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ウサギには所謂発情期と呼ばれるような特定の短い期間はありません。
人間と同じようにほぼ一年中が恋の期間です。
その為うさつるまさも一年中、というか毎日のように浜野クンとイチャイチャ出来ているのです。
ですがそれでも野生の本能なのか一年のうちで一番繁殖に適した季節を迎える前は、どのウサギも伴侶を求めてソワソワしだします。
うさつるまさも例外ではありませんでした。
春が近づいてくるとソワソワしだし、どんどんと感情が剥き出しになっていくのです。
――寂しいとウサギは死んでしまう。
そんな迷信そのままに、うさつるまさはいつも以上にネガティブに寂しがりやになっていきます。
そしてその感情が爆発すると、こうなるのです。
「はぁっ、はぁっ、…もっとぉ、もっとぉっ!
ご主人様が全然足りないんですよぉ…っ」
朝から既に三回も浜野クンに注がれているというのに、うさつるまさはまだ足りないと頭を振ります。
頭の後ろのビッグツインテールは、シーツに擦れて無残に解け縺れています。
啼きすぎて声は掠れ、目元には涙の痕が残っています。
体は更に酷い有様です。
普段身に纏っているもこもこの毛皮は脱ぎ捨てられ、今、毛で覆われている部分は長い耳と尻尾だけです。
その代わり、すべすべとした肌の至るところに赤い斑点模様が出来ています。
浜野クンに体中を吸われ、うさつるまさは最早ウサギだか豹だか何の動物か分からないような姿になっています。
なだらかな腹部の窪みには、白くねばつく体液を湛えています。
それは今も浜野クンが突き上げる度に、くぷっくぷっとうさつるまさのペニスから溢れ続け、うさつるまさのお腹を汚します。
汚れているのはお腹だけではありません。
顔にも、ぷっくりと腫れてしまった桜色の乳首にも、うさつるまさの淫らな体液は飛び散っています。
うさつるまさは淫乱で絶倫なウサギの本能そのままに、浜野クンの倍以上は精液を吐き出しているのです。
それでも身体を清める暇さえ惜しむ程、うさつるまさは浜野クンを求めてしまいます。
最初は視界に浜野クンがいれば平気だったのに、
その視界もどんどん狭まって、触れていないと寂しくなって、今では繋がっていても満足なんて出来ません。
浜野クンが居る実感が欲しくて、身体に強い感覚が欲しくて仕方ありません。
それは強ければ強いだけ、うさつるまさにとっては嬉しいものでした。
そう、強ければなんでも良かったのです。
快楽でも、痛みでも。
「おねがっ!…ごしゅじっ…さまぁ、噛んでっ!
つるうさの、おっぱい…か、んでぇっ」
「ええっ!?」
吸う、舐めるから噛むに変わったうさつるまさの要求に浜野クンは思わず聞き返します。
うさつるまさの淫らな痴態に煽られ、激しく責め立てていた浜野クンも流石に既に赤く腫れている乳首を噛むことに躊躇してしまいます。
戸惑い勢いが弱まる浜野クンに焦れたようにつるうさはもっともっとと激しさを求めました。
「痛く、してぇ…!
ふぁっ!…つるうさ、はぁ…、んっ、ごしゅじん様のものだって、…いっしょぉ消えない痕…つけてくださぁ…ぃ」
そう言うとうさつるまさは顔をくいっと上げます。
露になる細い首は、まるでここを絞めてくれと言わんばかりです。
「〜〜〜〜ッ!」
浜野クンは頭を掻き毟ります。
いくら可愛いつるうさのお願いでもそんな事はしたくありません。
「ちゅーか!」
苛立ったように浜野クンの手が握り拳となってベッドのマットレスに沈み込みます。
そしてぐいっとうさつるまさを抱き起こします。
座って向き合うような体勢で浜野クンはうさつるまさを抱きしめます。
「そんな傷無くっても、俺のこと感じてよ!
