悟る



そしてその神童の声にシンクロするように、一つの嬌声がすぐ傍であがった。


「はぁっ…はぁっ、ん…拓人ぉ…っ」

神童と同じように後孔を指で犯されている霧野の声だ。


「拓、人ぉ…、ん、上手だよ…。
拓人の、手、…はぁっ、キモチいい」

男に背を預けるように寄りかかり、片方の手は後孔に、もう片方の手は屹立に添えられた状態でも、
霧野はまだ夢うつつで神童の名前を呼んだ。
男の太い指がぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てながら抜き差しをしても、それでも霧野は神童を攻めている甘い幻想から覚める事は無かった。


「んっ、んぁ…はっ、んん〜〜っ」

指が増えても、少し背を震わせただけで甘い声を吐き出した霧野に男は鼻で笑う。


「見たまんま。
絶対タチよりネコの方が向いてるぜ、兄ちゃん。
男より女として生きてけよ」

その半分馬鹿にしたような囁きも、震える背を舌で舐められてしまっては霧野の脳裏に届く前に霧散してしまう。


「ひゃあっ!たくっ、拓人っ!
もうイイ、もうイイからっ!出ちゃうから、もうっ!
駄目だって、もう…ひうっ!」

霧野がふるふると震えながら首を振る。
肩越しに男が覗き込めば、霧野の欲望はひくひくと蜜を滴らせている。


「く…っ」

男が大きく下から上へと扱いてやれば、粒だった蜜が壊れて男の手に零れて欲望まで濡らしていく。
霧野の口から耐えるような声が漏れる。
根元を戒める男の手が無ければ、今にも暴発しそうだった。
男はその様子を見て、満足そうに笑みを浮かべる。
そして今度はちゃんと霧野に分かるように囁いた。


「タクト君に挿れたいか?」

「挿れた…っ!挿れたい!今すぐ挿れたい!!
早く拓人と一つになりたいっ!!」


霧野が大きく頷く度に、透明な先走りが反動で飛び散っている。
男はちらりと視線を動かす。
動かした視線の先には、もう一人の男の腰の上でおかしな動きをしている神童の姿。
男の視線に気付いたもう一人の男は、神童の腰を掴むとゆっくりと指の向きを変えた。
神童から漏れる声の質が変わる。

神童の痴態をわざわざ見せ付けるような男の悪趣味さに男は少しだけ苦笑する。
霧野の準備を待つ間も趣向をこらして楽しんでいた奇癖の相棒に、答えるように自分も霧野の穿ったままだった指を動かす。


「ひゃあっ」

後ろの刺激だけでも声を上げた霧野に、男はわざとらしく眉を上げてみせた。
その表情は「どうだ」と、言わんばかりだ。


「タクトに挿れたきゃ四つん這いになれ」

霧野に短く命令すると、もう一人の男に顎をしゃくってみせる。
その一連の動きだけで言葉は無くとも、全ての準備が整った事を告げていた。

もう一人の男はぺろりと舌舐めずりをする。
自分の目の前にはどうぞ食べて下さいと言わんばかりの可愛らしい少年が居る。
ピンク色のペニスを勃起させ、その先からとろとろと蜜を零し、
指を差し込んでいる後孔は、指を動かす度に柔らかく絡み付いてくる。
見ただけで美味しいと判断できる青い果実。
その上、すぐそこには友人というには少し危うい関係のもう一人の少年。
どう調理したらこの可愛らしい少年は一番美味しく食べれるだろうか?
瞬時にその楽しくも汚らわしい計算をした男は、掴んでいた神童の腰の手を少し緩めた。


途端に神童が泣き叫びながら腰を浮かそうとする。
自分もそれに合わせて体を起こせば、神童は指から逃れようと手を地面に付いて這って逃げようとする。
男は笑いを堪えるのに必死だ。
神童は霧野の言いつけを守る為に男の指から逃げ回っているというのに、
指は未だ銜え込んだままでその一歩一歩が男の思惑どおりに進んでいるのだから。


顔を伏せ懸命に這いずり廻っていた神童の動きが止まる。
その視界に漸く霧野の手が入ってきたのだろう。


「はい、到着ー」

動きを止めた神童の腰を男がもう一度掴む。
男の声に力なく首を振った神童の後孔から指を抜いてやる。
あんなに必死になって逃げようとした男の指。
それが己の体からなくなったというのに、神童はちっとも嬉しくなかった。
くぽっと雰囲気にそぐわない間抜けな音が響く。


「おら、タクトが来たぞ」

「拓人っ」

声と共に神童の手に重なる手。
神童は顔を上げずとも、それが誰の手か知っていた。
そしてそれと同時に指の代わりに宛がわれたモノ。

それが霧野のモノでないことも、見なくとも知っていた。


「拓人、好きだ」

その愛の囁きが真摯な程、悲しく胸に響く。
霧野の手が目に入った瞬間に、神童はもう己の運命を悟っていた。
今、神童の胸を占めるのは諦めの心。


それから、夢うつつな状態の大切な存在。
空いている方の手は神童から霧野の手に重ねた。


心を裂くような初めての衝撃が、その瞬間、神童を襲った。
少しでも逃げたくて、霧野の手をぎゅっと握りしめた。


 

prev next

 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -