SIDE浜野3*





頭が沸騰する。


目の前で速水がゆっくりと制服のボタンを外していく。
詰襟のフックが外れて、細い首が露になる。
首ぐらい部活で腐る程見てるはずなのに、信じられないくらい興奮する。
きゅっと締まっていた詰襟がカチっと外れて、中に詰まってた俺を興奮させるガスみたいなもんが溢れてきてたりして。
ボタンを外したって白いインナーが見えるだけだってのに、ヘア丸見えのグラビアなんかよりよっぽど興奮してしまう。

速水が脱いでるってその事実だけで、俺は死にそうなぐらい興奮してしまう。

やっぱ速水は学ランの中に俺を興奮させるガスを仕込んでたんだ。
マタタビみたいな、人を酔わす神経性のガス。
くらくらして何も考えられない。


「俺に触って下さい…。
…お願い、全部忘れさせて」


あ、仕込んでんの学ランの中じゃない。
速水の体の中だ。
言葉が、息が、速水の全てが俺を酔わせてく。
あ〜、今なら酒に溺れる馬鹿な大人の気持ちがすっげー分かる。
俺も今、速水に溺れてる。


速水が忘れたい「全部」の中に、多分俺も含まれてるだろうって事も。
俺が苦し紛れに吐いたくっだらない言い訳も。
こんな事して明日っから俺達どうなるんだろって事も。

そして俺の事をふるふると恐怖に震えながら拒絶した速水の事も。


速水から出る神経性のガスが麻酔みたいに俺の痛みを和らげてくれる。
もっと速水に酔ってしまいたい。
ちょっとやそっとの麻酔じゃ、この胸の痛みは消えそうにない。
俺を押し返した速水の震える手を消してくれない。


「はっやみー」

両手広げて名前を呼べば、きょときょとと瞳を彷徨わせてからおずおずと自分から俺の胸に納まってくる。
あー、ヤバ。
速水のガスは麻酔効果だけじゃなく幻覚も見せるらしい。
ちょっとだけ真っ青になっていた速水の方が夢だったように感じさせてくれる。


速水が俺の肩にすりって頬ずりしてから顔を上げる。
上気した頬。恥ずかしそうに噛んだ唇。
むあってもっとガスが色濃くなる。

「触っちゃうよ?」

俺が聞くと、はあって速水の口からまたガスが吐き出される。
俺はその唇をそっとなぞった。

「…、んッ」

多分この口に直接口を重ねたら、俺はもっと酔えるんだろうな。
ちゅーか、そんなん出来ないけど。

これはあくまで「速水のオナニーの手伝い」であって、「セックス」じゃない。
俺が気持ちくなっちゃ駄目だし、キスなんてもっての他だ。


俺が少しだけ口腔に指を差し入れると速水は少し顔を傾げて、おずおずとその指に舌を這わせた。
「こうですか?」って俺に窺うみたいに見つめてくる。
ヤバ。
温かい速水の唇に指が包まれて、一際皮膚の薄い爪の間をチロチロと舐めてる。
速水の様子だけでも相当キてるってのに、ゾクってする程気持ちイイ。
俺は慌てて指を引き抜く。


「んじゃ、脱いじゃおっか」

俺は自分が感じてしまった事を誤魔化すように速水に明るく言った。
こくりと頷く速水の腕から、学ランを脱がす。
続けて白いインナーも。
上半身裸になった速水はベッドの脇の床にちょこんと座って、恥ずかしそうに手を交差させて胸を隠した。
ナニコレ。
想像してた時の何万倍も実物の方が可愛い。
ちゅーか、本当にコレ現実なのかな?
なんだか速水のガスのせいでどんどん現実味がなくなっていく。
あー、本当、全部夢だといいのに。
本当の俺は速水に鍵を渡して、そのまま家に帰って、
今、俺は速水に触れた手でオナってるところ。
これは全部俺の妄想で、速水を抱き締めてしまったのも、速水を怖がらせたのも全部そんな事全然無かった。


「照れてんの?かっわいー速水」

俺はぐいって速水の腕を引く。
ちょっとずつ大胆になってく俺の行動。
俺はベッドに速水を押し倒すと、上から覆い被さった。
酔い過ぎて、酩酊状態なのかも。
もう、痛みよりも興奮の方が勝ってる。

「いっただきまーす」

ベッドに横になってもまだ手で胸を隠している速水の肩に顔を寄せる。
くんくんって匂いを嗅げば、ドキドキするくらい速水の匂いだった。
これが速水のガスの正体なのかな?
堪らない気分になって、俺はぺろりと速水の首を舐めてみる。

「〜〜ふ…っ、く」

声が出そうになって我慢してる速水がめっちゃ可愛い。
胸を隠してた手の片方で今度は口を隠してる。
我慢しても声が出ちゃうくらい速水を感じさせたい。
今度はかぷって速水の肩を噛んでみる。

「んっ」

ぴくりと体が揺れて、顔を隠すように俺から少しだけ顔を背けた。
可愛い、可愛い!
唇にキスは駄目だけど、これぐらいはギリOKかな?
俺は速水の首にちゅっと唇を寄せた。
軽い口付け。
でもこれが今、俺が出来るギリギリの愛情表現。
ちらりと速水を見ると、目をぎゅっと瞑って頬を少し赤くしている。


――良かった、今度は拒絶されずにすんだ。


ほっとした俺は調子にのって速水の体の至るところに口付けを落とした。
ちゅっと音を立てて唇で触れる度、ぴくりと小さく体を揺らす速水が可愛くて。

……嬉しかった。


 

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