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――うう…、結局浜野クンのうちしか思いつきませんでしたよぉ〜……。

速水は通い慣れた浜野の家のインターホンの前で、二階にある浜野の部屋を見上げた。
何回も訪れた事のある浜野の家で、それでも速水はインターホンを押すのを躊躇していた。
やはり相談するなら親友の浜野であろうと考えた結果、こうして訪れたというのにだ。


だって浜野クンですよ!?
あ・の・浜野クンですよ!?
絶対面白がって色々してくる気がしてならないんですけど!!
胸は絶対見ますよ!!
そして揉む!!揉みしだく!!寧ろ搾乳する勢いで揉みまくりますよ!!
感触は絶対確かめますよ!!だって浜野クンですから!!
下手したら「母乳出るかも〜」って舐めるかも……!
ひぃ〜、「舐めるだけじゃやっぱ出ない〜」ってチュパチュパ吸うかもしれませんよぉ〜……!!


流石親友だけあって速水の浜野に対する人物像は的確だ(?)。
浜野は確実に「親友がある日突然女になった」ら面白がるに決まっている。
それこそベタな女体モノの漫画のようにエロい事を沢山しようとするだろう。
速水は細部までまるで見てきたかのように詳細に思い浮かぶ己の想像に蒼白になって唇を噛んだ。
でも、それでも速水は浜野の家を訪れた。
そんな浜野を百も承知で浜野の家を選んだのだ。
それは親友浜野への秘めた恋心のせい……。


・・・なーんてオイシイ展開には勿論ならず。
ただ単に家を知ってる相手で一番相談しやすいのが浜野ってだけで浜野家を訪れていた。
そう!浜野は面白がるだけで最後まではシない気がすると速水は睨んでいたのだった。


だって浜野クンと倉間クンと青山クン(サッカー部で自宅を知ってる友達、順不同)だったら浜野クンが一番お子ちゃまで性欲薄そうですし。
速水は「うんうん」と自分の冷静な判断に一人頷いた。


倉間クンは仲良い女の子とか居ないし(寧ろ女子と仲悪いし)、もし俺が女の子になっちゃっいました〜って相談したら免疫が無い分異様に興奮しそうですよね。(←ヒドイ)
そして嫌がっても無理やりシて、というか嫌がると寧ろ興奮して、そして終わった後に「なんだよ、お前だって感じてただろ」って平気で言っちゃう、女心をさっぱり理解出来ない無神経タイプに決まってますよぉ〜。(←ヒドイ二回目)
青山クンと浜野クンとでは少し悩んだんですが、なんだかんだで青山クンは好奇心が強いから俺が嫌がれば最初は何にもしなくても最終的には好奇心に負けて色々してくるに決まってますよ。(←ヒドイ三回目)
そして「ゴメン!少しだけいい?」って胸を見て、で「ゴメン!先っぽだけ、先っぽだけだから!」って結局最後は奥までズッポシ入れちゃう、人畜無害そうに見せかけたちゃっかりタイプに決まってますよぉ〜。(←ヒドイ四回目)


そこまで思って、速水は悲しい三択に俯いた。
少々自分の状況に酔ってるらしい。


本当は俺だって神童クンか一乃クンに相談したいですよ。
あの二人は性欲とか全く無さそうですし、襲うとかしなそうだし。
それになんと言っても二人とも腐っても元キャプテンですし。
でも神童クンちは遠いし(電車乗って痴漢にあったらどうするんですか!?)、一乃クンちは場所知らないし(一乃クンって何気に秘密主義ですよね!?あんま表情にも出ないし)
仕方ないじゃないですか!?


速水は再度浜野の部屋を見上げると小さく頷いた。
やっぱり相談できるのは浜野クンしかいない……!俺には浜野クンだけです……!
と、回りまわって調子よくそう思った速水は、決心が固まったのかインターホンに手を伸ばす。
あ、霧野が最初から候補にすら上がっていないのは、速水が霧野を嫌いな訳じゃなく、なんとなく霧野(れっきとした男なのに超女顔。というか既に女にしか見えない)に「女の子になっちゃった」と相談する気にはなれなかったかららしい。
寧ろ俺なんかが女の子になっちゃってスミマセンと霧野を思い浮かべただけで速水は謝りたい気持ちになっていた。


ぴんぽーん。
震える指でインターホンを押せば、どことなくカタカナってよりもひらがなに聞こえる暢気な浜野家の呼び鈴が鳴り響く。
そして直後に聞こえるドタドタドタッ!という階段を駆け下りる足音。
家の外に居る速水にまでしっかりと聞こえたその足音はまっすぐに自分の方へとむかっている。
そしてそのままの勢いで玄関のドアがバグーンッ!と開いた。


「うわっ、やっぱ速水だ!!
うっわー、ナニコレ!?マジすげー!!
え、ちゅーかなんで俺が会いたいって思ったの分かったの!?
え、え、もしかしてこれって運命なんじゃねーーー!?すっげーーーーー!!」


勢いよく飛び出してきた浜野は速水の姿を確認すると興奮して叫んだ。
そして呆然としている速水に飛びつくように抱きついた。
ぼよよよよ〜ん、と水着に包まれた胸が速水に当たって揺れる。


え、え、え……?

速水は思ってもいなかった事態に困惑して眼鏡がずり落ちる。
すごい勢いで玄関から飛び出してきた浜野は、一目で識別出来る程に女の子になっていた。
……はっきり言ってしまえば「胸」という意味で。
速水の三倍はあろうかという巨大な胸(推定カップG)をした浜野は、ぶるんぶるんのおっぱいを押し付けるように速水に抱きついている。
しかもその胸をアピールするかのように何故か水着姿だ。
ビキニのくっきり谷間がきらきらと眩しい。


な、なにこれ、で、出オチ……?

ずっしりと襲い掛かる敗北感に速水は、思いっきり「これが出オチならいいな」と現実逃避をしていた。
まさかの浜野大勝利な夏の日だった。

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