9*



「あー、若い子の生肌、久しぶりだー」

下男は浴室に入った途端、平均的な風呂マットよりも三倍以上あるマットに神童をとさりと落とした。
マットの上とはいえ、乱暴に落とされた神童は背中を強打し一瞬痛みで息が詰まった。
「かはっ」と息を吐き出した神童は、一瞬撓った背を横向きになり縮みこませようとした。
だが、それよりも早く下男は突き出された神童の胸に頬を埋める。
ベータに弄ばれ尖ったままになった乳首に、下男の弛んだ頬がぬちゃりと擦れていく。


「ッつ、ゴホッ!…アッ!…クッ、ゴホッ!…ハッ!」

痛みと息苦しさ向こうで、ポウッと欲望の芽が小さく芽吹きだす。
咳き込んでいる神童など無視して、下男はチョパチュパと過敏なままの乳首を吸い始めていた。
神童が咳き込む度に、下男の口内に含まれた乳首が歯に当たって強い刺激を生んでいる。
苦しい、痛い…!
通常ならその二つに占められるはずの感覚に異音が混じっている。
ぬるぬるとした舌が乳首を舐る度に、じっとしていられないようなもどかしさが痛みに交じった。
苦痛に快楽が複雑に交じり合い、神童にまるで痛みが気持ち良いかのように錯覚させる。
それが神童を堪らない気分にさせた。


「や、やらぁ…ッ!」

神童は自分の中の不協和音に恐怖を覚え、身を捩る。
早く下男の手を胸から剥がさなければ……!
神童は無我夢中でマットの上を這い蹲って、進む。
神童の汗でマットがキュッキュッと擦れた音を浴室に響かせた。


「チッ!面倒掛けさせんなッ!!
な?
大人しくしてれば痛い事はしないから、少ぉ〜し大人しくしてようねぇ?」

下男の舌打ちと共に、神童の身体はぐいっと背後へと引き寄せられた。
そしてドンッと男の身体に密着したと同時に、神童の耳元で囁かれる打って変わった猫撫で声。
神童はまた先程と同じ体勢にされてしまう。

――先程。
そう寝室で下男に抱えられ、ベータに好き勝手に胸を弄られた、ついさっきと。
神童が裸体なのも、下男が性器を勃たせているのも、まるっきり同じ状態だった。

だが、先程と違ってベータが居ない。
男を御する立場にあるベータがここには居なかった。
それどころか下男に「楽しんで」という指示を出して、ここへと送り出している。
耳元で囁かれた内容に、そしてその言葉によって耳元で振動した空気に神童はふるりと身体を震わせた。


「あー、震えちゃって可愛いねぇ。
ほーら、大人しくしてればお前も気持ちよくシてあげるからねぇ。
おーよちよち」

「ふっ、ぁ…ッ!」

ただ抱きかかえていた先程と違って、今度は下男の手が直接神童の胸へと延びていく。
グリッと太い指が胸に触れた瞬間、思わず神童の口から溢れるように悲鳴が漏れる。


「イッ、ぁぁ〜…!
イッ、痛ぁぃぃ!さっ、触あうなぁ…!」

「ほーら、おっぱいぐりぐりしてあげまちゅからねー。
きもちいい、きもちいい、シてあげまちゅよー」

下男の指がグリグリと神童の胸先を押しつぶしていく。
ベータの繊細な愛撫と違って、下男の指は遠慮がなかった。
ただでさえ散々弄くり倒されたばかりの神童の胸は腫れぼったく、男の乱暴なだけの触り方では快感よりも痛みを強く感じてしまう。
純粋な痛みは、結果として神童を正気に戻させた。
快楽に堕ちる恐怖は神童の中から遠ざかり、下男への嫌悪感が増していく。


「痛ぁい!やめ…ッ!嫌、ら、…ッ!」

神童は痛みから逃げようと、下男の膝の上で暴れた。
暴れる度に神童の腰にゴリゴリとした固いものが当たる。
それは神童が嫌がって逃げようとすればするほど、どんどんと固くなっていき神童の座り心地を悪いものに変えた。
それが何か、神童は想像するだけで吐き気を覚えた。
何か、なんて愚問でしかない。
この男は自分を対象にして性欲を滾らせている。
しかも自分はそんな汚らわしい男の腕の中に抱かれている。
ぞわぞわっと悪寒が神童の背を走り抜ける。


「ほーら、おっぱい気持ちいいでちゅねー。
ボクは男の子なのに、こーんなにおっぱい腫らしてエッチな子でちゅねー」

下男が変な赤ちゃん言葉で自分に話しかけてくるのも神童の神経を苛立たせた。
どうして誰も彼もが自分に幼い言葉遣いを強要しようとするのか。
自分はこんな辱めを受けていい人間ではないと、神童は怒りがこみ上げるのを感じた。
一分一秒もこんな男に抱かれていたくない。
そう思った神童はギッと唇を噛み締める。
そして渾身の力で己の後頭部を背後に居る男の顎を目掛けて思いっきりぶつけた。


「ぐあッ!」

肉のあまりついていない顎と頭の部分がぶつかり、骨同士がぶつかったような鈍い音が響く。
思ってもいなかった不意の反撃に、下男は自分の顎を押さえてのた打ち回る。
そして男がもんどり打って倒れる程の痛みを与えた神童にも、いくら身構えていたとはいえ激しい痛みが走る。
だが未だ体がいうことを利かない身では、我が身を削ってダメージを与えるしか方法がなかった。
無事男の腕から這うように脱出した神童は、浴室の壁に凭れかかるようにして立ち上がり、未だ痛みに身悶えている下男を見下ろした。


「汚たにゃぁい手で触えうなッ
おえに、かってに触えうのは許ぅあない!許ぅあないからにゃぁぁぁ!」



prev next

 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -