SIDE浜野6



うわ、うわ、うわぁ……!
これってマジか…?
俺は自分の目の前で行われてる光景がどうしても信じられずに思わず自分の目をおもいっきり強く瞑った。


なんか速水が俺の前でストリップしてる気がするんですけど……?


真っ暗になった視界にさっきまでの光景を再度思い返して投影しても、どうしてもそうとしか見えなくて俺は頭を捻った。

だって、…え?
昨日のって、…え?
また、シてって、…え?

……またシて、本当にいいの?

速水の言葉を半信半疑で反芻しながらチラッと瞳を開けると、ストリップは縛ってる髪を解くシーンに進んでる。
うわっ!
ハラリと髪が速水の顔に掛かって、俺は慌ててもう一度目を閉じた。
うう、ヤバい〜!すっげードキドキするよぉ〜!!
普通にしてても速水ってすっげー可愛いし、色々シたくなっちゃうの我慢すんの大変なぐらいなのに、髪なんて解いた日にはそこに色っぽさまで加わっちゃうじゃんかぁ〜。
うう〜、ドキドキしすぎて心臓もちんこも破裂するぅぅ〜。


・・・って俺はバカだから、この時、正直浮かれてた。
またシて下さいって言葉も、もう二度と見れないだろうなって思ってたボタンを外す姿も、髪を解いたセクシーな格好も。
どれか一つでも舞い上がるには充分なのに、畳み掛けるように起こったらそりゃー間違いなく浮かれるって。
だって俺だもん。

だから速水がこう言ってくれて、漸く自分の愚かさに気づく事が出来た。


「アハッ、可笑しいでしょ?
怖くて足がずーっと震えたままなんですよ」

うっひゃーって目を瞑って、ぱっと見は困った風なポーズを取ってるものの、実際は浮かれまくってた俺は、自嘲気味な速水の呟きにハッとした。
目を開けると、速水は震える手で制服のズボンのフックを外そうと格闘していた。
ガチッって音が聞こえそうな勢いで外れたフックに、ストンと想定外のように床に落ちてしまったズボン。
それと、細かく震えてる速水の長い脚。


自分がどんだけ都合の良い事しか見えてなかったか、そん時に初めて気づいた。


俺が傍に居るだけで涙が止まらなくなっちゃう速水が、
俺から走って逃げた速水が、

なんで急にこんな風に俺を誘うような事を言い出したのかって事。


「俺…、いっぱい、いっぱい怖いんです」

泣きながら速水が自分のTシャツを捲り上げる。
白い肌に、ぴんく色したおっぱいがすっげー可愛い。
でも俺はその姿に興奮するよりも先に、頭の芯に冷や水をぶっかけられたような気分だった。

なんか…、今の言葉でフに落ちたっちゅーの?
速水の言葉に、多分こうなんじゃ?ってなんとなーく推測してたのが当たってたって納得できた。
「やっぱりな……」って。


やっぱり速水は、俺の為に自分の身体を差し出そうとしてる。


ヤバい……!なんか泣きそ…ッ。
震えながら自分の肌を見せる速水に、鼻の奥がツーンとしてきた。
なんか…、昔読んだ童話みたい…。
餓死しそうな旅人に何もあげられないウサギが火に飛び込んで自分を食べてもらおうとする話。
自分は何にも出来ないってすぐ悲観しちゃうところが速水っぽいよな。
そういえば、その話を聞いた時も親の膝の上で泣いちゃったっけ。

いくら自分が飢え死にしそうだからってウサギを食べたいなんて旅人も思ってないよ。死んじゃ駄目だよ!
って。

おんなじような事されて、俺もおんなじように感じてる。
そこまでしてくれなくていいよ…!
速水の気持ちを犠牲にしてまで俺を喜ばそうとしなくていいのに……ッ!
って。


「だから……。
怖くなくなるには昨日よりもいっぱいいっぱい……。

…エッチな事、沢山浜野クンにシて貰わないと、多分無理です……!」


速水の濡れた瞳がまっすぐ俺の方を見つめる。
ゴメンな、速水。
俺、自分の事ばっか考えてて。
思い返してみれば昨日俺がキレて襲うきっかけも、速水が怖がって俺にいつも以上にひっついてきたのが原因だったもんな。
怖いってずっと言ってたのに、それなのに俺は襲って二人の仲を気まずくさせただけだった。
そんな俺を速水は許して、平気なふりまでしようとしてくれたよな。
泣いちゃって逃げちゃったってだけで。
それなのに俺はそんな速水の気持ちなんて一切考えないで、自分が悪いのに一丁前にショックなんて受けて。

避けられる前に避けようなんて、速水相手に一番しちゃいけない事だったよな。


ただでさえ怖い状況なのに、いつも傍に居た俺まで居なくなったらもっと怖くなっちゃうよな。
そんな風に速水を追い詰める事したくないって思ってたはずなのに、気づかないうちにもうしてたなんて。

……ほんっっっと、俺って大馬鹿だなぁ。


「…悪りぃ」

心の底から、速水に謝りたいって思った。
怖いのに俺に身体を許そうとしたって事は、俺が離れていく事よりもそっちの方がまだマシだって思ってくれたって事だよな?
俺が友達じゃなくなっちゃうなら、自分の気持ちは犠牲にして俺を喜ばそうって。
それぐらい俺の事が大事って事だよな?


その気持ちだけで、俺は充分だよ。速水。


「昨日はあんな事言ったけどさ、あんなの一時のその場凌ぎでしかないじゃん?
今日はずーっと傍に居て、何が怖いのか、怖くなくなるまでちゃんと話聞くからさ。
俺たち、親友だろ?速水が怖いなら、俺はずーっと傍に居る。
ね、だから服着なよ。寒いっしょ?ね?」

俺は顔の筋肉だけでなんとか笑顔を作った。
もう俺が原因で速水を怖がらせる事は絶対しない。
それは自分を犠牲にしてまで俺と居る事を選んでくれた速水に対する、俺の決意だった。


俺がそう言うと、速水は緊張の糸が切れたみたいにがっくりと首を俯かせた。
床に着いた速水の手の前に、ポタポタッと涙が落ちて水溜りが出来ていた。

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