フィディオ



待ち合わせ場所に半田と共に爽やかな笑顔でやってきた相手を見た途端、挨拶よりも先にマックスのツッコミが炸裂した。


「欧米かっ!」

「うん、Italianだよ?」

一昔前の有名なツッコミフレーズを全く知らないフィディオがニコニコと答える。
それがマックスを無性にイラつかせる。


「あー、うん。色々と君達に言いたい事はあるけど、取り敢えず君達の言い分を聞こうか」

眉間に皺を寄せ、腕を組んでマックスが言い出す。
その偉そうな様子に半田&フィディオの二人は
「何故コイツはこんなにも上から目線なんだ?」
と会った早々不思議顔だ。


「あー、君。イターリアの彼。
君は一体どこでこの日本の片隅に住む平々凡々な半田という男子中学生と出会ったのかね?
というか何故君が日本に居る!?」

嫌味ったらしいマックスの口調も初対面のフィディオには通じない。
どうやらそういう話し方をする奴だと判断したフィディオは、スター選手らしい爽やかさで答えを返してくる。


「ああ!日本にはシンイチに会いに来たんだよ。
何の当ても無かったのに、まさかマモルのクラブメイトとは嬉しい誤算だったよ」

「うん。それは日本に居る理由であって、何故君が半田を知ってるかの理由じゃないよね。
おにーさん、ちょっと君の爽やかさにイラっとしてきたから今度はちゃんと答えてね」

イライラしているらしいマックスを影野が半歩後ろで心配そうに見守っている。


――ああ、マックスは爽やかとかリア充とか嫌いだから、同じ顔でも半田は平気なのにフィディオにはイラついている…っ。

と、内心では何気に半田に対して失礼な事を考えていた。


「シンイチとの出会い。それは運命を予感させる劇的なものだった…」

「うわー…、何この人、いきなりモノローグ語りだしたよ」

胸に手を当てて感慨深げに語りだしたフィディオに、マックスが「げー」と舌を出す。


「俺達のキャプテンであるヒデが送ってくれたDVDの中にシンイチは居た」

「えー、そうだったの!?円堂ってば何も言って無かったから俺も知らなかったなぁ。
んで?何の時の?
映像って事はTV放送されたFFの決勝戦かな?それともまさかDE戦とかじゃないよな?」

半田も初めて知る事実に興味津々で食いついてくる。


「いや、代表候補決定戦」

「・・・。…えっ?」

半田は代表候補にさえなっていないのに何故!?
固まる三人の前でフィディオは当時を思い出しているのかうっとりと語りだす。


「前半23分、青いユニフォームの22番の足の隙間からちらりと見えたシンイチの横向きの顔には息が止まるかと思ったよ。
それに前半38分、ディフェンスラインでの攻防で今度はばっちり見えたシンイチのプリティーフェイス、運命ってあるんだなって初めて知った。
そして後半15分、どっちだかに点が入って一緒になって喜ぶシンイチの顔が見えた時はもう完全に恋に落ちていたよ」

「・・・」

そのうっとりとしたフィディオの顔にマックスと影野は声も無く顔を見合わせる。

――これ、アレだ。

――うん、アレな人だね。


「…ねえ実はその試合、ボクも出てたんだけど覚えてる?」

その青いユニフォームで背番号22の張本人であるマックスが、もはや完全にヤバい人と認定されたフィディオに訊ねる。


「え!?出てたっけ?
ゴメン、記憶に無いよ」

案の定というか、やっぱりな答えが駄目押しとなった。


「イタリアへ帰れ!こんのナルシストがああ!」

マックスがフィディオと半田の繋がれた手をチョップで引き裂く。

「なーにが『運命の出会い』だっつーの!
鏡よく見ろ!同じ顔じゃん!!
武方三兄弟ばりに違うの髪形と瞳の色だけっつーの!」

「そんな事は無い!シンイチは世界で一番可愛いし、声だって最高だ!!」

「キモッ!!それって遠まわしな自慢ですか!?
それに声も一緒ですから!
声だけ聞いてたら『あれ?半田が円堂みたいな事言ってる』って普通に思うから!」

「シンイチの方がおっとりとした可愛らしい話し方をするじゃないか!」

「ってかただの演じ分けでしょー!?」

マックスがそれを言ったらお終いだろ的な発言をした時、それまで黙って聞いていた半田が急に大きな声でフィディオを呼んだ。


「フィディオ!」

その切羽詰った声に影野はぎくりと強張る。
自分達のせい(主にマックスのせい)で、半田もフィディオが変態である事を知ってしまったのでは無いかと。
そしてそれが元で別れてしまったらどうしようかと。
そう思って影野は内心ドキドキで半田の言葉の続きを待った。


「世界一可愛いのは、フィディオ、お前だろーvvv」

でも、嬉しそうにそう叫んでフィディオの胸に飛び込んだ半田を見て、
マックスと影野はもう一度顔を見合わせる。

――半田もアレだ。

――うん、日伊頂上コンビだね。

そうしてそっくりの顔を嬉しそうにごっつんこしている二人に、マックスの怒号が響く。


「こんのおお、ナルシストコンビがあああ!」


フィディオとのダブルデート…それは半田の隠された性癖の発覚、
ナルシストな二人にうんざりするものでした。


 フィディオEND

 

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