハァーッ」

ソレを止める事と未知なる物への恐怖で心はいっぱいなのに力が入らない。

ゆっくりとソレが蜜の滴る先端を目指して登っていく。
巻きつくようにヌルヌルとした物体が蠢く。

嫌なのに…。


…ただ、ただ気持ちいい。


「アッ!…ハァ…ンッ」

張り詰めて薄くなった皮膚をぬちゅぬちゅとソレが這う。
裏筋を通る時には、悲鳴のような喘ぎ声が口から漏れた。

どうしようもなく気持ちいい。

霧野自身が分泌した粘液とソレの粘液が絡み合って滴り落ちる。
それをソレが追うようにまたぬるりと根元の方へと這って行く。
根元から先端、そしてまた根元へと。
ぬるぬるとした胴体が仄かに青い粘液を残した場所を同じように動いていく。
どんどん胴体は霧野の屹立に巻きついていき、覆い隠していく。
その根元から先端への動きと相まって、それはまるでピストン運動のような錯覚を起こした。

巻きつくような締め付けと、ずるりと蠢くそのぬるぬるとしたボディーに霧野は知らず知らずの内に追い詰められいく。


「ハァッ!…もぉ…ヤぁ…ッ!」

息も切れ切れに霧野の限界ぎりぎりの吐息が漏れる。
弾む息で酸素が圧倒的に足りない。
なんだか頭に靄が掛かって、嫌悪を快感が凌駕していく。

もう陥落寸前だった。


…ソレがそこを目指していると気付くまでは。


先端が根元に辿り着いてもその動きを止めないと気付いた時、今までで一番の恐怖が霧野を襲った。

……ど、どこを目指しているんだ!?

もしかして、と思っただけでゾクッと霧野の背を恐怖が伝う。
それは口以上の恐怖だった。

ぬるりとソレが会陰部を超えていく。
恐怖が確信へと変わる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
それだけはどうしても嫌だ!!

ソレが目的地を見つけたように霧野の菊門にその頭の粘液を擦り付ける。

体内に入ってくる恐怖。
その場所は口とは違った意味を持ってしまう。


交尾…。
種付け…。
生殖活動…。

霧野の頭を最悪の事態が駆け巡る。
あまりの恐怖に霧野の口から悲鳴が溢れる。


「あ…っ、あ…っ、…たす、助けて。
助けて…、狩屋、…狩屋!狩屋ァアアッ!!」



 

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