速水君は心配症



「はぁっ、…はぁっ、…はぁっ」

今日は部員全員で今後のことを話し合うというのに、速水は教師に呼び止められて大分遅れてしまった。
懸命に走って向かってはいるが、もう約束の時間は大幅に過ぎている。


「はぁっ、…すみません、おっ、遅れましたぁ」

息せき切って部室に駆け込むと、中に居た部員たちの視線が一斉に速水に集まる。


「うっ…ぁぁ〜」

その突き刺さるような視線に思わず速水は後ずさる。


「速水」

そんな速水に部長である神童がゆっくりと近づいてくる。

「お前が来る前に、もう話し合いは終わってしまったんだ」

速水の背中に手を回し、部室の中央へといざなう。


「熱い討論の末、最終的にお前に決まったんだぞ」

反対側から三国が同じように速水の背に手を回す。
促すようでいて、速水の動きを封じるような動き。
そして二人に誘導されて速水が部室の中央に来た瞬間、松風の場違いな程明るい声が響く。


「良かったですね、先輩!今日から先輩が皆の性奴隷に決まったんですよ!!」

「…は?」

予想外の言葉に思わず眼鏡がズリ落ちる。


「あっ、性奴隷っていうのはですね、躯を使ってご主人様を悦ばせる人の事を言うんですって!
俺も今日初めて知りました!!」

「そ、そうじゃなくて…」

松風の説明に困惑顔の速水に神童が事の成り行きを説明しだす。


「今俺達が最優先すべきはサッカーだ。
俺達の活躍如何で今後のサッカー界の明日が決まると言っても過言ではないのは分かるはずだ」

神童の真剣さに気圧されて速水がこくりと頷く。

「だが、俺たちは今性欲旺盛な中学生だ。
底なしの性欲を持て余す日もあるだろう。
そこでサッカーに随時集中する為、部に一人性奴隷を確保する事にしたんだ」

ええ〜、何故そうなる?

ここまでくると、いくら神童が真剣な顔をしていても頷けない。
だが、場の空気が速水に疑問を口に出させない。


「そこで誰を選出するかの話し合いがなされた。
そして決まったのが、お前だよ。速水」

いい話をした空気を醸し出して三国が速水の肩を叩く。
皆がその姿を見て、うんうんと頷く。
なんだか部員全員で性奴隷を素晴らしいものとする空気に持って行ってる気がする。


「速水、明日からやってくれるな?性奴隷!!」

その言葉にうっと詰まって、速水は部員をぐるりと見渡す。
・・・誰しもが速水が承諾する事を期待した瞳で見つめている。
能天気な一年コンビも、親友の浜野も、優しい先輩達も、そしてあの剣城でさえも、
自分をワクテカの表情で見つめているのだ。

――もう自分には断ることなんて出来ない。


「わ、…わかり、ましたぁ…」

小さく答えると、部室がわっと歓声に包まれる。

「じゃあ、速水先輩!早速ですけどお願いします!!
俺、経験無いんで先輩がリードして下さい!」

「えー、ズルいよ天馬ぁ!僕も今お願いしようと思ったのに〜」

「おいっ、先輩を差し置いて何言ってるんだ!まずは俺の暴走特急を鎮めるのが先だ!」

「いや、俺が!」「いやいや俺からだ!」「ふざけるな!俺が一番だ!」・・・・

 
 「「「さあ、俺とシようぜ!!」」」





「っていう夢を見たですよぉ」

「夢オチかよ!」

「そうは言うけど、俺本当にこんなことになったらやっぱり断れないですよぉ〜。
性奴隷になって皆に毎日ぐちゃぐちゃに犯されちゃいますよぉ〜。
助けて浜野くぅん〜」

「うん、そんなことアリエナイから心配しなくて平気じゃね?
ちゅーか、お前一回シコれば悩み解消すると思うぞ!」



 

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