1、Side I 1



1、Side I






「俺達の分も頑張ってくれよな」

そう言って笑みを浮かべる顔が痛々しくて、俺は視線を逸らした。


こうやって置いていかれる辛さは俺が一番分かっているのに、
この事態を招いた責任の一端は俺にあると思うとやり切れなかった。
置いていく方も辛いということを初めて知った。



今日宇宙人が攻めてきて、俺はその戦いに間に合う事は無かった。



怪我。病院。ベッド。松葉杖。
乾いた空気にどこへ行っても付いてくる消毒液の臭い。
ここは大っ嫌いなものが多すぎて、嫌になる。
でも、一番嫌なのは目の前で繰り広げられる光景だ。


少し前の俺とそっくりな状況で、俺じゃない奴が俺達に笑ってる。


宇宙人とのサッカーバトルに敗れた雷門中サッカー部は、沢山の怪我人を出した。
それこそ先に襲われた木戸川清州と同じように。
俺が着いた時にはどちらももう宇宙人の姿さえ無くて、
ただ傷つき倒れている友人を呆然と見つめるぐらいしか出来なかった。


「宇宙人なんかに負けるなよ!!」

宇宙人と戦う為に出発しようとしている俺達に、半田は明るく励ました。
病室の中で一番明るい声をしていたのは、怪我をした半田だった。
見舞いに来た俺達よりも誰よりも半田は明るかった。
無口になる影野なんかとも、悔しさを口にする少林寺とも違って、半田はやけに笑っていた。


俺はそんな風に笑えないから、自分は死んだとさえ言ったのに。


半田のその明るさにズキリと胸が痛む。
今日、本当だったら半田のポジションには俺が居た。
半田の代わりにユニフォームを着て、宇宙人と戦っていたはずだった。

俺と土門が居たら宇宙人に勝てたかも、なんて傲慢な事は思ってない。
でも。


多分、半田は怪我をしなかったはずだ。


思ったように動かない体も、
自分が出来ないサッカーをやりに行く仲間を笑って送り出す事も、
俺はどれだけ辛いことか誰よりもよく知っている。

それなのに俺は半田をそんな目に合わせてしまった。

仲間を倒された悔しさや間に合わなかった後悔ももちろんある。
こうやって傷ついてまで戦った仲間がいる一方で間に合うことさえ出来なかった事が悔しくて堪らない。

でも俺は半田にだけ特別に罪悪感を感じていた。

ポジションが一緒だったから、
一人だけ笑っていたから、
なんて理由は挙げれば沢山ある。
でも一番の理由は、ベッドの上に座る半田の姿が俺に似てたから。
小さい俺を半田にダブらせてしまったから。
俺のせいでもう一人の俺を作ってしまった気がしたから。


だから俺は半田をそのままにしておけなかった。


面会時間が終わり、もう帰らなければいけないとなった時、俺はそっと半田を呼び出した。


 

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