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俺達の撃ったシュートは綺麗にゴールへと吸い込まれていった。


「よっしゃあああ」
俺は思いっきり拳を突き上げる。


「半田あ!」
声の方に振り向くと、マックスが走って俺の方へやってくる。

すれ違い様、パァンと思いっきり手と手を合わせる。

「半田にしては上出来」
にっと笑って、俺の横を通り抜ける。

走っていく先には笑顔で手を叩いている影野がいて、
ふうっと技がちゃんと決まった興奮が冷めていく。

俺はこれから始まる告白を聞きたくなくて、
でもどうなるか知りたくて、
歩いてゆっくりとゆっくりとマックスの後についていく。


「仁」
俺はマックスの後ろに陣取る。
ここなら、告白するマックスの顔とか見ないで、結果だけは聞こえる。

「凄かったね、シュート。
いつの間にかあんなシュート完成させてたんだね」
影野が微笑みを浮かべて言う。

「へへへ、そうでしょ?
仁、ボクは強くなったよ。
これからだってどんどん強くなる。
だからもう宇宙人にだって負けない。
宇宙人ともう一度戦うことになったら、今度はボクが仁を守る。

だからさ、仁も…サッカー止めないで」

ああ、そっか。
あの日、壊れた部室の前で言っていた守りたい大切なものって影野のことだったんだ。
マックスの懇願に近い最後の言葉に、漸くそれに気付く。

「あんな怪我したんだもん、もうサッカーしたくないかも知れない。
でもでもボクは仁にサッカー止めて欲しくない。
いつまでもボクと一緒にサッカーして欲しい」
そう言うとマックスは持ってきていた自分のバッグを取りに行く。

「絶対ボクが守るから、一緒にまたサッカーやろう?」
そう言って影野に差し出したのは、あの日見つけたタオルだった。
大切にロッカーに仕舞ってあったそのタオルは、
あんなにボロボロだったのに今はマックスの手で綺麗に洗濯されリボンが掛けられていた。

「箱は破けちゃったけど、もう一度これ受け取って下さい」

影野の為にちゃんと強くなるところも、
影野の大切な物をそうやって守ろうとするところも、
格好良くて、
なんでマックスの前にいるのは影野で、
俺はマックスの後ろにいるんだろうって思った。
あれが全部、俺の為ならいいのにって思ってた。


影野は差し出されたタオルに恐々と手を伸ばす。
タオルを受け取ると、それに顔を埋めた。

「…嬉しい」
タオルから顔を上げた時、影野は笑っていた。
でも次の瞬間には涙が顔を伝ってきて、
さっきタオルに顔を埋めていたのは泣いてたのを隠すためだったんだって気付いた。

「俺、サッカー止めない。
止めたくなんか無いよ。
ずっとマックスと、…皆とサッカーしたい。
だから俺の方こそ…」
そこで一旦言葉を切った。
そしてまっすぐに立つと、きちんと頭を下げる。

「全然弱い俺だけど、これからも一緒にサッカーして下さい」
そう言って影野はマックスに、
ううん、俺達に頭を下げた。


「影野・・・」

「仁!」
俺の小さい呟きはマックスの声でかき消された。

マックスは影野の名前を呼んで、
それから影野をぎゅっと抱きしめた。


「仁、仁。
ああ、もう本当に好きだよ。
これからもずっとボクの傍にいてね」

そう言うマックスの顔は後ろにいる俺からは全然見えなくて、
影野も俯いているからどんな表情しているか分からなくて、
ただ俺からはマックスの背中に恐る恐る廻された影野の手が、
しがみ付く様に背中を掴んだのだけが見えた。


 

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