気付かれる



「拓人、拓人」

霧野が神童の名を呼びながら、腰を浮かせる。
視線は神童を見つめ、顔は甘く蕩けたまま。

神童の傍に向かおうとした霧野の腕を、男は掴んで止める。


「おっと、どこ行くんだ。
お前の相手はこっちだろ」

「違う、俺の相手は拓人だ。
ああ!やっと拓人とキス出来たのに。
早く行かないと拓人が待ってる!」

男の制止に霧野が歌うように言う。
焦点の合ってない瞳も、浮かれたようなその顔も霧野が尋常じゃないと教えている。

男達もその霧野の様子に顔を見合わせた。


「おい、これ気持ちよくなる薬じゃねぇな。
完璧イっちまってるじゃねぇか」

「みてぇだな。
チッ、面倒くせえなぁ。
こっちはもうギンギンだってのによぉ」

「安物買うからだろ。
でもソイツ、言ってる事がホモくせぇからなんとかなるんじゃねぇか?」

「あー、ノンケじゃねぇのかコイツ。
つくづく失敗だな、こりゃ。
でもこんな上玉見逃すのも惜しいし、上手く宥めてヤるしかねぇな」

霧野の腕を掴んでいる男はそう言うと、ふわふわとした調子で何かを探している霧野の耳に顔を寄せる。


「おい、タクト君ならお前の後ろでちんぽギンギンにお勃ってて待ってるぜ。
早く舐めてやんな」

男はズボンから露出させた逞しく勃起したイチモツに霧野の顔を押し付ける。
赤黒い凶悪な男根が霧野の綺麗な鼻先に押し当てられる。

だが、霧野はその醜悪なペニスを嬉しそうに握りしめた。


「ああっ、拓人!
こんなに感じてくれていたなんて。
…もっと俺を感じてくれ」

そして感激の声を上げると、ゆっくりとその瑞々しい口唇を広げていく。
愛しい神童の欲望を口で愛撫する為に。


ちろちろと蠢く舌。
感極まって洩れる息。
紅潮した秀麗な顔。
…そして時折洩れる神童を呼ぶ声。

「拓人っ、…あぁっ、…拓人、拓人っ!」


じゅるにちゃと男の淫液を啜る音に混じって聞こえる自分の名前。
神童はそれを自分の荒い息の向こうで聞いていた。

霧野の鮮やかな紅い舌が男の男根を舐める度、ずくんと体の奥に火が点った。
霧野の艶やかな口唇が男の男根を銜える度、ぞくぞくと甘い痺れが背を走り息が弾んだ。

――どうしようもない程、興奮していた。


「あー、コイツこんな顔してっけど、もしかすっとタチだな」

男が一生懸命に愛撫を続ける霧野の前髪を掴んで呟く。
微かに顔を上げた霧野は、感じている神童が思わず縋ったのかと、安堵させるように、にこりと笑みを浮かべるとすぐさま男を感じさせる行為へと戻っていく。

「じゃあ、テメェがタクト君の代わりに掘ってもらえ。
処女と童貞で丁度いいじゃねぇか」

「うっせぇ。
俺は一生処女でいーんだよ。清いまま死んでやらぁ!」

「よく言うよ。
汚れきったオヤジがよぉ」

軽口を叩きあって笑った男が、ふと神童に声を掛ける。

「なぁ坊主、オトモダチはどうやらホモみてぇだぞ。
知ってたか?タクト君とやらが好きなんだとよ」

そう言って押さえ込んでいた神童を見た瞬間、男は微かに息を呑んだ。
その姿を見なくとも、神童はその気配を察した。
そして思った。

…バレてしまったと。


「…へぇ〜、そうかい。坊主がタクト君か」

男の舌なめずりが聞こえそうだった。
男は罠に掛かった子兎の調理法を吟味するように楽しげに目を細める。
羞恥で紅く染まった顔を伏せた神童に楽しそうにそう告げると、
今まで地面にねじ伏せていた神童の体を抱き上げる。

いきなりぐいっと抱え上げられ、抵抗も出来ぬままに神童は男の膝の上に後ろから抱き竦められていた。
神童の首筋に男の生臭い呼吸がかかる。
気持ち悪いと確かに心は告げているのに、興奮した体はその刺激にふるりと身を震わせる。


「ぁっ…ゃぁ…」

弱弱しく震える神童の服を男は体を時折弄りながら少しずつ脱がしていく。

「タクト君はもうアイツとヤっちまったのかい?
どうだあの綺麗なあんちゃんは善かったかい?」

「汚らわしい想像をするなっ!!」

男の下衆な言葉にかっとなって神童は自分の体に纏わりつく男の手を払いのけた。
神童の抵抗さえ男は楽しそうに低く笑う。


「クックック、そうかい綺麗なあんちゃんの片想いか!」

男は跳ね除けられた手をまた神童の体へと這わす。

「でもタクト君も満更でも無さそうだな」

服を脱がしていた先ほどと違い、直接的なその動き。


「こんなギンギンにさせてるんだもんよぉ!」

男はぎゅっと神童のペニスを握る。
神童の幼いペニスがとろりと男の指に蜜を滴らせる。


――そこは霧野の肢体を眺めていただけで全く手を触れずに引き締まった腹筋につく程昂ぶっていた。



 

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