離される



「嫌っ!!嫌だっ!!
霧野っ!霧野ぉーっ!!」

神童は男の腕から逃れようと霧野へと必死で手を伸ばす。

さっきまであんなに傍に居て、霧野を感じていたのに。
それなのに、今はたった数メートルが途轍もなく遠い。


まだ薬が抜けきらない霧野は視界が狭いのか、神童の声にきょとっと視線を彷徨わせる。
突然視界から居なくなってしまった神童に、霧野も戸惑っているようで不安そうな顔をで辺りを探している。


「霧野っ!!」

神童はそれでもそんな霧野に縋った。
霧野はもう神童の唯一の存在になっていた。


それなのに霧野は、後ろから羽交い絞めにしている男がゆっくりと髪を撫でると嬉しそうに振り返り男の背へと手を回した。
そして自ら神童とは似ても似つかないむさ苦しい不精ひげの男へと、その眉目秀麗な顔を寄せていく。


「ッ!!」

神童はその瞬間を見たくなくて、急いで顔を伏せた。
汚らわしい犯罪者と霧野がもう一度口付けを交わすところなんて見たくもなかった。

だがいくら神童が顔を伏せ、その瞬間から目を背けても、
行われた行為はなくなるわけでは無かった。


「ッンン…拓人ぉ…」

ぴちゃと微かに聞こえる水音と時折聞こえる鼻にかかった声で呼ばれる自分の名前に、
神童は喚き散らしたい衝動に駆られる。
自分はここに居ると大声で叫んで、あんな汚らわしい男なんかに霧野を触れさせないのに、と。


でも、それは所詮願望でしかない。
現実では、神童は男に背後から四肢の自由を奪われ口さえも大きな手で覆われてしまっている。
もう霧野の名前を呼ぶ事さえ出来ない。


「あーぁ、綺麗なあんちゃんは別のタクト君みつけちまったなぁ。
随分きったねぇタクト君だが、坊主は振られちまったみたいだぞ」

男の愉快そうな声に「違う!」と否定する事さえ出来ない。


「でも安心しろな。
タクト君の相手はちゃーんとオジサンがしてやるから。
タクト君ももう限界ぎりぎりなんだろ?」


その言葉に神童の体がぎくりと強張る。
視線を避け俯いた神童の目の前を肩を後ろから抱いていた男の太い腕が通っていく。
そしてそのまま神童の秘部へと這わされる。


「おお、いい具合になってんじゃねーか。
どうだ?
もうチンポ欲しくて堪んねーんじゃねーのか?おい」

男の指が窄まりの淵をなぞっていく。
普通なら閉じているはずのそこは、小さいけれど確かに輪を描いていて、神童に自分の体が浅ましく何かを求めて口を広げていることを教えた。

そして男の指に悦ぶようにひくりとその穴が蠢いた事も。


「んーっ!んーっ!」

「ん?早く挿れてくれってか?
んじゃまずはオジサンの指から銜えよっか。
タクト君のおマンコチェックしねぇとな」

口を塞がれ、嫌だ、とも違う、とも言葉にすることが出来ない。
屈強な男の腕に抵抗する事も出来ず、神童は無防備にくぱっと開いているアナルに指を宛がわれてしまう。


「んんーっ!」

「おおっ、とろっとろじゃねえか。
ほーら、タクト君。オジサンの指判るかい?
あんちゃんの指より太ぇえだろ」

穿たれた異物感に神童は吐き気が込み上げてくる。
霧野の指とはなにもかも違うそれが、自分の中にある事が許せなかった。


「お、タクト君も嬉しいんか。
後ろだけでチンポぬるぬるじゃねぇか!」

「ふぅーっ!ふぅっ!んーっふ!!」


それなのに限界まで火照った躯は簡単に火がついてしまう。
霧野によって、神童の躯はもうそこを弄られると気持ちいいことを知ってしまっていた。
どこが一番悦いかさえ。

神童はそこを男に触られてしまうのを恐れた。


さっきの場所を触られてしまうと、我を忘れてしまう。
男の手で感じてしまう。

――…霧野以外の手には感じないと、霧野と約束したのに!!


「タクト君のイイところは…っと」

「んんーっ、んーっ」

男の指は柔らかい神童の中を傍若無人に動き回る。
神童は必死に、そこを庇う様に腰を揺する。


「どこだぁ?…みつかんねぇなぁ」

「んっ…くぅぅ…っ」

そこに指が近づく度に、神童は腰を浮かせた。
その動きのせいで余計昂ぶってしまおうとも、神童はそこを庇い続けた。

霧野との約束の為に。


でも、神童は気づいていない。

背後に居る男は、そんな神童の気持ちも前立腺のありかさえももう気づいていることに。


男は暫く神童の無駄な足掻きを楽しんでいた。
何かを待つように。
神童が小さな抵抗で快感に流されそうになるのを抗い続けすっかり体力を消耗させた頃、男は神童の口を押さえていた手を太ももに移動させた。
がっしりとしたその手は簡単に神童の腰の動きを封じてしまう。


「触って欲しいのはここだろ?
タクト君の腰振りダンス可愛かったぜ」


あんなに体力を消費して庇い続けたソコを男は簡単に暴いてしまった。
神童の口から絶望の啼き声が嗚咽と共に、静まり返った公園に響き渡った。


「いやだあああーっ、霧野ぉおおーっ」




 

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