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うさつるまさはゆっくりと浜野クンのベッドに近づいていきます。
鼻の詰まった浜野クンはズピー、プピー、と汚い寝息を立てています。
しかも寝相も悪く片足がベッドからはみ出しています。
うさつるまさはそっと浜野クンの脚をベッドに戻します。
温くなってしまった濡れタオルを洗面器でまたぎゅっと絞りなおします。
冷たいタオルをオデコに乗せると浜野クンは気持ちよさそうにむにゃむにゃと身じろぎます。


――ああ、やっぱり好きだなぁ。


うさつるまさの眼からぽつりとタオルに涙が落ちてじんわりと染み込んでいきます。

浜野クンがどんなに格好悪いイビキをかこうが、
浜野クンが寝相が最悪でいつも最初は抱き合って寝ても朝には布団を独り占めするような人でも、
うさつるまさは浜野クンが大好きだったのです。


他に何人も愛人が居たと分かってもそれは変わりませんでした。


ぽつ、ぽつと降りだした雨のようにうさつるまさの涙が浜野クンに降り注ぎます。

「ん…?アレ、つるうさぁ?」

降ってくる涙に浜野クンが目を覚まします。

「ふぇっ、ご、ごしゅじ…さまぁ」

うさつるまさはこんな風に泣いたら浜野クンに疎まれると思って一生懸命涙を拭います。
でも、次から次へと涙が溢れてきて自分でも中々止めることが出来ません。

「もしかして不安になっちゃった?
大丈夫だって!こんなのすーぐ元気になるってば」

浜野クンが安心させようとうさつるまさの手を握ったりするから、余計うさつるまさの涙は止まりません。
中々泣き止まないうさつるまさに浜野クンも怪訝そうです。

「どーしたん?もしかして神童達と何かあった?」

ついに起き上がってうさつるまさに訊ねます。
浜野クンの口から出た神童サンの名前が苦しくて、うさつるまさは首を振ります。

「イイ奴らだったっしょ?」

ニコヤカに言う浜野クンにうさつるまさ限界を迎えました。
うさつるまさは浜野クンに抱きつきます。

「ご主人様ぁ!!」

「うわっ、何、急に」

「ご主人様、ご主人様!
俺、俺…、俺はご主人様が居ないと駄目です!!」

普段のうさつるまさからは考えられない程の熱烈告白に浜野クンは呑気に
「へへ〜、こんな風に言ってもらえるなんて偶には風邪引いてみるもんだなー」
なんて思いながらうさつるまさを抱きしめ返していました。
ですが、うさつるまさの続けた言葉に浜野クンも流石に眼を剥きます。


「俺、ご主人様に何人愛人が居ようと、ご主人様の傍を離れません!
他の人がどんなに魅力的でも、俺が一番ご主人様の事を愛してるって自信あります!!」

「えっ、ちょっ!?何、愛人って?
ちゅーか、俺って愛人が何人も居たの!?」

「しらばっくれないで下さい!!
三国サン達なんて子供まで産ませたくせに!!
ご主人様が巨乳好きのメンクイだってもうバレてるんですよぉ!!
雄も雌もショタもいける守備範囲が半端無い人だってもう知ってるんですよぉ!!」

うさつるまさの暴言に浜野クンは呆然となってしまいます。
抱きついてるうさつるまさを引き剥がしてまじまじとその顔を見てしまいます。
何をどうすれば浜野ファームのメンバーが全員愛人だと思い込んでしまったのか皆目見当もつきません。
浜野クンは慌てて否定します。


「ちょっ、ちょっ、ちょーっと待って!
俺、愛人なんて居ないって!
俺にはつるうさだけ!!誓ってもいい!!」

「じゃあ、ファームの皆はなんなんですか!?
俺と同じくご主人様のペットじゃないんですか!?
ペットはご主人様を癒すのが仕事じゃないですか!!」

逆ギレっぽいうさつるまさの言葉に浜野クンははぁーっと溜息を吐きます。
まさかうさつるまさがそんな風に自分を思っているとは思わなかったのです。


「ちゅーかさ、俺、そもそもつるうさの事ペットって思ってないんだけど」

「え…っ、じゃあ俺はもしかして農場に住み着いてる大食漢の厄介者ですか!?」

「なんでそうなる!
そうじゃなくって、つるうさは俺の家族でしょ?
ちゅーか、つるうさもそう思ってるとばかり思ってた。
『ご主人様』とか呼んでるし」

そう言うと浜野クンは恥ずかしそうに笑いました。


「あー、なんかカッコ悪くね?
俺一人で『ご主人様』=『だんな様』とか『あなた』とかって意味に取ってたとかさ」

「ご主人様…」

「だからさ!今度からはつるうさもそう思っててよ。
俺がご主人様で、つるうさが奥様。
ね!それでいいっしょ?」

それは浜野クンのプロポーズの言葉でした。
いや、お前ら男同士だろ!とかいや、お前ら人間とウサギだろ!ってツッコミは愛し合ってる二人には野暮ってものでした。

少なくともうさつるまさにはそういうツッコミは頭の中に微塵も存在しないようです。
うさつるまさは浜野クンの言葉に感極まったように浜野クンを見上げます。

「ほ、本当ですか…?
俺が奥様でご主人様は本当にいいんですか…?」

「もち、もち!
つるうさしか考えられないもん、俺の奥さんはねー」

浜野クンはうさつるまさをベッドの上に抱き上げます。

「ね、俺の奥さんになってくれる?」

浜野クンが楽しそうにうさつるまさに訊ねます。
もう、浜野クンはうさつるまさの返事が分かっているみたいですね。
感激した顔のうさつるまさに顔を綻ばせると、ぺろりとうさつるまさの目尻の涙を舐めます。
幸せな二人に涙は似合いません。
少しの誤解もありましたが、二人はこれからも幸せに暮らしていくことでしょう。
なにはともあれ、ハッピーエンドです。




「嬉しいです、ご主人様ぁ!
俺、立派に正妻の座を勤めてみせますね!!」

ん?正妻?うさつるまさはまだ誤解が解けていないようです。

「俺、ご主人様に愛人が沢山居ても負けません。
だって俺がご主人様の奥さんなんですから!!」

「だから、違ーう!!」


 HAPPY END

 

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