SIDE速水3*
ど、ど、どうしよう…。
こんな事までされると思ってませんでした。って言っても平気かな?
だってこんなの、おかしくなる。
頭がおかしくなっちゃいますよぉ…っ!
「うっ…く、――…ンッ」
浜野クンが俺の体の至る所にキスを落としていく。
浜野クンの納まりの悪いくせッ毛が俺の肌を擽って、
浜野クンの吐息が俺の肌に掛かる。
その度にその後に続くキスに身構えてしまう。
そしてキスが降ってくると勝手に体がピクンって浜野クンに反応してしまう。
これが『オナニーの手伝い』!?
こんなオナニーなんて、俺、シた事なんてないですよぉ。
体中がさっきから熱くて堪らない。
熱でどうにかなってしまう。
浜野クンが両手を広げた時は、
「ああ、俺を抱きかかえてするんだ。
俺の顔を見ないでシた方が浜野クンにとって都合良いし」
って思った。
だから少しでも沢山触れたくて、不審に思われるのを承知で頬ずりしちゃったのに。
「触れるよ?」って言われた時も、
「ああ、少しでも早く終わらせたくてすぐ触るんだ」
って思った。
それが切なくて、堪えきれないで吐息が漏れてしまったのに。
でも、浜野クンが触ったのは俺の唇だった。
どうして?って頭が混乱する。
「脱いじゃおっか」って言われた時も、制服のズボンの事だと思った。
それなのに脱がされたのは上着で。
俺の頭はどんどん混乱してぐるぐるしてくる。
どうして?どうして!?
どうして浜野クンはこんな事をするんでしょうか?
「速水ぃ〜、気持ちくなってきた?」
くにくにと俺の胸の先に触れながら、浜野クンが俺に覆いかぶさって囁く。
恥ずかしくって横を向いてるのに、俺に覆いかぶさってる浜野クンの影はどうしても俺の視界に入ってくる。
すぐそこに浜野クンの体温があるって教えてくる。
「――…ふッ」
変な声が出るのを我慢出来なくて、俺は必死で口を押さえる。
自分でスる時に声なんて出ないのに、浜野クンに触れられてると思うと抑えようと思っても息と一緒に小さく漏れてしまう。
チラリと浜野クンを見ると、俺を見ながら「…ハァッ」って息をした。
どうしよう、どうしよう!?
浜野クンも興奮してるように見える。
俺に興奮してる、とか…アリエナイ…ですよね?
「〜〜〜ッ!もぉ…やッ、で、す…よぉ…−ッ」
そんなのアリエナイのに快感でいつもより200%増で馬鹿になった心は、勝手にそう判断して喜んでる。
その喜びが気付かない振りをしていた気持ちをどんどんはっきりしたモノに変えていく。
ずっと、ずっとこうしてたい。
いつも、いつもこうして欲しい。
浜野クンがすごく…好き、です。
もし、もしかしてだけど本当に万が一にもアリエナイけど。
もし、本当に浜野クンも少しは俺に触れて、その……興奮?…してくれてるなら。
もっと、触ってほしい。
その…、俺と繋がってもいい、って浜野クンが少しでも思ってくれるぐらい…。
「もぉッいい、ですってぇ…ッ!」
俺はぐいって覆いかぶさってる浜野クンの胸を両手で押し返す。
ハッとした表情の浜野クンの顔と目が合う。
ドッドッドッって心臓が煩い。
どうしよう、こんなんで上手く言えるでしょうか?
