風丸



「却下!!」

待ち合わせ場所に二人息せき切ってやってきた半田と風丸に開口一番、マックスが言い放つ。

「半田、ボクは大変遺憾だよ。
なんでよりによって風丸なんだよ!?
他にいるでしょーが、思わず笑っちゃうような相手がさー!」

「なんでお前は俺の恋人に笑いを求めてんだ!?」

マックスの腕組みしながら言われた苦々しい言葉に、
半田の鋭いツッコミが入る。
至極尤もな反応と言える。


「当たり前デショ!?
半田っていうお気に入りの玩具を明け渡さなきゃいけないんだから、
その分半田の恋人はボクを楽しませる義務が生じるって常識だよ!?」

「どこの常識だ!?
ってか、そもそもいつ俺がお前の玩具になったんだ!?」

「うっさい半田。
そんなことより、今は半田が風丸と別れるかどうかって問題デショ!?」

「だからー、いつそんな問題になったんだ!?」

ぎゃあぎゃあとマックスと半田が不毛な話を繰り広げていると、
すっと話を遮るように風丸が口を開く。


「いいんだ半田」

その姿は毅然としていて男らしい。

「マックスはお前の事を心配してるんだ。
俺がお前に相応しいか試してるんだろ?」

「ほらねー。
風丸ってば普通にこんな事言っちゃうんだよ!?
イケメン過ぎて全然面白くなーい!
もっとこうさー『半田ってマックスに弄ばれていたのか!?そんなっ、俺の未熟なテクで半田を性的に満足させられるのか!?』gkbr白目っとかさー」

「そんなヤツいないっつーの!」

だが、マックスはそんな男らしい風丸の発言に少し被り気味で、
ほら見たことかと顔を顰める。
無茶苦茶な言葉に阿吽の呼吸で半田のツッコミが入る。


「じゃあ逆に聞くが、お前はどうしたら俺の事を半田の恋人として認めてくれるんだ!?」

不真面目な態度のマックスに真面目な風丸は真正面からぶつかる。
その真摯な態度はどこまでも凛々しく男らしい。
風丸のその言葉ににんまりと笑ったマックスは反対に真摯な部分なんて欠片もない。


「そうだなー、んじゃ一つテストね。
風丸が半田のどこに惹かれたか教えてよ。
二人の馴れ初めってヤツをさ」

どんな凄い無理難題が来るかと身構えていた風丸はその呆気ない程簡単な問題に拍子抜けしてしまう。
傍らではらはらと事の成り行きを見守っている半田を見て微笑む余裕すら涌いてくる。


「俺は部活でDFや守備的MFを纏めることが多いだろ?
そんな中で気付いたんだ。
俺が指示を出した後、必ず半田が盛り立てるように声出ししてくれることに。
俺さ普段円堂のフォローとか人のフォローばかりしてて、そんな風に俺自身がフォローされることに慣れてなくて。
なんだか照れくさくて、ある日半田に改めてお礼を言ったんだ。
そしたら半田は『なんのこと?』って、本当に不思議そうに言うんだ。
ああ、半田は特別に意識しなくても他の人間の事を自然に励ましたり明るく出来る人なんだって思ったら、凄く素敵だなって。
こんな子がいつも俺の隣に居てくれたらなって。
そしたら独占欲が涌いてきちゃってさ。
本当な半田みたいな素敵な子を俺が独占しちゃいけないんだろうけどな」

風丸はそう言うと少しはにかんでみせる。
その風丸の独白に半田は元より影野まで羨ましそうにしている。
すっかり場は風丸の独壇場だ。


「終了〜!
やっぱり駄目!全然駄目!!」

そこへ空気をぶち壊すマックスの声が響く。

「なんでだよ!?良かったじゃん!
俺、風丸がそんな風に想ってくれてるって初めて知って感動しちゃったもん!」

当然半田は速攻反論する。
影野さえ、うんうんと半田に同意するように頷いている。

「ハア!?何言ってんの?
これはどんだけ面白いかを判断するテストなのに、何普通に恥ずかしげも無く男前な理由語っちゃってんの!?
イケメンが二枚目発言して何が面白いんだっつーの!」

「だから俺を好きな理由に笑いを求めんなっての!」

「そもそもさー、半田と風丸の二人並んだ絵面が気に入らない。
爽やか過ぎデショ。
半田の情けない部分が風丸と並ぶことによって薄まるのが気に食わないし。
外見中性的中身男前ってどんだけツボを心得てるんだって話だよ。
それに足の速いスポーツマンで後輩の面倒見も良い真面目な性格って、喧嘩売ってんのって感じだし。
その上頭も良すぎず程程って、この世の女は全部独り占めですか!?
そのくせ相手に半田を選ぶとか腐女子のウケもバッチリってか?
それにさー…」

「マックス、マックス」

どこまでも続きそうなマックスを影野がなんとか制止する。

「マックス、それ途中からただの悪口になってるから」

「あ゛」

「それになんだか今のマックス、○○は俺の嫁が口癖のモテナイ毒男がリア充爆発しろって言ってるみたいだよ。
マックスモテるのに、何故か非モテオーラ全開だったよ」

何気に酷いことを心配そうにいう影野に、何故かマックスがいきなり抱きつく。


「もうっ!やっぱり仁は最高だね!
天然なのに要所要所でこういうツッコミが出来るなんて満点だよ!?
安心してよ、ボクの嫁は仁だけだから!」

そう言うと唖然としている半田と風丸を自慢げに見る。

「分かった!?要は意外性だからね。
風丸はもう少し意外性を身につけるべし!
実は長い髪はハゲ隠しの為でしたとかね。
そしたら半田との仲認めてあげる。
では今日の講義は以上!
先生はこれから仁と他のお勉強をするので今日は解散にします」

そのままマックスは戸惑っている影野の腕を掴んでどこかへと行ってしまう。
風丸はその後姿に呆然と呟くのだった。


「俺、…半田の為にならハゲてもいい」


風丸とのダブルデート…それはどこまでも男前風丸君の独壇場でした。


 風丸END

 

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