俺がこんなに傍に居んのに、傷なんかで俺を感じるなんて寂しいじゃんか!」
ぎゅうっと浜野クンはうさつるまさを抱きしめる腕に力を込めます。
うさつるまさの細い体はすっぽりと浜野クンの腕の中に納まり、どこもかしこも浜野クンの肌に密着しています。
浜野クンの温かさがうさつるまさに伝わります。
「ご主人様…」
その温かさに、今まで強張っていたうさつるまさの体が少しずつ溶けていきます。
「ほら、分かる?
俺がつるうさをぎゅってしてて、つるうさも俺の事ぎゅってしてる。
……ここでさ」
浜野クンが二人を繋いでいる部分をつうーっとなぞります。
そこはうさつるまさの孔の淵であって、浜野クンの屹立でもありました。
「…ふっ、くぅ…ん」
「あっ、今、中がきゅうって動いた。
ほら、痛くしなくたって俺の事感じられるじゃん」
「…あっ…あっん、…ご、しゅじん様ぁ」
体を密着させたまま、浜野クンがうさつるまさの耳元で囁きます。
また、きゅうってうさつるまさは自分の中が蠢くのを感じました。
「俺は動かなくたって、つるうさ感じてるよー。
きゅうきゅうって俺に絡み付いてきて、俺の精子が欲しいよーってつるうさの中吸い付いてきてるもん」
「…あっ、あぁぁんっ」
浜野クンの息が掛かる耳元も、繋がった部分も熱を孕んでひくひくと収縮していきます。
「つるうさん中、めちゃくちゃ気持ちイィ。
これだけでイっちゃいそ…っ」
浜野クンの欲望を滾らせた瞳とうさつるまさとが至近距離で目が合います。
どくんと浜野クンの屹立が脈打ちます。
「んあっ!おっき、く…うぅんっ!」
その途端一際大きな快感の波がうさつるまさを襲いました。
質量を増した浜野クンのペニスがごりっとうさつるまさの前立腺を押しつぶしたのです。
ぎゅうっとしがみ付いても、どくどくっと腰の奥から逃しきれない程の快感が競り上がってきます。
「…アッ!アッ!…う、うそっ、嘘っ!?」
ぞくぞくっと腰の奥からゆっくりと自分を呑み込んで行くのは確かに絶頂感でした。
でもそれは今まで感じた事が無い程、ゆっくりとそれでいて大きな快感の波でした。
浜野クンは全く動いていないのに、今、うさつるまさは迫り来る快感の波に飲み込まれようとしているのです。。
うさつるまさは初めての感覚に、ふるふると涙を浮かべて首を振ります。
それに飲み込まれてしまったら、うさつるまさは自分がどうなってしまうのか分かりません。
その未知の感覚が怖いのに、自分の身体は止まる術をしらずに絶頂へと確実に昇り詰めていました。
「…一緒にイこ?」
浜野クンに熱っぽく囁かれた瞬間、うさつるまさはまた限界ぎりぎりの前立腺をどくりと押されたのを感じました。
そして直後にびゅくりと中に溢れる熱。
「あっ、あっ、…ああぁぁぁっ!」
勝手に声が漏れます。
脚だって腰だって勝手にびーんっと突っぱねてしまいます。
何かに掴まっていないと自分がどうにかなってしまいそうです。
いえ、もうどうにかなっているかもしれません。
だってうさつるまさは頭が真っ白になる程、浜野クンを感じていました。
というより全身が浜野クンしか感じられません。
うさつるまさは初めて射精を伴わない絶頂を体験していました。
それは前立腺が浜野クンによって刺激されて活発化した証拠でした。
……体内で浜野クンをちゃんと感じていたという証拠でもありました。
そしてそれは体内に感じる温かい体液と共に、痛みよりも、消えない痕よりも、浜野クンの愛をうさつるまさに教えてくれました。
「つるうさが俺の愛をちゃんと感じてくれて嬉しーっ!」
暫くお互いがくったりと支えあうように凭れ掛かっていた後、浜野クンは嬉しそうにまだ息の荒いうさつるまさに顔を寄せます。
うさつるまさが浜野クンと長い長いキスを終えた時、きっとうさつるまさの中の不安は消えていることでしょう。
不安に満ちた繁殖期の初めの時期は終わりを告げ、
長い長い恋の季節を迎えたのです。
第二話 完
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