「あの…ですね。
あの…こっち、…をその、ですね…さっ、さっ、触ってくれませんかぁ?」
浜野クンの反応が怖くて目が開けられない。
こんな風に自分から脚を広げるなんて、恥ずかし過ぎる。
しかもフシダラなお願いまでして。
俺は膝を立てた状態で少しだけ開いて、触って欲しいところの近くを隠した。
膝が内側に倒れてるし、手で隠してるのは本当に触ってほしいところよりも大分前だけど、俺にとってはこれでも死にそうなほど勇気を出して言った言葉だった。
だってソコも浜野クンに触れて欲しい。
あんまり詳しくないけど、俺だってなんとなく分かる。
…男同士がどこを使うのかぐらい。
もし、浜野クンがソコに触れてくれて。
もし、浜野クンも少しでも興奮してくれてるなら。
恥ずかしいけど、お願いしてみようって思うから。
「俺に挿入れて下さい」
って。
こんなチャンス多分二度とない。
俺からお願いして、俺のためにしてくれた事なんだから気にしなくていいですよ、
って言えば浜野クンももしかしたらOKしてくれるかもしれないし。
「…そっか。…そうだよな」
「……?」
浜野クンの呟く声が聞こえて、俺はそろりと目を開ける。
目を開けても浜野クンは前髪をくしゃりと掴んでて顔が見えない。
「悪い、悪い。俺、気付かなくって。
ちゅーか、こんなん余計だったよね。
…もう終わらすから、速水は目ぇ瞑っててよ」
そう言うが早いか、浜野クンは一気に俺の制服の下を下着と共に脱がした。
見なくてもぶるんと下着から勢いよく俺のソレが飛び出したのが分かる。
いきなりの事で顔がカッと熱くなる。
「あー…、もう充分勃ってるねー。
ちゃんとえっちぃ気持ちになれてたんだ、良かったぁ!」
浜野クンが俺の膝に手を置いて、俺の決して大きいとは言えないソレを覗き込んでくる。
う〜…、恥ずかしくってトびそう。
手なんかじゃ足りなくて、俺は両腕で真っ赤になった顔を隠す。
「じゃあもう怖くないよね」
浜野クンの言葉と共に、俺のアレが何かに包まれる。
暖かくって、大きくって、多分浜野クンの手だ。
ひくんって腰が跳ねる。
「…ちゅーか終わり、だね」
「アッ、アッ、アアッ!はまのクッ、…はまのクンッ!ダメッ、ダメッ!ダメェエエッ!!」
浜野クンの手がいきなり激しく俺のを擦り上げる。
俺の腰が引き上げられてるみたいに勝手に浮いてしまう。
いきなりの強い刺激なのに、くちゅくちゅくちゅって音をたてて俺の体は悦んでいた。
恥ずかしい!恥ずかしい!!
急速に何も考えられなくなっていく。
「ヒィアアッ、…だ、ダメェエエッ!!」
ビュクン、ビュクンって堪える暇もなく解放感が襲ってくる。
「あ…あ…ごめ…ッ、ゴメン!手、にっ…アアッ」
我慢とか、途中で止めるとか、勿論出来なくて。
謝ってる間にも、浜野クンの手に出続けている感覚は止まらなくって泣きたくなる。
ピーンと浜野クンの手に押し付けるように張っていた腰も、射精が収まると漸く力が抜ける。
へなへなとベッドに腰が沈み込んでも、俺は恥ずかしくって顔を隠している腕を外せない。
少し冷静さを取り戻した頭が、「馬鹿、馬鹿!勝手に一人で盛り上がって!!
浜野クンを誘うのはどうしたんだ!!」って叫んでる。
「は、浜野クン…」
恥ずかしいけど、ここからなんとか浜野クンも…と思って、俺は顔から腕を除けた。
「俺帰るね」
でもそこに居た浜野クンは誘うどころか、興奮なんてちっともしてなかった。
浜野クンはティッシュで手を拭いただけで、もう普段と同じ姿になっていた。
自分の姿を見ればほぼ全裸で、それどころかペニスの先は濡れてさえいるのに。
浜野クンは部屋に入ってから今まで、全然格好が変わってない。
そのまま外にだって学校にだってどこにだって行ける。
いつもと全く変わらない格好だった。
「じゃあまたね」
こっちを見ないで浜野クンがドアに向かう。
急に現実が降り注いできて、胸が重い。
浜野クンが行ってしまうのに止める事が出来ない。
浜野クンはどこにでも行けるけど、俺はこんな格好じゃどこにも行けない。
浜野クンはいつもどおりでも、俺は違う。
このなの…、こんなの酷いですよぉ…っ!
俺だけ好きにさせといて、浜野クンは変わらないなんて…。
……酷すぎますよぉっ!!
俺はぎゅっとみっともなく開いていた脚を抱えた。
みっともなく泣きそうな顔をその膝に押し付けて。
胸が苦しくて、少しでも軽くなるかと息を吐き出したら一緒にポロンって涙が零れた。
もう、顔なんて上げられない。
俺はドアがパタンって音を立てても、そのままで居た。
玄関が開く音が遠くでしても、そのままで居た。
動く事が、出来なかった。
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