鶴正君は女の子!?



熱帯夜の為、窓を開けたままで寝てしまったのか、大きく開いた窓はカーテンがひらひらと翻り太陽光線を直接速水の顔に降り注ぐ。
まだ早朝だというのに、その光線はじりじりと殺人的な熱量を持って速水の顔を照らしている。

この部屋の主である雷門中サッカー部MF速水鶴正は、そんな太陽光線を一身に浴びながら寝苦しそうに寝返りを打った。


「う〜ん、うう〜ん。
ちょっ、浜野く…、重い…重いです、よぉ…。
なんで俺の上にワンダバと鬼道コーチを乗せるんですかぁ…?
意味が分かりませんよぉ…、ムニャムニャ…」

汗だくになりながら申し訳程度にお腹に乗っていたタオルケットを払いのけた。

「暑い〜〜。重い〜〜。
死ぬぅ〜〜〜」

うんうんと暫くは唸っていた速水だったが、あまりの暑さに結局は目が覚めてしまったようだ。
気だるげに枕に顔を埋めたまま、手だけを伸ばして充電機にセットしておいてケータイを手にする。
眼鏡も付けずに目を凝らしてケータイで時間を確認すれば、まだ7時前。
普段ならいざ知らず夏休みの今となってはまだ少し起きるには早い時間だ。

速水はもう一度枕に顔を埋めた。
埋めた枕は心なしかしっとりしている気がする。
湿った原因が自分の汗かと思うと、速水はげんなりしてもう一度寝る気分にもなれない。
むくりと起き上がると、中途半端な長さの髪が首に纏わり付いて暑苦しい。


――ふぁあ〜、あー…、髪切りたい。
でも美容院苦手なんですよね…。知らない人に色々言われるし…。
うー…、せめてシャワー浴びよ…。

はあ〜、と欠伸の後に盛大に溜息をついた速水はゆっくりとベッドから抜け出した。
立ち上がると全身がなんだか重たい。
くきりと速水は凝り固まった肩を鳴らす。
変な夢を見た原因はこのだるさかな、と速水はもう一度盛大に溜息をつくと眼鏡もかけずにボーッと風呂場へと向かった。


ぼや〜っと頭から温めのシャワーを浴びても速水の目は覚めなかった。
そのまま顔を洗ってもしゃきっとする事は無かった。
髪を洗っても、身体を洗い始めてもなんだか全身がだるくてやる気が出ない。
なんだか喉も痛いし、もしかしたら風邪でも引いたかな〜と速水が思い始めた頃だった。


速水が漸く自分の違和感に気付いた。


ん…?

身体を洗ってた手が止まる。
なんだかいつもと身体の感触が違う。
スポンジが身体の表面を動く軌道がいつもと少し違う気がするのだ。
いつもはもっとストンと洗えていてはず…。
それなのに今日は…。

速水は訝しげに自分の胸元を見下ろした。


あれ…?俺、太りましたかね…?

部活の後に買い食いするのは止めよう、と速水は思いながらまた呑気に身体を洗い始めた。

それは速水がしっかりと気付くにはあまりにも小さすぎる変化だった。
ぽっちゃりボディーで充分納得の代物だった。
むしろ天城の方が大きいんじゃね?と疑いのかかる一品だった。


でも流石にあるべきものが無く、何もないはずのところに出来ていれば寝ぼけ眼の速水でも奇声を発せずにはいられない。


あれ〜、でもお腹には特にお肉ついていませんね。おかしいなぁ〜。
なんて思いながら腹部を洗っていた時のことだった。
速水は贅肉どころか、「あるもの」が自分の目に入ってこない事に気が付いた。

んん?…アレ?ん〜…、おかしいですね。なんか俺のチンポが見当たらないんですけど…。

速水はあまりの出来事に、現実を直視出来ず、ソコから視線を逸らした。
いつもだったらまだまだ発展途上ながらもちゃんと大人の階段を上りつつあるニクイあんちくしょうがちょこんと鎮座しているはずなのに。
何故かさっきは最近生え始めたヘヤー(アンダー)しか目に入らなかった。
そんなちょろっとしか存在しない毛に隠れてしまう程、自分のエクスカリバーは小さかっただろうか?いや流石にそんな事はない。
速水はそんな悲しい自問自答をした後、恐る恐る再度ソコに目をやった。

ない。ない。ない。

何度見てもソコには何も無かった。
強いて言えば、毛に隠れてわれめちゃんが存在してるだけだった。

え、え、エエーーーーッ!!
これってなんですかぁーーーーーッ!!

速水は毛を掻き分け、ソコに手を伸ばした。


「あんっ」

……ッ!
速水は咄嗟に自分の口を塞いだ。
自分はただ目の錯覚じゃなく本当にソコにあるのか確認しようとしただけなのに、何故か自分の口からAV女優のような声が出るというショックな事が起きてしまった。
速水は体を洗い流すのもそこそこに風呂場から出ると、タオル一枚で自分の部屋へと逃げ帰った。
取りあえずどこか倒れても安全なところに行かないと。
速水はその一心で、自分の部屋へと逃げ帰った。
走るとパタパタと身体を覆うタオルが翻り、足の付け根が見え隠れする。
しかもそれが嫌でタオルをぎゅっと押さえれば、胸のむにょっとした感触が自分の手を慎ましく押し返してくる。


うわあああん、俺の体、女の子になってますよおおおおおお!!
お、お、俺ッ!
卒倒してもいいですかああああ!!


速水の悲しい絶叫が心の中で木霊した。



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