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「お腹空いたド!浜野は何やってるド!?」

「ぬぉおお、俺も腹が空いたぞ!飯はまだかっ!?」

牛舎の中から聞こえてきた大声に小心者のうさつるまさはびくりと体を竦ませます。
ですが神童サンは喧しく騒いでいる二匹の牛にくすりと苦笑しながら挨拶をしました。


「遅くなってスミマセン。
今日は浜野が風邪でダウンしているので代わりに俺達が来ました」

堂々と牛舎に入っていく神童サンの後にうさつるまさは慌てて続きました。
一緒じゃないととてもじゃないが中に入れそうに無かったからです。
うさつるまさは三年牛ズの食事の準備をする神童サンを手伝いながら、チラチラと先程まで騒いでいた二匹をチラ見します。


――うわぁ、声が大きい牛さんと体が大きな牛さんだぁ。
なんだか…こ、怖いです。
ご主人様ってばストライクゾーン広すぎですよぉ!


「なんだ浜野は風邪か。
それなら自分達の事は自分達でどうにかしよう。
神童、柵を開けてくれるか?」

「はい、お願いします」

うさつるまさが色々と失礼な事を考えていると、奥からもう一匹牛が出てきました。


――う、うわっ!おっぱいデカッ!!

他の二匹に比べて柔和な雰囲気なその牛は、まさに爆乳としか言い様が無い程のたわわなおっぱいをしていました。

「絞った牛乳だけ後で取りに来てくれるか?
母屋に届けておいて欲しい」

「分かりました」

その言葉にハッとして残りの二匹を見ると、やはり爆乳でした。
三年牛ズは雌牛だったのです。
なんと、ここにきてニーズのあまり無いであろう謎の女体化です。
どうせなら速水とか霧野とかさぁ!と思っても後の祭りです。
しかも搾乳が出来ると言う事は、つまりそういう事です。
三年牛ズは皆既に純潔乙女どころか色々経験しちゃったジューシー熟女だったのです。
こんな展開、誰も期待していない事でしょう。

うさつるまさもショックを受けたみたいです。


――ぎゅ、牛乳って事は赤ちゃんを産んだ事があるって事ですよね…?
それって…、それって…、それって…っ!!

うさつるまさの頭の中にぽわわーんと浜野クンが三国サンの巨乳の胸に顔を埋めている図が浮かびます。


「ふぇっ」

その想像はずっと堪えていたうさつるまさにとってトドメでした。
うさつるまさは餌である牧草を抱えてしゃがみこんで泣き出してしまいます。

「ど、どうしたんだ急に!?」

「多分、浜野の事が心配なんだと思います。
彼は浜野の恋人ですから」

塞ぎこんだうさつるまさには、三国サンと神童サンの話し声も耳には入りません。
ご主人様が子持ちだったなんてと、止め処なくこみ上げてくる涙を拭うばかりです。


そんなうさつるまさの背をそっと誰かが撫でます。

「ここはいいから、お前は早く浜野のところへ行ってやれ」

うさつるまさが牧草を髪やもこもこの毛皮に絡ませた頭を上げると、そこには優しげな三国サンが居ました。

「そうだな。ここは俺達に任せてお前は浜野の看病を頼む。
アイツを一人にすると調子に乗って変な事をしでかすかもしれないからな」

神童サンも優しく言います。
でも、そんな二匹にうさつるまさはもっと涙を溢れさせるのでした。


――おっぱいとか顔とか知性とかチャームポイントがちゃんとあるのに、その上優しいなんて、俺…、俺…、こんなの勝てる訳無いですよ…。
お終いだぁ…。


何を言ってもぼろぼろと泣き続けるうさつるまさに三国サンも神童サンも困り顔です。
そこへ一匹の馬さんがやってきました。
やっと登場。錦馬サンです。


「なんじゃ、なんじゃ。湿気た顔しとるのぉ!
よっしゃ!わいが浜野のとこまで送っていくきぃ、早く負ぶされ」

いきなりの登場にビックリしているうさつるまさを無理やり背負うと母屋に向けてすごい勢いで走りだしました。
そして有無を言わせずうさつるまさを母屋に押し込めるとニコヤカに帰っていきます。

「じゃ、浜野の事、宜しく頼むきのぉ!」


こうしてうさつるまさは浜野クンの元に戻ってきました。
一乃、青山は放置のまま、このまま話はエピローグを迎えそうです。
ちなみに二人はネズミです。
天井裏からいつも二匹で皆を見守っている情報通の解説者枠でした。


 

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