重なる



「触るなっ!!」

神童は男の手から逃れようと暴れだす。
だが男の手は神童の体に巻きつき、全く微動だにしない。
それどころか性器に触れた途端、火が点いたみたいに拒絶しはじめた神童に男は楽しそうに笑いを零す。


「そうか、そうか!
こんなオヤジじゃなく、あの綺麗なあんちゃんに触って欲しいってか」

神童の拒絶を事も無げにそう言うと、俯いた神童の顔をもう片方の手で掴んだ。
無理やり上げさせられた視線の先には、汚らしい男を神童だと信じて懸命に奉仕を続ける霧野の姿がある。


「ならあのあんちゃんが触ってると思えばいい。
今、タクト君のチンポに触ってんのはあの綺麗なあんちゃん。
綺麗なあんちゃんだってタクト君のチンポ舐めてる気でいるんだ。
な!タクト君もそう思って気持ちよくなっちまえよ」

男の言葉に神童は一瞬、
そう一瞬だけ汚らしい男に自分の姿を重ねてしまった。


――はち切れんばかりに滾っている欲望を掴んでいるのは霧野の手。
そして今、霧野の舌が近づいてきて…。


「下卑た事を言うなっ!
俺と霧野はそんな関係じゃないっ!!」

そこまで考えた神童は、はっとして男の腕から逃げようと腰を浮かす。
でも、すぐ男は後ろから神童の肩を抱き寄せてしまう。
男の固い胸に倒れこんできた神童を男はまた顔を掴んで霧野に視線を固定する。


「へー、じゃあタクト君はあの綺麗なあんちゃんの姿見てもなんも感じねぇってか。
タクト君だと思ってっから、あんな頑張ってんだぞ?」

男の顔が神童に後ろから近づいてくる。
男が話す度に、吐息が神童の耳に当たる。


「ああ、ほら綺麗なあんちゃんの舌が裏筋を舐め上げた」

体を密着させたまま、男の指が霧野の行動をトレースする。
後ろから抱きすくめられ、体は密着しているのに、視界に入るのは男の姿ではなく霧野の姿。

……体が熱くなる。


「そのまま亀頭を舐め回してる。
おっ、尿道口を舌で割ってる。綺麗なあんちゃん結構うめぇな」

「…んっ、く」

視線の先の霧野と男の指がシンクロする度、信じられない程の快感が神童を襲う。
思わず声が漏れそうになるのを神童は口唇を噛んで堪える。


「っと、今度は咥えたな。
あーんなじゅぼじゅぼ音させて、奥まで咥えてらぁ」

「…んぁっ!」

男の手が神童のペニスを包み込む。
急な刺激に神童の腰が引ける。
もう霧野の立てる音までが神童を追い立てている。


「…ふっ、くぅ…んっ」

神童の下肢からも霧野が立てる音と似た音が微かにする。
神童が零した蜜が男の手に伝わり、男の手によってぬるぬると神童の屹立全体に塗されていく。

…まるで霧野の唾液が絡んだ舌が這っているかのように。


「あっ!」

ぬるぬるとしてまるで霧野の咥内にあるみたいだ、
そう思ってしまった瞬間、神童を急な射精感が襲う。
それを何とかやり過ごそうと体を強張らせる神童の耳元で男が笑い混じりで囁く。


「どうした?
綺麗なあんちゃん見てイキそうになったか?」

その言葉は神童を現実に引き戻すには充分だった。


――今、俺は霧野で…っ!


霧野が如何わしい薬を飲まされ嬲り者にされている事も、
自分が今、汚らわしい犯罪者の手で弄られて居る事も忘れて、ただ…。

ただ、霧野の艶姿に、霧野の淫態に、欲情していた。


それは神童にとって自分だけでなく霧野までも汚す行為。
この神童達を人間扱いしていない下劣な犯罪者に屈服する事と同じことだった。


「やめっ!…もう、嫌だっ、止めっ、止めろぉーっ!」

男から逃れようとしても、限界まで昂ぶった体は望むようには動いてくれない。
頭ではこの状況を忌むものと思っているのに、体はそれを裏切るように爆ぜる事を求めて浅ましく男の手淫に勝手に腰が小刻みに揺れてしまう。

清く誇り高く生きてきた神童が、こんなにも快感を感じたことは今まで無かった。


「あっ!…あっ!…やだっ、やっ!やぁぁっ」

抑えても抑えても、神童を次から次へと射精感が襲ってくる。
限界を超えた快感を抑える事も、少しの気の緩みさえも許されないこの状況も、
そして今まさに霧野を汚してしまいそうな自分自身が許せなくて神童の目に涙が溢れてくる。


「もぉっ、もぉ…っ…きり、のぉ…っ!」

切羽詰まって助けを求めるように零れた霧野の名前。
それに呼応するように霧野が神童の名前を呼んだ。


「拓人、好きだ」

その甘い囁きが塞き止めていたものを決壊させる。

「ぁ、ぁあ、ああ…っ!」

神童の瞳からはらはらと涙が零れる。
慌てて手で押さえても、一度決壊した柵は暴れ狂う濁流を止める事は出来ない。


びゅくりびゅくりと数度に分けて吐き出されていく白濁した体液に、
壊れてしまったものの多さに、
神童はただ涙を流し続けた。




 

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