一之瀬1



「やっぱり……」

ダブルデート当日、待ち合わせ場所に少し遅れてやってきた一之瀬が、
いきなり人目を気にせず半田に抱きついたのを見てマックスは低く呟く。

「半田は私服も、可愛いね!
遠くからでもすぐ気付いたよ。
こんな可愛い子他に居ないからね!」

マックスは半田の肩を抱きながらウィンクして☆を撒き散らしている一之瀬の姿に嫌そうに顔を顰める。


「やっぱりねー、半田ってば流され易いもん。
それに恋愛耐性無さそうだし。
こんだけ一方的に押されれば、いつかはOKしちゃうよね」

「うっ…!いいだろ、別にっ」

呆れたようなマックスの呟きに半田が顔を仄かに染める。
そして顔を赤くしたまま、自分に絡み付いている一之瀬の腕を剥がしだす。


「もうっ!だからデートとかすんの嫌なんだよっ。
お前も!外でこんな事すんの止めろよなっ!!」

「そっか、外じゃ嫌なんだね?
じゃあ、帰ろうか!!」

そう言うと一之瀬は半田の手を握って、回れ右をしてしまう。
一之瀬にとっては半田の台詞は全て、
自分への甘えた可愛らしい内容へと自動変換されるらしい。

「だぁーっ!そう言う問題じゃないってー!!」

半田がじたばた暴れても、それさえ照れてるからと変換されている。
いそいそと「家に帰ったら二人であんなことこんなことでふんふっふ〜っ」と顔に出さずに浮かれている。

でも、そんな一之瀬に背後から氷点下以下の声が投げかけられる。


「ふーん、半田って本っ当、趣味悪いねー。
こんな自分勝手な束縛、自己中野郎がタイプとかって最悪だよ?」

・・・マックスだ。
一之瀬の足がぴたりと止まる。

「あーぁ、半田可哀想ー。
こうやって束縛されて友達とも遊べなくなって暗ーい中学時代を過ごす事になるなんてねー」

なんとか宥めようとしている影野を無視してマックスが更に辛辣な言葉を言い放つ。
ゆ〜らりと一之瀬が振り返る。


「マックス?
何か誤解があるようだけど、俺は束縛なんかしてないよ。
それに半田の趣味は最高だよ?
だって誰かさんと違って、こんなに優しい俺を選ぶんだからね」

にこにことしているのに、背後でゴゴゴゴと重低音が響いている。
しかも薄っすらフェニックスの姿が見える。

「そう?
じゃあ今日これからボク達と半田が遊ぶのも一之瀬は全然オッケーだよね?
あ、一之瀬は帰りたいなら帰ってもいいから。
ただ半田は置いてってね?」

マックスもニコニコして答える。
怒りを隠しきれていない一之瀬と違って、マックスは平然としている。
はっきり言って仕掛けたマックスの圧勝だ。


「勿論俺も行くよ!
半田と俺は一心同体だからね」

当然一之瀬の返答だって、マックスは折込済みだ。
なんたって今日はダブルデートをしに来たのだから。
まだ始まってもいないのに、ここで帰してしまうのは面白くない。
半田の反応も見たいし、一之瀬の事をもっと弄りたい。
そう目論んでいるマックスはにっこりと笑って言う。


「んじゃ、早く行こーよ。ボクお腹すいちゃった。
んー、なんかシェイク飲みたい気分だからファーストフードでもいい?」


 

prev next




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -