砕かれる
「ぁ…霧、野…。
すまな…霧野、霧、…野」
呆然と神童は霧野の名を呼び続ける。
その頬を止め処なく涙が濡らしている。
もう、卑しい強姦魔に屈したくないという誇りは神童の中には残っていない。
ただ、これ以上自分と霧野の関係に土足で足を踏み入れて欲しくないという思いだけが、空虚になった心の中を占めていた。
泣き続ける神童の体を男は無理やり体勢を変えさせる。
小さな子供に排泄をさせるような屈辱的な体勢を取らされても、神童にはもう激しい抵抗をする気力も残ってはいなかった。
脚を無理やり開かされたときも、
ぐいっと体を持ち上げられたときも、神童はただ力なく俯いたまま首を横に振っただけだった。
……純真で気高く生きてきた神童は知らなかった。
先ほど受けた屈辱よりも更に酷い行為がこれから待っていることを。
男はその体勢のままの神童を移動させる。
男の足の行き先はしっかりと霧野を目指していた。
為すがままだった神童の体がぎくりと強張る。
「許、して…、もぉ…ゃ…嫌っ、やだ…っ許し…、おねが…」
それは誇り高い神童にとっては屈辱とも言える懇願だった。
卑劣な男に泣いて許しを請うなんて普段の神童だったら考えもしない行動さえ、今の神童にとっては容易な事だった。
それで自分達を解放してくれるなら。
このままでは、霧野に知られてしまう。
自分でも許すことが出来ない、霧野に対して感じた穢れた欲望を。
でも、そんな神童の必死の懇願は男によって一蹴された。
下卑た嘲笑と共に。
「なんだ自分はもうイっちまったから終わりにしろってか。
おいおいそりゃあ無いんじゃないの?タクト君。
オジサンたちも綺麗なあんちゃんもタクト君以外は誰もイってねぇだろうが」
その男の言葉は事実だっただけに神童の心を砕く力を持っていた。
――この欲望の狂宴で欲を満たしたのは自分だけ…。
突きつけられた事実は神童にとって辛辣なものだった。
自分が一気にこの欲にまみれた男達よりも汚らわしい存在になった気がした。
うっという嗚咽と共に新たな涙が溢れてくる。
神童はその涙に濡れた顔を両手で隠す。
もう何も見たく無かったし、見られたくも無かった。
「なーに、泣くことはねぇよ。
今度は綺麗なあんちゃんに触ってもらおうと思ってよ。
なっ、タクト君も触ってほしいだろ?」
もう男の言葉にも神童は反応を示さない。
うっ、うっと小さく嗚咽を漏らしながら顔を隠して泣き続ける神童を男は一瞥すると、未だ口淫を続けていた霧野にむかって声を掛ける。
「おう、あんちゃん。
今度はタクト君のケツマンコ解してやれよ。
あんちゃんもそろそろ限界だろ?」
そう言うともう一人の男に目配せをする。
もう一人の男は仕方無いとばかりに口の端を歪ませると、霧野の手をとった。
そしてその手を導いた先は、男によって露になった神童の不浄の窄まりだった。
「あっ!」
霧野のしなやかな指がそこに触れる前に、感じたひやりとした感触に神童は驚いて覆っていた手を思わず退かしてしまう。
目を開けるとそこには見慣れた霧野の顔。
神童が今まで見たこともない表情を浮かべた霧野が神童の事を見つめていた。
霧野は神童と目が合うと、綻ぶように笑みを浮かべる。
その変化もその表情も神童にとって見慣れたものなのに、目だけが普段と違った。
どうしても見慣れない霧野の瞳。
そこには疑いようもなく神童が見たことのない熱が篭っていた。
……神童を想う恋情の炎。
霧野はその恋情の想いを隠す事無く神童を見つめると、そっと神童の涙をぬぐった。
「拓人、もう泣くな。
俺はいつだって、そう今までもこれからもお前を守り続ける。
だから、俺を、受け入れてくれ…」
その瞳の炎が切なげにゆらりと揺らぐ。
その瞳が、頬に添えられた手が熱くて、神童ははぁっと息を吐き出した。
「…霧、野っ」
神童の体から涙と一緒に切なさがこみ上げてくる。
それは神童を堪らなく心細くさせ、霧野の腕に縋らせた。
その瞬間、霧野は微かに笑みを浮かべると、宛がっていた指に力を込めた。
霧野の指が男が垂らしたローションの力を借りて神童の中へと沈んでいく。
神童の目が見開く。
自分の想像を遥かに超えた行為が今為されている。
「はぁ…っ」
思いもよらぬ感触に思わず体が強張ると、霧野の指を引き締めて爪の形までも有り得ない場所で感じてしまう。
その事実に神童は一気に顔を赤く染めた。
霧野の指を感じる場所、それは神童の不浄の場所。
神童は初めて体の内側から触られる感触に思わず縋った手に力を込める。
今、たしかに霧野の指が神童の中にあった。
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